All Chapters of 御曹司の妻を辞めた日、私は社長になった〜久世家を出た元嫁は、格上エリートと人生を再建する: Chapter 51 - Chapter 60

60 Chapters

51.リブランシュ代表

まず三か月。小さくでいいなら、お願いできますか。小野寺岳のその言葉は、帰宅してからも美緒の中に残っていた。嬉しくなかったわけではない。むしろ、胸の奥に小さな灯りがともるような言葉だった。リブランシュとして作った提案書が、初めて仕事として受け取られようとしている。小野寺製菓の価値を、続く形で届けるために。そう題した資料は、ただの理想ではなく、誰かの会社の明日につながるかもしれないものになった。千鶴の声も、まだ耳に残っている。うちの商品、ちゃんと見てもらえた気がします。その言葉は、提案書への感想である以上に、美緒が初めて仕事として誰かの大事なものに触れられた証のように聞こえた。けれど、机に向かい、見積書のフォーマットを開いた瞬間、美緒の指は止まった。小野寺製菓株式会社 御中。三か月試験支援業務 御見積書。リブランシュ。代表 篠原美緒。そこまでは書ける。屋号も、名前も、もう迷わず入力できるようになっていた。名刺にも、提案書にも、すでにその文字を載せている。篠原美緒として、リブランシュの代表として、小野寺製菓の前に立った。問題は、その下だった。業務内容。期間。成果物。そして、報酬。美緒は、金額欄を見つめた。白い空欄が、画面の中で妙に広く見える。ここに数字を入れる。それは、相手からお金を取るというだけのことではなかった。自分の仕事に、自分で値段をつけるということだった。美緒は、業務内容の欄へ先に入力していった。商品別採算整理。EC導線改善案。ギフトセット構成案。小規模販売テスト設計。月次確認ミーティング。改善メモ作成。ここまでは書ける。前回、小野寺製菓に提案した内容を、三か月で実行可能な形に区切ればいい。大きく刷新するのではなく、小さく検証する。売上だけでなく、利益と反応
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52.久世物産のひび

久世物産の会議室には、色鮮やかな資料が広げられていた。KUZÉ ma vie。淡いベージュとくすんだピンクを基調にした表紙には、上品なロゴと、陶器のように白い菓子箱のイメージ写真が置かれている。ページをめくれば、限定ボックス、インフルエンサー施策、百貨店ポップアップ、ノベルティ、SNSキャンペーン、初回限定セットの案が、きれいに並んでいた。莉奈が好みそうな資料だった。華やかで、柔らかく、久世家の名前にふさわしい上品さがある。会議室のスクリーンに映せば、見栄えはいい。最初の印象も悪くない。百貨店の一角に並べば、確かに足を止める人もいるかもしれない。けれど、浜口佐和は資料をめくりながら、眉を寄せていた。華やかさの下にあるはずの数字が、薄い。初回ロットの根拠。販促費込みの粗利。在庫が残った場合の処理。ECへの導線。値引きに回った場合の利益率。百貨店催事の手数料。ノベルティ制作費。インフルエンサー施策の費用対効果。どれも、まったく書かれていないわけではない。ただ、浅かった。見栄えのよい企画資料としては整っている。けれど、実際に商品を動かす側から見ると、足元が見えない。浜口は、資料の余白を見つめた。前は、ここにリスク整理が入っていた。声に出すつもりはなかった。けれど、その一文は思ったよりもはっきり胸の中に落ちた。KUZÉ ma vieの初期資料には、別紙があった。販促費込みの損益シミュレーション。初回ロット別赤字リスク比較。商品別粗利表。EC導線の確認メモ。在庫リスク整理。追加施策を入れる場合の再試算メモ。それらは、華やかな資料ではなかった。淡い色のキービジュアルも、洒落たコピーも、ブランドの世界観を説明する言葉もない。ただ、商品が売れたあとに何が残るのか、売れ残った場合にどこまで損失が出るのか、どの販路でどの費用が膨
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53.初めての報酬

