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第31話……私設顧問

――チリリーン「いらっしゃいませ、何名様ですか?」「四人ポコ~♪」 女王アメーリアさんを総司令部に送り届けた後の昼下がり。 タヌキ軍曹殿の要請により、ここ新帝都バルバロッサにあるレストランに来た。 ちなみに彼も出世しているので、もはや軍曹ではないのだが……。 タヌキ軍曹殿が、店内を走って眺めの良い席をゲットした。 皆で席に座ると、ここからは宇宙港が見えた。 少々音がうるさいが、宇宙船が次々に青空に飛び立つ景色も悪くない。「ご注文はいかがしましょう?」「ハンバーグパスタが3つポコ♪」「熱燗と枝豆クマ~♪」 ……Σ( ̄□ ̄|||) このクマ型アンドロイドは昼間から酒か!? 料理が運ばれてきても、ずっと熱燗を飲んでいるクマ殿。「なにか食べないと体に悪いポコよ!?」「余計なお世話クマ!」 クマ殿は飲んだくれて、隣のテーブルで飲んでいるお爺さんに絡む。「爺さん、しけた面してるクマね♪」「うるさい熊だな!」 ぱ~ん☆(殴る音)「やったクマね!」 ぱ~ん☆(殴る音)「この非グマめ!」 ぱ~ん☆(殴る音) お爺さん酔っぱらいと、ちっちゃいクマ殿が喧嘩になってしまった。「「もっとやれ~♪」」「「いいぞ~♪」」 シワシワのお爺さんと、ちっちゃなクマのホノボノとした喧嘩だったので、周りのお客さんがチップを投げ入れてくれた。「艦長! やられました!」 全長30cmのモフモフなクマ殿がボコボコにされて帰ってきた。 ……弱いな、クマのくせに。 そんなことを思っていると、「も……もしかして、シャルンホルスト中将ではありませんか?」 副長殿が思い出したように尋ねる。 ち……中将閣下ですと!?「元中将だ、もう軍は辞めたんだよ。今はただの爺だ……」 不貞腐れて飲んでいるお爺さんを横目に、副長殿が私にこっそり耳打ちしてきた。 『……ぇ? あの人有名人なの?』 『そうですわ! 帝国の虎と言われた名将ですわ』 私はお爺さん中将の御猪口に、クマの徳利のお酒をなみなみと注いだ。「部下がどうもすいません!」「話が分かるな」 ぺこぺこと頭を下げる私に、お爺さん中将は私の肩を叩いて笑ってくれた。「実は……」「なんだ?」「ウチの船にとても良いお酒を用意してあるんです!」「ほぉ?」「それはクマの純米大吟醸クマー」 ぱ~ん☆(
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第32話……兵站と整備能力

 装甲戦艦ハンニバル。 この艦はその巨体をいかし、特殊な設備を備えていた。 それは、僚艦であるオムライスやジンギスカンの修理やメンテナンスを行う目的の施設だ。 左舷に全長400mまでの艦を半格納できるドックを持つ。 いわば、動く入渠施設だった。「良い装備だな」 ハンニバルの設備を見学に来たシャルンホルストさんに褒められた。「無駄な施設だと笑われると思いましたが……」「確かに、使い方によっては無駄かもしれんがな」 シャルンホルストさんが言うには、戦争において『素人は戦略を語り、軍人は兵站を語る』ものらしい。 歴史上、兵站システムの8割以上は物資の輸送が占めていた。 中世までなら、兵站とは主に食料と馬の飼葉の輸送といった具合だ。 しかし、現在は大きくテクノロジーが進化した。 兵站の質の変化が生じたのである。 例えば、いくら輸送能力や一般人員があっても最新戦闘機の整備はできないだろう。 最新鋭の戦闘機は今までの戦闘機より遥かに整備コストがかかる。 つまり、兵器の技術が上がれば整備はいらないということにはならなかった。 現在の最新F-1マシンが、日々多くの専門的な整備を必要とするように、この世界の宇宙船も大きな整備コストが必要だったのだ。 よって、戦闘にテクノロジーの要素が多くなればなるほど、兵站において専門的な整備メンテナンスの割合が二次曲線的に増加していったのだった。 そして、その重要なハンニバルの整備責任者は、「お酒が足らないクマー!」 お酒大好きなクマ殿だった。