まず三か月。小さくでいいなら、お願いできますか。小野寺岳のその言葉は、帰宅してからも美緒の中に残っていた。嬉しくなかったわけではない。むしろ、胸の奥に小さな灯りがともるような言葉だった。リブランシュとして作った提案書が、初めて仕事として受け取られようとしている。小野寺製菓の価値を、続く形で届けるために。そう題した資料は、ただの理想ではなく、誰かの会社の明日につながるかもしれないものになった。千鶴の声も、まだ耳に残っている。うちの商品、ちゃんと見てもらえた気がします。その言葉は、提案書への感想である以上に、美緒が初めて仕事として誰かの大事なものに触れられた証のように聞こえた。けれど、机に向かい、見積書のフォーマットを開いた瞬間、美緒の指は止まった。小野寺製菓株式会社 御中。三か月試験支援業務 御見積書。リブランシュ。代表 篠原美緒。そこまでは書ける。屋号も、名前も、もう迷わず入力できるようになっていた。名刺にも、提案書にも、すでにその文字を載せている。篠原美緒として、リブランシュの代表として、小野寺製菓の前に立った。問題は、その下だった。業務内容。期間。成果物。そして、報酬。美緒は、金額欄を見つめた。白い空欄が、画面の中で妙に広く見える。ここに数字を入れる。それは、相手からお金を取るというだけのことではなかった。自分の仕事に、自分で値段をつけるということだった。美緒は、業務内容の欄へ先に入力していった。商品別採算整理。EC導線改善案。ギフトセット構成案。小規模販売テスト設計。月次確認ミーティング。改善メモ作成。ここまでは書ける。前回、小野寺製菓に提案した内容を、三か月で実行可能な形に区切ればいい。大きく刷新するのではなく、小さく検証する。売上だけでなく、利益と反応
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