見積書を送ってから、三日が経った。美緒は、その三日の間に、仕事用のメールボックスを何度も開いた。急かしているわけではない。小野寺製菓にも検討する時間が必要だと分かっている。岳が簡単に首を縦に振る人ではないことも、千鶴が父を説得するには時間がかかるだろうことも分かっていた。それでも、受信箱を開くたび、胸の奥が少し硬くなった。返信はまだない。見積書を送り直した方がいいだろうか。もう少し金額を抑えた方がよかったのではないか。三か月の試験支援とはいえ、小野寺製菓にとって安い額ではない。包装資材費も上がっている。百貨店催事は売れても、手数料や人件費、値引き分を入れれば利益は薄い。そんな会社に、開業したばかりの個人事業主がこの金額を提示するのは、やはり強すぎたのではないか。不安は、何度も同じ形で戻ってきた。まだ実績がない。リブランシュとして契約した仕事はない。名刺も、契約書も、請求書も、形だけは整えた。けれど、形があることと、相手に選ばれることは違う。美緒は机の上に置いた見積書の控えを見る。小野寺製菓株式会社 御中。三か月試験支援業務 御見積書。リブランシュ。代表 篠原美緒。その下には、業務範囲を明記している。商品別採算整理。販路別利益整理。EC導線改善案。ギフトセット構成案。小規模販売テスト設計。月二回の打ち合わせ。月次改善メモ。三か月後検証レポート。業務範囲外も書いた。ECサイト制作そのものは含まない。SNS運用代行は含まない。広告運用代行は含まない。久世物産との交渉代行は含まない。それらを入力した時、美緒は手が震えた。できることより、できないことを書く方が怖かった。相手に冷たいと思われるのではないか。
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54.減らす勇気

小野寺製菓との三か月支援は、静かに始まった。契約書に署名をし、初回の報酬を受け取り、手帳に「初めて、自分の仕事で受け取った」と書いた時、美緒は確かに一つの線を越えたと思った。けれど、本当の仕事はそこからだった。報酬を受け取ったことは、喜びだけではなかった。美緒の手の中に、責任として残っていた。小野寺製菓が続けられる形を作ること。千鶴が守りたいと思っている商品を、届く形にすること。岳が納得できる数字を示すこと。そして、リブランシュとして受けた仕事を、手伝いではなく仕事として返すこと。初回の実務打ち合わせの日、美緒はいつもより少し早く起きた。小さな部屋のテーブルには、三か月支援計画のたたき台、商品別利益表、販売テスト案、EC導線メモ、契約書の控え、手帳、名刺入れが並んでいる。前に手帳へ書いた言葉が見えた。初めて、自分の仕事で受け取った。その下は、まだ空白だった。受け取った以上、返さなければならない。そう思うと、胸の奥が静かに重くなる。久世家にいた頃の重さとは違った。あの頃の重さは、どこまでが自分の役目なのか分からないまま、次々に増えていくものだった。頼まれ、気づき、先回りし、引き受けて、それでも名前は残らなかった。今は違う。範囲がある。契約がある。報酬がある。だからこそ、責任もある。美緒は名刺入れを確認した。リブランシュ。地域ブランド事業支援。代表 篠原美緒。その文字は、前よりも少しだけ見慣れていた。けれど、見慣れたから軽くなったわけではない。むしろ、紙の向こうに小野寺製菓の現場が見える分だけ、以前よりも重く感じた。美緒はバッグに資料を入れ、最後に黒いペンを差し込んだ。今日は、提案する日ではない。契約を結ぶ日でもない。実際に動かすための、最初の判断をする日だった。小野寺製菓の会議室に入
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55.千鶴の言葉で売る