☆★☆★☆ ツェルベルス星系より無事にエールパ星系に戻ったハンニバルは、衛星アトラスの宇宙港に入港した。「整備は頼んだよ」「まかせろクマ♪」 整備班長のクマに声をかけた後。 私は空が青くない世界から、美しい四季がある世界にログアウトした。 VR接続機器であるカプセルから這い出て、いそいそとコンビニに向かう。 2月とはいえ、昼間は太陽がまぶしい。 ATMでお金を払い出し、お弁当とお茶、おやつと缶コーヒーを買った。 風呂に入ったあと、一人で昼食を摂る。 そして、食後にチョコレートを食べた。 PCで調べてみると、チョコレートの原材料を生産するカカオ農家の日当は100円位だそうだ。 しかもカカオ農家の子供の30%は、学校に一度も行ったことがないらし
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第33話……青い海と緑の木々の楽園

「第6防衛衛星準備良し!」「ハンニバルはE-86ブロックの守備を担当せよ!」「了解!」「復唱を忘れるな! ヴェロヴェマ大佐!」「はっ! E-86守備担当、了解!」「ヴェロヴェマって大佐殿か、出世おめでとう!」「ありがとう! バニラ中佐!」「無駄口を叩くな! ヘガクサイ!」「了解!」 我々の乗るハンニバルは、ツイト子爵の指揮下にてワイマール星系の守備に就いていた。 ツイト子爵はクラン・シェリオの臨時のクラン長だ。 よって、守備部隊はワイマール星系艦隊とマールボロ星系艦隊と我がエールパ星系艦隊の混成軍だった。 我がエールパ星系艦隊からは、ハンニバルと新造艦4隻のみで参加していた。 ある程度の戦力をエールパ星系に残しての出陣だった。 ワイマール星系は14隻の戦闘艦で防衛の布陣を敷いていた。 事前情報によると、この星系に共和国艦隊が攻め寄せてくるはずだった。 古来より、攻撃側は守備側の3倍の兵力が要る。 ここの世界において、それが通用するかどうかは謎だが、前もって防衛設備を構築してあるので簡単には負けないはずだった。「女神ルドミラを崇める連中にとっては、ここは聖地でな……」 ふと、隣の席で佇む老将が呟く。「……聖地ですか?」「ああ、詳しくは知らんがな」「話によると、どうやらこの辺りに青い海と緑の木々の楽園があるらしいぞ」「はぁ……」 私が生返事したのには訳がある。 確かに、このワイマール星系は帝国の防衛の要だが、熱核戦争の影響が大きい地域であり、荒んだ濃硫酸の海と枯れた木々しかなかった。 このワイマール星系は、軍事的価値はあるが、経済的価値はかなり低い星系だったのだ。「敵艦隊出現の模様、長距離跳躍の時空振動を確認しました!」「了解! 全艦出撃!」「総力で水際迎撃せよ!」「「「了解」」」 宇宙空間で水際などないのだが、エルゴエンジンを持たない艦船の長距離跳躍後は、エネルギー不足により戦闘力がかなり落ちるのだ。 星系外縁でこの状態の敵艦を迎撃することを、この世界では水際防衛と呼んだ。「敵艦隊6隻を確認!」「6隻か、余裕だな。ハンニバル以外前進!」「ハンニバルは後方より支援しろ!」「「「了解」」」 装甲戦艦が後衛というのも珍しいが、ツイト子爵の意図は解る。 彼は私が嫌いであり、私がこれ以上出世するのを阻
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第34話……惑星防衛システム

「現実世界でさ、共和国軍の旗艦が月に映っていたんだよ」「……え? 現実世界ってどこですか?」「一体どこポコ?」「いやさ、ここってゲーム世界じゃない?」「……は、はい?」「何言ってるぽこ?」 ……。 話が通じない。我が副官殿とタヌキ軍曹殿はNPCキャラなのかな……。 しかし、女神レメディオスを崇める人たちが、あの星系を重視していたとしたら怖いな。 ワイマール星系にある『青い海と緑の木々の楽園』だっけ、なにか秘密があるのかな……。 あのあと、職場に置いてきた『南米に墜落したと噂になった宇宙船モドキ』の写真が気になって、兄に電話したが繋がらなかった。 ひょっとして、あの写真に写っている宇宙船は本物ではないか……。 ……そんな嫌な予感がした。☆★☆★☆「……防衛をだな、少し考えてもらえんか?」「防衛ですか?」「そうだ、我がエールパ星系は豊かになった。その分、この星系を狙う輩は増えるはずだ」「……はぁ」 相変わらず、気のない返事をする私。 実は惑星リーリヤにて、蛮王様に相談を受けていた。 蛮王様が懸念していることは、艦隊戦力以外での惑星リーリヤの防衛守備についてだった。 私はこの惑星リーリヤの雇われ防衛責任者でもある。「……そうすると、防衛衛星になりますね」「そう、それだ。良いヤツがあったら買ってきてくれ」「わかりました」「たのんだぞ!」 ……防衛衛星。 衛星軌道上に浮かぶ防衛施設である。 地上施設だと、大気や重力で有効に敵を迎撃できない場合が多いため、衛星軌道上にも防衛設備が設置されることが多い。 施設本体の直径は50~100mに及び、ミサイルやレーザービームで接近する敵艦隊を攻撃する。 エネルギーは折り畳み式ソーラパネルにて賄う方式が多く、その場合は簡易な重力シールドも展開できた。 この防衛施設を惑星リーリヤに6つほど設置することが決まっていた。「……はぁ、防衛衛星か」 衛星アトラスに帰るシャトルの中でつぶやく。 窓から見る星は、ため息が出るほどきれいだ。「防衛衛星なら、星間ギルドに注文してはどうですか?」 副官殿にアドバイスを貰う。 星間ギルドは武器商人でもある巨大軍産複合企業体である。 おおよそ、ほとんどの物は売ってもらえた。 彼等の売る武器は信用にたるのだが、彼らは必ずお金に従うことが難
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第35話……敵領侵攻作戦

「え? リアルの世界とゲームの世界がつながった?」「……かなあ、と」 ゲームの世界で、共和国の旗艦の件についてバニラ中佐に聞く。 彼女はこのゲームの先輩プレーヤーだった。 さらに聞くところによると、このゲームは特殊であることから、今にいたるも長い間オープンテスト期間中だということだ。「そんなニュースしらないしね、君はゲームのしすぎじゃない?」「そうかな?」 確かに、現実時間で毎日8時間以上もゲームをしているのだ。 やりすぎと言われても仕方がない……。 あの時は頭が疲れていたか、ひょっとしたら夢だったのかもしれない。「まぁ、また何かあったら教えてよ。少し気になるから……」「わかりました! では、また」 バニラ中佐に別れを告げ、私は超光速チャットの電源を切った。 この件は解決はしなかったが、人に話すと少し気が楽になった。☆★☆★☆ ハンニバルは再び戦地に赴いていた。 この度は珍しく攻撃的な作戦だった。 先日の戦いで戦死した共和国軍の将校が持っていたデータを解析したところ、敵の防御線の穴を見つけたというのだ。 帝国情報部が調べたところ、この情報は正しいと認定した。 この判断に従い、帝国総司令部は作戦策定して、動員を通達した。 そして、エールパ星系からはハンニバル一隻のみが動員される形となった。 有力星系から少しずつ公平に戦力抽出した形だ。 ……なにはともあれ、久々に共和国領への侵攻作戦となっていた。「B-1896ブロック周辺に障害物はありません」「ワープ航法可能です!」「よし、全艦長距離跳躍用意!」「「「了解!」」」 見知らぬ宙域に次元長距離跳躍する場合、予定地域に障害物がないかを確かめる。 これから先は敵宙域。 詳細な宇宙航路図は無かったのだ。「星間航行艦から順次跳躍、橋頭保を築け!」「「了解」」 通常艦船は、長距離跳躍後に自由に動けない。 ハンニバルを含む8隻が先行し、この後に核融合炉を搭載した通常艦船が24隻続く布陣だった。 私は頭にモヤモヤを抱えていたが、丁度良く吹っ切れたかもしれない。 額にも、じんわりと汗をかいていた。  緊迫した時間が続いたが、その後、敵支配地域に長距離跳躍するも、異常なし。 そして、後続の24隻も続いた。 全艦にて無事、敵地へ侵入を果たしたのだった。☆★☆★☆
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第36話……エネルギー限界の撤退戦

