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第41話……男爵叙任と観艦式

 宇宙港のドックに係留されたハンニバルは、増設装甲を再び取り付ける段階だった。 この世界の人類は、電磁障壁や重力シールドといった防御手段を持っているが、結局のところ最後は目に見える装甲が頼りだった。 カッコイイ一体型の装甲が憧れだが、いまは増設や交換が便利なモジュール装甲を採用していた。 安易に空間装甲を自由に作ることも魅力だった。 なかなかに見栄えと機能の両方をローコストで兼ねそなえるのは難しかったのだ。 被弾して取り替えた装甲モジュールに手を合わせる。  無機質なものへの感謝の態度は不思議に思う人が多いかもしれないが、確かに私の代わりに壊れてくれたのは間違いなかった……。 大型ミサイルが皆の居住区に炸裂したかと思うと、今でも身の毛がよだつのだ。☆★☆★☆ 蛮王様に呼び出され、惑星リーリヤに降り立つ私。 きれいな格好をしてこいと言われたので、紳士服屋にはいる。 お前は一枚くらいは持ってないのかと言われそうだが、今日はタヌキとクマの分だ。「キツイぽこ!」「こんなのいらないクマ!」 二人とも我儘を言っていたが、美味しいご飯が食べられるからと言って聞かせた。 これで美味しいご飯が出なければ、逆に私がキビシク教育されてしまう……。 ……実は今日は私の任命式だった。 私の幕僚である彼等も出席するのだ。「ヴェロヴェマ様ですね、どうぞこちらへ」 幸運なことに会場はホテルだった。 テーブルの上には、肉や寿司などの上等なご馳走が並ぶ……。「励めよ!」「はっ!」 蛮王様から頂いたのは男爵への叙任だった。 なにが有難いのかと聞かれると、帝国からの俸給が貰える。 帝国では侯爵や伯爵だと一星系、子爵だと有人惑星一つくらいの支配が許されるらしい。 蛮王様は実際には侯爵や伯爵クラスの辺境王爵だ。「では、新たに帝国男爵におなりのヴェロヴェマ様より、ご挨拶頂きます!」 ま……まてよ!?「ほ……本日は御日柄も宜しく……えとえと、……」 ……ワハハハ。 会場は確かに和んだ。 ……しかし、流石に凹んだ。 カンペなしの挨拶とか、もの凄く大変だった。 たまに会社でも偉い人って即興で挨拶するもんな。てか、いまや自分がお偉いさんだよな……。 爵位持ちになったから、もしかして今日から閣下と呼ばわれるのか? 爵位持ちになったことで、衛星アト
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第42話……試射!『マイクロ・クエーサー砲』

「……エネルギー臨界99.98%」「薬莢内にガンマ線バースト確認!」「目標! 前方小惑星!」「マイクロ・クエーサー砲発射!」「同軸リンク! 射撃オープン!」 ハンニバルの艦体下方より迫り出した超巨大長砲身砲塔から、とても明るい光軸が放たれる。 それは、エネルギー量からすると恐ろしいほど細く、まさに線であった。 放たれた光軸は岩石を鋭利にくり抜き、向こう側の闇の深淵へと吸い込まれた。 ……しばしの沈黙。――ゴゴゴ!「!?」「重力波! 激震確認!」「エネルギー爆風来ます!?」「判定……レッドモード!警戒態勢レベル4突破!」「いかん! 緊急短距離跳躍!」 マイクロ・クエーサー砲のエネルギーは、確認できないほどの向こう側で炸裂。 その恐ろしいまでの爆風余波がハンニバルめがけて戻ってきたのだ。 辛うじて、次元を跳躍して脱出するハンニバル。 ……マイクロ・クエーサー砲。 撃った自分がヤバいほどの威力の砲だった。 これが古代超文明の民が、今まで生き残っていない理由かもしれない。 撃った後、砲身自体に亀裂が確認され、現在は連続発射に耐えうる鋼材技術も無いことも判明した。 極めてなかなかに扱いにくい武器だった。 あまり必要かどうかも分からないが……。 ハンニバルはマイクロ・クエーサー砲の射撃実験を終え、エールパ星系目指して帰投した。 ……艦橋の窓から見た星々は、その時も奇麗だった。☆★☆★☆「どうしたらこんなに壊れるクマ!?」「す……すみません」 クマの整備長にシコタマ怒られる私。 爆発余波は避けたものの、発射時の衝撃で砲塔基部から艦本体のスタビライザーまで狂ってしまった。 発射の衝撃で艦のフレームが歪んだのが原因らしい。 ハンニバルは帝国軍艦船の中で最も丈夫な部類の船なのだが……。 クマ整備長が言うには、砲の衝撃を吸収するショックアブソーバーみたいなものが必要とのことだった。 現状況で撃つと、反動で船が壊れるというのである……。 ハンニバルの巨体を修繕する費用の捻出の為、星間ギルドのお仕事(おもに小惑星破壊)や蛮王様のお使いなどのバイトを二週間こなさなくてはならなかった。「男爵の旦那! またバイトですかい?」「えへへ、ちょっと船壊しちゃいまして……」 親の自動車をこすって、バイトする大学生みたいな構図だ。
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第43話……苦手な外交交渉が進展セリ!?

