夕方の海沿いは、昼間とはまるで別の場所みたいだった。少し前まで白く光っていた海面は、ゆっくりと橙色を含み始めていて、遠くの水平線だけが薄い金色に滲んでいる。遊歩道の街灯はまだ完全には明るくならず、夕暮れと夜の境目に、淡い光だけを落としていた。風は少し冷たい。けれど、隣に浅井さんがいるせいで、その冷たさまで心地よく感じる。昼からずっと一緒にいた。車の中で、他愛ない話をして。海沿いのショッピングモールを歩いて。雑貨屋で意外な一面を知って。カフェで、仕事では見られない顔を見た。何か特別なことをしたわけじゃない。ただ、浅井さんと二人でいた。それだけなのに、今日一日が胸の中でずっと熱を持っている。隣を歩く浅井さんをそっと見た。黒のジャケットの裾が、風に少しだけ揺れている。昼間は何度も笑っていたのに、今は少しだけ静かだった。横顔は相変わらず整っていて、街灯の薄い光が頬の輪郭をなぞるたびに、仕事中とは違う大人の色気が滲む。ずるい、と思いかけて、その言葉を飲み込んだ。最近、その言葉だけでは足りなくなっている。浅井さんを見るたびに、胸が騒ぐ。何かを言われる前から、視線が合う前から、もう勝手に気持ちが動いてしまう。「疲れた?」浅井さんが、歩幅を少し緩めて聞いた。そのさりげなさに、また胸が小さく揺れる。こういうところに気づく人なのだ。仕事ではあれほど容赦なく判断するのに、愛海の歩く速度には、何も言わず合わせてくれる。「少しだけです。歩きすぎました」「俺のせい?」「浅井さんが、いろいろ連れていくからです」少しだけ責めるように言うと、浅井さんが横目で愛海を見て、静かに笑った。「嫌だった?」その聞き方は軽いのに、目だけが少し真面目だった。海へ視線を逃がした。波が堤防の下で白くほどけて、風に混じって小さな音を立てている。遠くで子どもが笑っていて、すぐそばを手を繋いだカップルが通り過ぎた。「嫌じゃなかったです」言ってから、少しだけ迷う。でも、今日は誤魔化したくなかった。「むしろ、終わるのが少し嫌です」声にした瞬間、自分の胸の内側がきゅっと狭くなる。こんなふうに素直なことを言うのは、まだ慣れない。自分が思っているよりもずっと、浅井さんには本音が出てしまう。浅井さんはすぐには返さなかった。ただ見ていた。その沈黙に責め
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