前の日の温度感を保ったまま。次の日も、本社の会議室にいた。監査チーム、本社法務、経理、外部関係者。全員が揃っている。空気が今までにないくらいに重い。「本日は最終報告を行います」資料が配られる。ページがめくられる。「本件において、中間業者を経由した資金の不正流用が確認されました」静かなざわめき。「資金は複数法人を経由し、最終的にTK Network関連口座へ流入」「さらに松村ホールディングス関連ファンドへの接続も確認されています」完全に。事実として、繋がった。「承認前の情報を基にした資金移動も確認されており、内部関係者の関与が認められます」沈黙が続く。逃げ場はない。この関係者が誰に示すのかまで、明確だった。「関係者への最終確認を行います」視線が向く。樹へ。「高山さん」「……はい」立ち上がる。迷いはない。「今回の資金移動について、あなたの関与はありますか」一瞬の間。「……あります」はっきりと。ざわめきが広がる。そのような状況でも、樹は冷静だ。そして、止まらない。彼は、淡々と話し始めた。「承認前情報にアクセスできる立場にありました」「その情報を外部と共有しました」「設計は誰ですか」「……松村ホールディングス側です」空気が壊れる。みゆの表情がわずかに歪む。「本件は社内処分および外部報告へ移行します」決定が出る。すべてが確定した。会議が終わる。人が散っていく。ざわめき。私は動けない。(終わった)やっと。全部。「愛海」振り向く。樹。さっきまでと違う。どこか、落ち着いている。「少し話せる?」「……少しだけなら」外へ出る。人気のない通路。静か。「……」樹が口を開く。「思ってたより、軽いな」「……何が」「処分」少しだけ笑う。「グループの案件だから」「御曹司だから」「そんなに大事にはならないのは知ってた」その言葉。一瞬で、冷める。自分がやってきたことあっさりと認めて。私の人生を、大きく変えておきながら。自分は軽い処分で済んだことだけを語りたかったのか。あまりにも、軽すぎて。思わず、想像以上の不快感が私に覆い被さる。「……それ言いに来たの?」「違う」一歩近づく。「終わったから」「やっと普通に話せると思って」「……」「全部整理できた
続きを読む