 ハンニバルは神聖レオナルド王国がある星系を目指して航行していた。 軍の命令を受けての交渉へ向けての航行。 嫌ではあるが、お金を貰っているからにはこういう仕事は必ずある。 自分に向いてないよなって、感じの……。「お腹減ったポコ~♪」「肉食べたいクマ♪」 今回、不測の事態に備え、クマ整備長を連れてきた。 彼はわるいクマじゃないのだが、一日6食たべるのだ……。 バフォメットさんと並んで食費が凄いのだ。 しかも肉が好きだし。 凄い代謝をしているなぁ、と感心した。☆★☆★☆「撃っても効かないポコ!」「いかん! 反転だ! 全速離脱!」 未開地域であるC-136方面危険宙域で、エネルギー反応性危険ガス雲が漂う中、再び巨大アメーバに遭遇する。 全長8km以上。ハンニバルの10倍以上の大きさだった。  ……しかも一匹だけではない様子。 ここは彼らの巣なのだろうか。 巨大なアメーバの触手がこちらに伸びてきたために、やむなく迎撃。 砲塔型のレールガンで追い払おうとしたら、逆に本体もこっちへ近づいてきた。  ……怒ったのかな。 というか、早くなんとかしなきゃ。「短距離跳躍いけますわ!」「逃げるクマ!」「跳躍開始!!」「了解!」 ハンニバルは戦術短距離跳躍を連続使用し、巨大アメーバ出現地域から辛くも脱出した。 ちなみに、今回の航行もハンニバル単艦での航海である。 一般には駆逐艦などが速いイメージがある。 しかし、宇宙潮流などの各種特殊抵抗係数を考えると、長距離航行は大型艦の方が燃費が良くなってしまうのだ。 それに、友好を訴える使節が大きな艦隊を組むわけにはいかない。 そういう訳で、ハンニバル単艦での航海だった。☆★☆★☆ 以前に航海したデータがあるのと、敷設して置いた航路用発信機のお陰で、意外と早く神聖レオナルド王国がある星系までたどり着いた。「我、カリバーン帝国籍装甲戦艦ハンニバル……!」 星系外縁部で平文の通信を送る。 相手をビックリさせないために必要な措置だった。「……来訪ヲ歓迎スル!」 30分後に返答が来た。 例の如くタコ型星人たちの王国である。 内容は、まぁ、来てもいいよってことだ。 ハンニバルは短距離跳躍を交えながら、神聖レオナルド王国のあるガス惑星付近に到達。 衛星軌道上外縁に停泊した。
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第44話……夏の思い出と訓練日和

 アメーリア女王に歓待された私は、衛星アトラスに戻っていた。 帰りに沢山のお土産も貰った。  そのお土産に、蛮王様たちも喜んだ。 ……やはり大きなハンニバルで来てよかったと思った。  ふと手元の手帳を見るが、クラン・シェリオのメンバーとはしばらく会っていない。 他のメンバーはログインしていないようだった。 もうこの世界では、自分は初心者という訳ではない。 今の手元に現金が少しあることもあり、指定された違約金をはらってクランを脱退した。 欲しい情報は他から手に入るし、あまり肌に合ったクランでは無かったのだ。☆★☆★☆ カリバーン帝国暦851年8月 惑星リーリヤの首都フレイムで、私は暑い夏を迎えていた。「海へ行くクマ~♪」「スイカ割りするポコ~♪」 積乱雲が似合う青空に、きつい日差し。 私はみんなと海水浴に来ていた。 クリームヒルトさんは大きな日傘をさしている。「イカ焼き食べたいポコ♪」「すいません、イカ焼き6つください」「毎度あり!」 ぢうぢうと焼かれる海産物。 サザエやホタテの地獄焼きもある。 見た目も香りもとてもおいしそうだ。 海の家で食べるから美味しいのかも知らないが……。 皆で美味しくイカ焼きを頂く。 ちなみに今日の私はサングラスをしている。 