 ハンニバルと3隻の僚艦の奮闘は続く。 真昼のような爆発の光が漆黒の宇宙を照らし、天文学的なエネルギーの浪費の応酬が続いた。 しかし、戦力差に圧倒され、次第に後退を余儀なくされていた。「硬X線レーザー至近!」「電磁障壁出力最大!」 僚艦である核融合動力艦3隻の前で、殿(しんがり)を務めるハンニバル。 エルゴ機関は核融合機関に比べ、防御シールドの出力が段違いに高かったためだ。 敵砲火の光軸を重力シールドで減殺し、じりじりと4隻足並みを合わせて後退する。 しかし、敵艦12隻の集中砲火には如何ともし難く。「敵砲火4列目、鋭角度で直撃。シールドのエネルギーが大幅に相殺されます!」「シールド展開能力13%減衰!」 この世界のシールドの防御効率は、エネルギーの二乗に比例する。 これは僅か13%のエネルギー減少が、防御力の劣化に致命的な影響を意味していた。「仕方ない! 追加でクエーサーEカプセルをエンジンに投下!」「シリンダー内にカプセル投下開始!」「…………3」「……2」「1……臨界! ガンマ線のマイクロバーストを確認!」「エネルギーブースト率368%!」 ……ハンニバルの主機である大型エルゴ機関が息を吹き返す。「余剰エネルギーを主砲に回せ!」「了解ポコ!」 タヌキ軍曹殿の砲術指揮の下、ハンニバルの75口径50.8cm口径連装レーザービーム砲4基が一斉に火を噴く。 第一射撃は惜しくも夾差(きょうさ)する。 そして、僚艦とともに行った第二射目が敵巡洋艦に直撃。 収束したガンマ線が、敵の重力シールドを透過。 積層構造の装甲に、大きな破孔を開け爆発。 敵巡洋艦はセラミック装甲の破片をバラまき、大破炎上した。 ……しかし、過剰なブーストは何度も使えない。 彼我の火力差により、ハンニバルはじりじりとシールドのエネルギーを削られていた。☆★☆★☆(……二時間経過)「大型対艦ミサイル来ます!」「2時の方角にイールド・フレア発射!」 敵はやはり準備万端でこちらを襲っているようだった。 暴風雨のようにミサイルが飛翔してきた。 迎撃しようにも、きりがない。「エネルギー中和スプレッドのカートリッジが切れましたわ!」「もう主砲に回すほどのエネルギーが無いポコ!」 防御弾幕を張るエネルギーがようやっとのハンニバル。 僚艦で
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第37話……ルドミラ教国誕生

「我々に真の平和が訪れようとしている!」「貧しきものが存在しない唯一無二の絶対平和国家の建設!」「全宇宙の民よ! ルドミラ様を崇めよ!」 帝国の公営放送の臨時ニュースがモニターに映る。 二日前に起こった、共和国での大規模な独立運動の映像が流れていた。 映像内で、手を天に掲げて演説しているのは、ルドミラ教団の神官だった。  この神官は、貧しき者がいない平和社会の成立を掲げている。 どの世界でも、人々は『平等』や『平和』を掲げるが、未だに成立していない。 富めるものは貧しきものを忌嫌い、貧しきものは富めるものを憎んだ。 人々が口でいうほど皆が『平等』なユートピアの成立は簡単ではなかったのだ。 また、自分に被害がない紛争や戦争は、関係ないと人は思う。 しかしそれは、大体において、貿易や資源権利において加害者の側なのだ。 ……そんな今までの文明発展に飽いた人々が、願ってやまない世界の誕生だったのかもしれない。 以前より支配階級にも信者を増やしていたルドミラ教団は、最近の共和国の経済不況によって勢力を急速に拡大。 史上まれに見る、一大政治勢力となっていた。 今回、グングニル共和国に存在する85の星系の内、実に39個の星系が教団に同調して独立を表明する。 さらに、共和国軍の一部はそれに伴い蜂起。よって部隊内で反乱が次々に勃発。 共和国艦隊の泊地内でも、同士討ちが連鎖的に起こっていた。 ……私はきっと、このユートピアを目指す勢力が起こした事変によって助けられたのだ。 この二日後、正式にルドミラ教国が誕生した。