最初に意識に触れたのは、薄く差し込む光だった。カーテンの隙間からこぼれた白い朝日が、リビングの床に細く伸びている。 見慣れない天井。少し低い照明。昨日まで知らなかった部屋の匂い。洗剤と、コーヒーと、浅井さんの気配が混ざったような、静かな空気。「……」愛海は、しばらく目を開けたまま動けなかった。頭がまだ重い。喉が少し乾いている。身体の奥に、眠りきれなかった熱が残っている。ここはどこだろう。そう思ったのは、一瞬だけだった。次の瞬間。全部、戻ってきた。樹と飲んだこと。浅井さんの家に来たこと。水を飲まされて。問い詰められて。嫉妬されて。そして。自分が言ってしまった言葉。“帰りたくないです”“好きです”“もっと”「……っ」愛海は反射的に身体を起こした。ブランケットが膝から滑り落ちる。ソファ。浅井さんのリビング。昨日、浅井さんに抱きしめられていた場所。その事実が、寝起きの鈍い意識に容赦なく流れ込んでくる。「……無理」声にならない声が落ちた。何を言った。何をしている。好きです、まではまだいい。よくはないけれど、まだ説明できる。でも。“もっと”は何。あれは何をどう考えても、酔っていたとしても、許される範囲を超えている。「……最悪……」両手で顔を覆う。指の間から漏れる息まで熱い。昨日の自分を思い出すだけで、身体ごと小さく畳まれていくようだった。しかも。浅井さんは止めてくれた。あんなに近かったのに。あんなに声が低かったのに。“ちゃんと付き合う時、後悔させたくない”と。その優しさまで思い出してしまって、もう余計に逃げ場がない。その時。キッチンの方から、カップが置かれる小さな音がした。「起きた?」低い声。寝起きの頭に、やけに深く響く。愛海は弾かれたように顔を上げた。「……っ」浅井さんがいた。キッチンに立っている。白いシャツの袖を軽く捲って、コーヒーを淹れていた。髪も服も整っていて、昨日の夜の気配なんて少しも引きずっていないみたいに見える。あまりに普通だった。普通すぎて、逆に傷つくくらい。「水飲む?」浅井さんがこちらを見る。声も、表情も、落ち着いている。昨日、あんな顔をしていた人と同じ人とは思えない。「……飲みます」かろうじて答えると、浅井さんがグラスを持って近
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