一つ目巨人用の特注品だ。 これで、視線は自由だ。世界は平和だ。 ……ウフフ♡ 暑い太陽の下。 皆がはしゃぐ中、私はゴロゴロする。  その後も私は十二分に輝く夏の日を楽しんだ。 もちろん、ゲームの中だけどね……。☆★☆★☆ 帝国暦851年10月。 私はチマチマと小惑星破壊の任務をこなしていた。 わずかであるが、臨時収入を稼ぐ。 装甲戦艦ハンニバルは大きくなり、乗員が常時150名はいる。 戦闘時ともなれば、その数は400名にものぼった。 そのために食堂は大混雑なのだが……。 今日の目玉はロースカツ丼だ。 早く仕事を終えて、並ばなくては。 食堂は我々の小さな戦場でもあった。「後進良し!」「停止!」「総員戦闘準備!」「配置急げ!」「機関前進! 微速!」「了解!」「砲塔右30度旋回!」「仰角15度!」 小惑星破壊と合わせて、兵員の訓練もこなす。 訓練の為、蛮王様のところの新兵も載せていた。 提督や将軍のお仕事は、平時は
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第45話……作戦会議『ツェルベルク首都星系』

 私はこの厳かな会議に参加していた。 高級なソファーに紅茶とお菓子付きである。 なんだか偉い人になった気分だ。「はじめてもらおう」 この会議の議長であるクレーメンス公爵元帥が声を発する。 カリバーン帝国の皇帝たる女帝パウリーネは僅か8歳。 彼女の後ろ立てこそクレーメンス公爵元帥であり、帝国の軍事部門のTOPである帝国統合防衛会議議長だった。 ……そう、この度は侵攻作戦なのだが、人類は有史以来、自分たちの軍こそは防衛の為であると名目を付けるのが大好きなのだ。「あまり大規模な作戦はこまるぞよ……予算がの……」 首席アドバイザーとして出席しているのは、帝国の国庫を預かる財務大臣アーベライン伯爵だ。 彼は日頃から常に経済政策に身を投じる白髪の老人だった。「……ちっ、老いぼれが……」 クレーメンス公爵とアーベライン伯爵は犬猿の仲だった。 二人とも帝室や経済界と血縁関係にある重鎮だった。 まあ、軍事のTOPと財政のTOPが険悪というのは、有史以来よく見られることである。 その方が国として、健全かもしれない。「えー今回の作戦につきまして、ご説明を申し上げます……」 統合軍司令長官パウルス上級大将が今回の作戦の概要を述べる。 彼は帝国の惑星地上軍と宇宙艦隊という二つの軍をまとめる要職だった。 彼の下座に、惑星地上軍のTOPであるバールケ大将と、宇宙艦隊TOPのヘルツォーゲン大将が並ぶ。 ちなみに人数的に、惑星地上軍の方が人員の面で多いために、宇宙艦隊より惑星地上軍の方が優位な立場にある。「わはは……、艦隊戦で勝ってくれるなら全ての星を制圧してやるぞ! 勝てるならな!」 ビア樽のような巨躯のひげ面であるバールケ惑星地上軍大将が豪快に笑う。「……」 細身の老提督であるヘルツォーゲン宇宙軍大将は挑発に乗らない。 目を静かにつむったままだ。 ヘルツォーゲン宇宙軍大将の下には、実際に星系連合艦隊を率いる中将クラスがおり、その下に星系艦隊を統括する少将や准将クラスが配されている。 私は本来エールパ星系を統括する准将クラスの代理という訳だ。 エールパ星系の惑星地上軍の代表は、惑星リーリヤのヘッツアー軍務卿だった。「……いつも貴様らが艦隊戦に負けるからだろうが! この宇宙のクズが!」「……先日の輸送船団の功績を忘れたのか!? この地上の
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第46話……『聖騎士の行軍』作戦 ――前編――