☆★☆★☆ 衛星アトラスの宇宙港のドックには、傷ついたハンニバルがいた。 直撃弾は少なかったものの、大きな破片などが装甲版に突き刺さっていた。 しばらくの間、入院といったところだった。「……悲しいかね?」 シャルンホルストさんに聞かれる。「ええ、もう愛着がわきましたので……」「いいことだ、船も大切にするのだぞ!」「はい、わかりました」 シャルンホルストさんは結局、軍に戻ることになっていた。 戻ると言っても、エールパ星系の参謀長として。 つまるところ、隣の惑星リーリヤへの赴任である。 私達はその見送りに、宇宙港に来ていたのだ。「元気でクマー!!」「おう、達者でやれよ!」 クマ殿と老将が涙目で抱擁し合う。
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第38話……帝国軍反攻作戦

 帝国軍の侵攻計画に従い、ハンニバルは輸送任務に就いていた。 作戦目標に近い星系には、物資と戦力の集積地点があったのだ。 その集積地に、必要物資や人員を運ぶのが今回のハンニバルと私の戦いであったのだ。 一分一秒を争う綿密な輸送計画に追われ、まさしく後方も戦場であった。 ……艦橋から見える恒星系は、温かい光を放つ。 それは、残酷なまでに強いエネルギーだったのではあるが……。☆★☆★☆ いつも少数の兵力で多数の兵力を破ったとされる古代の王は、ある時、家臣に尋ねられる。「王様はどうやって、少数で多数に勝ったのですか?」 それに対して王は、「余は常に多数で少数と戦った故、勝てたのだ」 と、答えたと言われる。 確かに、その王の持ち得る総兵力は、敵より少なかった。 しかし、彼は鉄道や馬などを有効に使い、各戦場では敵より多数で戦ったという故事である。 現実のところ、少数でも多数に勝てないと、英雄としては後世には語られない。 しかし、好き好んで少数で戦ったのではないのだ。 出来うるだけ、機動力や輸送力を駆使して、設定される戦場に戦力を運ぶべきだった。 戦場の華である戦術的な機動力は、その後の話である。☆★☆★☆「ドックに収容できたポコ!」「側面ハッチを閉めますねぇ~」 副官殿の指示で、ハンニバルの側面大型ハッチがしまる。 胴体内には、長距離跳躍ができない小型ミサイル戦闘艦を、複数載せていた。「ハッチ閉まったポコ!」「重量積載率98.8%です!」「OK! 長距離跳躍準備!」 ハンニバルは星系間航行な大型艦であり、連続長距離跳躍が可能である。 しかも、大型艦にも関わらず、恐ろしく燃費が良かった。 これは、一度エンストすると自分ではエンジンを掛けられないまでにケチった設計の賜物である。 他にも、運航コストを下げるために、一般的な部品を増やした効果もあった。 いくら優秀でも、整備に時間がかかる兵器は稼働率が低く、実際には使い物にならない事例も多かった。「エルゴ機関エネルギー充填、加圧可能です!」「了解! 長距離跳躍開始!」 こうして燃費の良さを総司令部に買われ、エネルギーや弾薬、もしくは戦闘艦を載せ、あちこちの星系を往復した。 文字通り馬車馬のように働いたのであった。 もちろん、後方での活躍なので、「あいつは戦場から
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第39話……アルバトロス星系への道『迂回包囲作戦』

 大要塞リヴァイアサンを護る防衛艦隊は、共和国軍コーディ中将率いる艦隊。 周辺星域からの援軍をかき集め、48隻もの星間航行戦闘艦と、その他小艦艇を合わせ98隻もの艦艇で防衛陣を備えた。 98隻だと不利に思うが、彼らには大要塞リヴァイアサンがあるのだ。 補給や修理整備拠点があることを考えれば、決して不利ではない。 そもそも古来より、攻め寄せる側は防御側の3倍の兵力を必要とされていた。☆★☆★☆ 帝国軍宇宙連合艦隊司令長官パウルス上級大将は、前面にミサイル艦や装甲艦などを多数展開。 乾坤一擲、麾下の新鋭高速部隊を右翼に集結する作戦をとった。 これに対する共和国軍コーディ中将は、正面戦線に戦艦などの主力を展開し、周辺を各星系から集めた艦船を布陣させた。