次に必要なのは、商品をどう語るかだった。三か月で試す対象は決まっている。看板焼き菓子を一品。そこから、ギフト用、自宅用簡易セット、初回お試しセットへ展開する。ECページも、すべてを直すのではなく、その商品に関わる部分から整える。既存顧客への案内も、大きなDMではなく、小さく反応を見られる形にする。そこまでは、前回の打ち合わせで決めた。けれど、商品を一つに絞ったからといって、そのまま売れるわけではない。何を売るかを決めたなら、次はどう伝えるかを決めなければならない。美緒は、小野寺製菓の事務所奥にある小さな休憩スペースで、ノートPCを開いた。会議室ではなく、あえてここにした。工場へ続く廊下が近く、奥からかすかに焼き菓子の香りが届く。壁には、昔の商品写真が飾られていた。古い包装紙を額に入れたもの、地元の催事で撮られた写真、受賞した賞状、客から届いた礼状らしい手紙もいくつかピンで留められている。堅い会議室より、千鶴が話しやすい場所だと思った。数字の話ではない。今日は、言葉の話だった。千鶴は、美緒の向かいに座っていた。手元には、看板焼き菓子の実物と、これまで使っていた商品ページの印刷、古い包装紙、現在の箱、そして千鶴が自分で書いたらしい簡単なメモがある。メモの端には、何度も書き直した跡があった。美緒は、ノートを開いた。「今日は、この商品の言葉を作りたいです」千鶴は少し戸惑ったように顔を上げた。「言葉、ですか?」「はい。商品説明や案内文に使う言葉です」千鶴は、困ったように笑った。「でも、うちの商品って、そんなに語れるようなものでは……」その言い方には、謙遜というより、本当にそう思っている人の迷いがあった。商品を作る人ほど、自分たちの商品の価値を説明することに慣れていないのかもしれない。千鶴の困った顔を見ながら、美緒はそう思った。「まずは
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56.小さな販売テスト

販売テストの前日、小野寺製菓の事務所には、いつもより多くの紙と箱が並んでいた。ノートPCの画面には、公開前の商品ページが表示されている。机の上には、商品写真の印刷、セット内容表、価格表、送料計算表、包装サンプル、商品説明カード、販売開始チェックリストが広がっていた。看板焼き菓子の小さな箱も、ギフト用、自宅用、初回お試し用でそれぞれ置かれている。同じ商品なのに、並べられた姿は少しずつ違って見えた。贈るための箱。自分で楽しむための簡易包装。初めての人が試しやすい少量の組み合わせ。小野寺製菓の商品が、ようやく市場へ出る形になろうとしていた。千鶴はPCの前に座り、画面を何度もスクロールしていた。前回まで机の上にあった言葉が、今は商品ページの中に置かれている。それだけで、千鶴の声は少し外の世界へ近づいたように見えた。画面の上部には、見出しが入っている。派手ではないけれど、きちんと届く手土産。その下には、短く整えた千鶴の言葉があった。子どもの頃から、工場にはこの焼き菓子の匂いがありました。派手ではありません。でも、きちんと届けたい時に選んでもらえる菓子でありたいと思っています。千鶴は、その文章を読むたびに少し照れたような顔をした。「やっぱり、少し恥ずかしいですね」「長くしすぎていないので、大丈夫です」美緒は画面を覗き込みながら答えた。「文章は、長くすれば伝わるわけではありません。買う人が迷わず読めるところまで削ります」「削ると、足りなくなりませんか」「全部を説明しようとすると、かえって読まれません」美緒はページの構成を指で追った。最初に、どんな場面に向く商品なのか。次に、どんな味なのか。その次に、何が入っているのか。価格。送料。保存方法。食べ方。購入ボタン。「買う人が知りたい順番に置きます。言葉を増や
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57.数字が動く