 衛星アトラスに停泊するハンニバルは、急ピッチで荷物を積み込んでいた。 貨物クレーンが忙しなく動いている。「物資詰め込んだポコ!」「倉庫区画一杯ですわ!」「詰め込みすぎは良くないメェ!」「船が壊れるクマ!」「わかったよ、了解!」 私はみんなにブツクサ言われつつも、物資を満載してエールパ星系を飛び立つ。 ……4日後にはアルデンヌ星系に到達。 ここが我がエールパ星系艦隊の防衛責任地域である。 そして、私の秘蔵の物資を展開する。 まずは、簡易宇宙トーチカを敷設。 超硬質コンクリートを使い、そのまわりに対艦載機用の超硬鋼線ネットを張り巡らせる。 対艦レーザー銃座も配置した後に、ガス状機雷も多数ばら撒いた。 さらに、共和国軍の新兵器対策。 対光学迷彩艇探信儀ブイをばら撒く。 光学迷彩艇とはレーダージャミングを強力にした船に、コウイカやヒラメのような特技を持つ光学迷彩生命体を表面装甲に設置したもので、恐ろしい隠蔽能力を持っていた。 この艦が知らずに近くにいると、敵の長距離砲に好きなように撃たれる可能性があったのだ。 よって対策は必要だと考えたのだ。「防備が凄い量ポコね……」「こんなところに敵はきませんわ!」「ガス状機雷は跡片付けがめんどうニャ」 過剰ともいえる防御設備は、皆に総スカンだった。 私は聞いてないふりを決めこみ、臨時に雇った工兵隊に頑張ってもらって、アルデンヌ星系に一大防衛陣地を築いたのだった。「敵よ、来るなら来い!」「だからここには来ないポコよ!」「……」☆★☆★☆「支援砲撃開始!」「「「了解!」」」 パウルス上級大将の号令の下、帝国軍艦艇の主砲は一斉に火を噴いた。――カリバーン帝国暦851年11月。 ついに『聖騎士の行軍』作戦は開始した。 以前より共和国との小競り合いが続いていた正面戦線G-889地域に、長距離レーザー砲の射撃が降り注ぎ、大型ミサイルがイナゴの大群のように襲い来る。 なにしろ帝国は、この作戦に稼働できるほぼすべての星間航行艦艇を動員していた。「砲撃開始!」「まかせろポコ!」 この砲撃作戦には、一時的にハンニバルも参加していた。 この大規模な支援砲撃の下、帝国軍のミサイル艦やレーザー砲艦などの小艦艇が突撃した。 この攻撃作戦は苛烈で、共和国軍の小型防御要塞は次々に沈黙。
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第47話……『聖騎士の行軍』作戦 ――中編――

 クレーメンス元帥の帝国艦隊主力は、ラヘル星系の外縁に次々に侵入。 星系外縁の防備施設を急襲し、これを殲滅せしめることに成功した。 攻撃開始より8時間後。 ついにラヘル星系の主星、惑星ロンギヌスを肉眼で捉えるまでに肉薄した。――惑星ロンギヌス。 帝国には詳しいデータは無かったが、見るからに緑が美しい自然が豊かな青い惑星だった。「降伏勧告をしてやれ!」「はっ!」 クレーメンス公爵元帥は目の前に広がる青く豊かな惑星に対し、降伏勧告を行った。 星系外縁の防衛施設は破壊したため、抵抗する力は無いと判断したのだった。「……返信はまだか?」「はっ、未だ返信ありません!」 クレーメンス公爵元帥は降伏勧告より8時間待ったが、返答はなかった。 いたずらに時間が過ぎれば、共和国軍の援軍が来る恐れがある。 ……あまり時間の余裕はなかったのだ。「やむをえまい、抵抗するなら仕方がない」「無差別爆撃を行いますか?」「いや、せっかくだから占領してしまおう!」 クレーメンス公爵元帥はこの星を廃塵にするのは惜しいと考え、惑星上陸戦を指示した。「了解! 全艦対惑星戦用意!」「惑星揚陸艦前へ!」 クレーメンス艦隊主力の後方より、惑星揚陸艦が前へ進み出る。 