「攻撃開始!!」「迎撃せよ!」両軍は激しい砲火を交錯させる。爆炎がとどろき、金属がきしむ音が鳴り響く。「撃てポコ!!」「攻撃は控えめにね!」「わかっているポコ!」 ハンニバルは参加予定ではなかったが、パウルス司令長官に『一隻でも多く参加して欲しい』と言われ、正面戦線であるミサイル艦群に混ざって参加した。 お仕事は主に守備。 味方のミサイル艦の盾になる任務だ。 むろん、シールドを貼るだけではない。 敵のミサイルを叩き落とし、味方艦隊を支援する。 敵が突出して来たら、突出した敵艦だけに砲火を集中した。 正面戦線は流石に敵戦艦に対し、ミサイル艦では分が悪く、徐々に後退を余儀なくされる。「撃ち返せポコ!」 しかし、敵が前に出ようとしたところを、ありったけのミサイルと砲火で機先を制して、撃退することに成功していた。 ハンニバル達、輸送部隊が沢山の弾薬を運んできた成果だった。 ……とにかく、どちらが優勢なのか分からないような戦いが続く。「ポコ! B-68ブロックの戦艦のシールドが薄い!」「了解ポコ!」 一般的に、相手のシールド出力は攻撃してみないと分からない。 攻撃するときは、エネルギー干渉を下げるためにシールド能力を低下させるのだが、これが私の『羅針眼』には薄ぼんやりと見えたのだ。 よって、もっとも攻撃しやすい敵が判別できた。 指示を受けたタヌキ軍曹殿は、ハンニバルの長砲身砲を統合リンクさせ、全て同じ敵の同じ部分に叩き込む。 流石に、戦艦と言えども、攻撃する瞬間を狙わ
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第40話……エネルギー増幅装置

 アパートで朝起きる私。 今日は元旦だ。『明けたら、早く会社に戻ってこい!』 ……支店長から露骨な年賀状が来た。 今更、灰皿で殴られるような世界には帰りたくはない。 ……うん、帰りたくない!? いつもの脳内思考だが、もはや起きている時間の殆どがゲーム内だ。 もはや、どちらも現実であり、どちらも仮想世界だった。 ゲームに嵌る人の気持ちが分からなくもない。 それに、私の口座にはゲームをすればきちんとお金が入る。 いわゆるプロゲーマーってやつだろうか。 自分のゲームの腕に、それは無いと一人笑った。☆★☆★☆「お茶を置いておきますね~♪」「はい~♪」 副長殿がお茶を入れてくれた。 素晴らしい世界だ。 今どき中小企業の支店長になったって、女性社員にお茶を入れてはもらえない。「お茶をおいとくポコ~♪」 何故だか、タヌキ軍曹までお茶をいれてくれる。 現実世界だったら、タヌキにお茶をいれてもらえる人なんて、そういないだろう。「お茶をおいとくニャ~♪」 猫人族のマルガレーテさんにも入れてもらった。 みんな今日はサービスがいいなぁ。 ……しゃあねぇ、今日も私が昼飯を作るか。 お好み焼きでいいかなぁ……。 だれだよ、お茶の下に『肉多めで』ってメモ用紙はさんでいる奴は……。 はぁ……、独身が長いとご飯作るスキルだけが巧くなるよな。☆★☆★☆ カリバーン歴851年2月。 旧帝国主星アルバトロスは解放された。 自治領主のホーウッド公爵には指名手配がかかるも、見つかってはいない。 アルバトロス星系は、共和国軍の手によっていくつかの建物は破壊されてはいたが、時間がたてば概ね回復されるだろう。 しかし、その経済価値は凋落した。 この星系の所有者が1年の間に2度も代わったのだ。 安全を何よりも優先する大手企業の本社は移り、さびれた旧帝都といった感じだった。 私は少し用事があり、クマ整備長と旧帝都を歩いていた。「アニキ~♪」 向こう側で手を振る大男がいる。 実は自分に弟なんていない。 先日の会戦で、移動費用を飲み代に使ってしまって困っているところを無料で運んでやったミサイル艦の艦長だった。「お元気そうで」「おう元気よ! アニキ! 金かしてくれ!」 ……ぇ? 自分がすんでいる星まで帰るお金が無いという。「戦勝ボーナ
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