彼等は惑星地上軍の艦船であり、地上戦を専門としていた。「前衛部隊、惑星軌道上に侵入!」「降下開始せよ!」「「「了解!」」」 全長150m級の惑星揚陸艦は次々と大気圏に突入。 艦体を摩擦熱で赤く焦がす。 惑星上陸支援にミサイル艦やパワードスーツ隊が続く。 流石に惑星ロンギヌスから対空砲の弾幕が上がる。「敵対空砲着弾! 惑星揚陸艦ハーケン被弾! 中破!」「やむをえん、艦隊を前進させて応戦しろ!」「はっ」「巡洋艦対地上戦用意!」 クレーメンス公爵元帥は宇宙艦隊にも攻撃への参加を命じた。 敵艦隊を警戒していた艦艇が、対艦砲弾から対惑星砲弾に切り替える。 換装しないと、交戦条約に引っかかるのだ。 「全艦突入せよ!」 しかし、クレーメンス公爵元帥の艦隊主力が衛星軌道上に入った途端、猛烈な対空弾幕が襲う!「重巡洋艦アメリア被弾!」「戦艦タストリア被弾! 火災発生!」「航宙母艦バロン小破!」 クレーメンス艦隊は一気に爆炎の渦中となってしまう。 地上戦に参加した艦艇は、次々に被弾。
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第48話……『聖騎士の行軍』作戦 ――後編――

「敵襲!!」「砲撃戦用意!!」「長距離砲は射程に入り次第攻撃!」「ミサイル艇は接近できるタイミングをうかがえ!」 ヴェーデル少将の艦隊と共和国艦隊はお互いに会敵。 じりじりと距離を詰め、長距離からの砲撃戦となった。 敵味方の大型艦の大口径レーザービーム砲が火を噴く。 距離が縮まり始めると、順次中距離用のミサイルが発射された。 そして、近距離支援のパワードスーツ隊は発艦のタイミングを、今か今かとうかがっていた。 ヴェーデル少将の艦隊は比較的開けた宙域に、星間航行戦闘艦8隻と輸送艦4隻、小型ミサイル艇32隻にて布陣していた。 彼等の任務は、クレーメンス公爵元帥率いる帝国主力艦隊がラヘル星系を落とすまで、共和国軍の艦隊を足止めすることであった。「ヴェーデル閣下! 敵は次々にワープアウトしております。確認できただけでも我が方の2倍は優におりますぞ!」「不味いな、リーゼンフェルト中将に援軍を頼め!」「はっ!」 しかし、交通の便の良い場所は守るのに適さず、ヴェーデル少将の艦隊は防戦虚しくあえなく敗退してしまった。 その後、共和国艦隊は近隣にて布陣するリーゼンフェルト艦隊を発見。 これを攻撃にかかった。「撃て!」「迎撃せよ!」 帝国軍と共和国軍の双方は大口径レーザービームの束を吐き出す。 対艦ミサイルが飛び交い、戦いは激烈を極めた。 しかし、リーゼンフェルト中将の艦隊が布陣する宙域は恒星風が強く、その上流に構えるリーゼンフェルト艦隊は有利に戦いを進めることになる。 攻め寄せる共和国艦隊は地の利が乏しく、小惑星地帯に立て籠もるリーゼンフェルト艦隊を遠巻きに包囲するしかなかった。 このまま時間が過ぎれば、クレーメンス公爵元帥の帝国主力艦隊がラヘル星系を落とす方が早いと思われた。☆★☆★☆「このような地では、十分な補給が望めぬわ!」「……しかし、これといって食料や弾薬が足りぬわけではありませんぞ!」 補給が届かぬと不満を鳴らすリーゼンフェルト中将に、幕僚たちが意見を異にする。「……うるさい! それは兵たちのことであろう?」「他になにがありまするか!?」 参謀長のミュラー大佐は顔をしかめ、尋ねた。「そ……それは我が寵姫たちがだな……、こ、このような場所はこ……好まぬと……」 参謀長以下幕僚たちは、今おかれた状況を知り、驚愕
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第49話……ルドミラ教国艦隊来襲!?

――ルドミラ教 この世界における最も大きな宗教団体である。 ……但し、人族においてはという点が要注意である。 女神ルドミラは人の形をしたものを最も尊いと教義する宗教団体である。 グングニル共和国から独立した勢力は、カリバーン帝国をはじめとして人族の住民比率が低い。 共和国は人族が84%の人口を占めるのに対し、帝国は僅か48%である。 この世界では昔から、人族でないものは人にあらずといった文化がある。 文字的には正しいのだが、異形他民族からすると堪らない。 更には過去の熱核戦争での食糧難に際し、共和国政府が人族に優先して食料を配給した事実もある様に共和国は人族優勢社会であるのだ。 この人族最大勢力の共和国で醸成されたルドミラ教が、人族優先でない訳が無いのである。 『異形他種族に奪われた職を奪回せよ!』などのスローガンを掲げ、工業や農林水産従事者などの間で支持者を拡大。 企業から多額の献金も集め、共和国の議会や軍事にも強い影響力を持つようになった。 ちなみに、カリバーン帝国の元宰相ホーウッド公爵は熱心なルドミラ教信者である。 そのために帝国を裏切ったという噂まであるほどである。 しかし、ルドミラ教は人族の貧しいものには慈善活動を施す一方、異形種族に対しては徹底的な差別と弾圧を加えた。 これには人族の失業者や低賃金労働者の余勢も駆り、裏側でかなり暴力的な活動も展開させていると噂されている。 これに対し、共和国政府は対応として、3年前に『全種族平等条約』に批准することになった。 異形他民族排斥をけん制した政策であった。 ちなみにこの条約は、多種族な人口構成である帝国が最初に作った国際条約である。 この条約批准にルドミラ教信者の怒りは沸騰。 人族の『人権侵害』として激しく糾弾し、主要各都市で過激なデモを引き起こした。 しかし、共和国政府はこのデモを条約違反として激しく糾弾したために、帝国暦でいう850年に信者である軍部の一部勢力や、地方星系政府が独立してしまった。 この独立に同調した星系の数は39個。 いかに多民族間での銀河統治が難しいかという証左となってしまった。 その後、39の星系を支配する新しい政府として、ルドミラ教国の設立を宣言。 国家元首はルドミラ教のブロンズ枢機卿。 同じく共和国と敵対する帝国政府は、その政権と
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第50話……奮戦!激闘!ハンニバル!

「敵は僅かだ! 攻勢をかけろ!」「了解!」 アルデンヌ星系に攻勢をかけるルドミラ教国軍の総司令アラン元帥は、元共和国軍の有望な若手指揮官だった。 彼は前線指揮を望んだが、幕僚たちは総司令官を前線に立たせるわけにはいかない。 よって彼は、後方で督戦する状況となっていた。「前線部隊が再び待ち伏せ攻撃を受けた様です!」「……またか? 敵は騎士道を知らんと見える」 ルドミラ教国軍の艦艇はカリバーン帝国の構築した陣地に攻勢をかけたが、大小の小惑星に潜む装甲機動歩兵を中心としたゲリラ戦術に悩まされていた。 彼は小部隊を率いては名指揮官であったが、大軍の指揮は苦手としていたのかもしれない。☆★☆★☆――装甲機動歩兵。 全高3mほどの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を指す言葉である。 主な任務は陣地構築や艦船の簡易整備を担当する工兵任務が多い。 武装は対艦小型ロケットランチャーを標準装備。 主に接近戦を得意とする。 逆に言えば接近しないと無力でもある。 これに対して全高18mの装甲外殻パワードスーツを着用した兵士を装甲機動騎兵と呼ぶ。 小型の核融合炉を内蔵し、小型のレーザービーム兵器も携帯できる花形兵器であった。 しかし、搭載炉が小型であるためにシールド能力は皆無で、艦船の対空兵器の能力が向上してくると被害が馬鹿にならなかった。 更には、その複雑な構造から整備が大変で、一度出撃すると整備に48時間かかった。 人型を模した兵器は繊細で構造が複雑だったのである。 優れたパイロットが操れば戦果が期待できたが、電磁カタパルトに乗せた場合には艦載機に比べ繊細な分だけ、加速時の潮汐力に特に弱かった。 我々の世界でも最新鋭の航空機は整備が厄介で、コスト的に量産ベースに乗らないことも多い。 戦時の兵器とは、整備も含めたコストパフォーマンスが重視されるので、必ずしも最強の兵器が活躍するとは限らなかった。☆★☆★☆「左翼を迂回した敵は、見事に機雷原にはまったポコ!」「敵撤退の模様!」「機関部とアンテナを優先攻撃!」「撃沈はさせるな!」「「「了解!」」」 些か卑怯とは思うが、敵艦の足と眼を集中攻撃。 態と沈めないように、敵を後方へ逃がしたりもした。「敵正面! 第六波接近してきますわ!」「迎撃用意!」「了解ポコ! 1番から8番までミ
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