販売ページを公開してから、五日目の朝だった。小野寺製菓の事務所では、千鶴が出社するとすぐにEC管理画面を開くようになっていた。最初の一日は、画面の静けさに押しつぶされそうだった。注文通知はほとんど鳴らず、閲覧数だけが少しずつ増えていく。カートに入った形跡があっても、購入完了にはならない。千鶴はそのたびに、画面を見つめたまま言葉を失っていた。けれど、数日が経つと、その静けさの中に小さな音が混ざり始めた。注文は、波のようには来なかった。けれど、雨粒のように一つずつ落ちてきた。その小さな音を、千鶴は何度も確かめるように画面で追っていた。「篠原さん」千鶴の声が、事務所の空気を少し揺らした。美緒は、持参したノートPCを開きかけていた手を止める。「また一件、入りました」千鶴は画面に顔を近づけていた。声には、嬉しさがある。けれど、それだけではなかった。驚きと、まだ信じきれない怖さが混ざっている。何かが動き始めたのを喜びたいのに、その動きが本物なのか分からず、指先でそっと触れているような声だった。「どのセットですか」美緒が尋ねると、千鶴は注文画面を確認した。「初回お試しセットです。新規のお客様だと思います」「では、入口として機能し始めていますね」美緒はそう言いながら、販売開始から今日までの数字を開いた。注文数だけでは見ない。ページ閲覧数。カート投入率。購入率。セット別販売数。セット別利益。送料込み利益。購入者コメント。新規顧客と既存顧客の比率。数字は、まだ小さい。胸を張って成功と言えるほどではない。SNSで大きく広がったわけでも、注文が一気に増えたわけでもない。画面の中の数字は、慎重に見なければ見逃してしまうほど小さく動いていた。けれど、動いている。それだけは確かだった。千鶴は注文一覧を何度も見ていた。
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58.在庫の山

KUZÉ ma vieの売り場は、確かに美しかった。百貨店の一階、吹き抜けに近いイベントスペースに、淡いベージュとくすんだピンクの什器が並んでいる。中央には、莉奈が最後までこだわった限定ボックス。角度を変えると柔らかく光る箔押しのロゴ。細いリボン。ブランドカード。初回限定のノベルティ。照明も、写真にきれいに収まるよう調整されていた。売り場の隅では、スマホを構えた客が箱を撮っている。インフルエンサーの投稿も朝からいくつか上がっていた。かわいい。箱が素敵。ノベルティ欲しい。世界観が好き。プレゼントによさそう。そうした言葉が、SNS上に流れていく。莉奈はタブレットを手に、画面の反応を何度も確認していた。目元は明るく、頬には高揚があった。「やっぱり、初回の見せ方って大事なんですよ」隣に立つ怜央へ、莉奈は少し得意げに言った。「ここで印象を作らないと、ブランドって覚えてもらえませんから」怜央も売り場を見渡し、頷いた。「反応は悪くないな」その言葉に、莉奈の顔がさらに明るくなる。「ですよね。百貨店の方も、売り場はかなり評価してくださってました」売り場は、確かに華やかだった。箱も、照明も、ノベルティも、写真に収まるために整えられていた。けれど、写真に収まることと、事業として残ることは同じではなかった。その違いは、数日後から少しずつ表に出始めた。初日は動いた。限定ボックスは、見た目の良さで手に取られた。ノベルティ目当ての購入もあった。SNSを見て来たという客もいた。売り場では、莉奈が思い描いた通りの光景が一部には生まれていた。二日目も、まだ反応は残っていた。だが、三日目から線が鈍り始めた。売り場の人だかりは薄くなり、写真を撮る客はいても、購入まで進まない人が増えた。限定ボックスを手に取り、価格を見て、棚へ戻す。ノベルティの内容を確認し、もう少し考えますと言って離れる。浜口佐
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59.銀行からの質問

森川の机の内線が鳴ったのは、午前十時を少し過ぎた頃だった。画面には、KUZÉ ma vieの損益表が開かれている。限定ボックスの制作費、ノベルティ費用、百貨店ポップアップの装飾費、SNS広告費、インフルエンサー施策費、包装資材費、物流費、保管費。項目は増えているのに、回収の見込みはまだ十分に整理されていない。森川は、内線の表示を見て受話器を取った。「はい、森川です」相手は受付ではなく、直接、取引銀行の担当者だった。長谷川。久世物産を長く見ている、四十代前後の銀行員だ。物腰はいつも穏やかで、雑談も柔らかい。だが、数字を見る目は甘くない。「お世話になっております。長谷川です」「お世話になっております」森川は椅子に座り直した。声の調子だけで、用件が軽くないことは分かった。長谷川は、いつものように丁寧だった。「直近の試算表について、いくつか確認したい点がございまして」森川は、手元のペンを取った。「はい」「新規ブランド事業の販促費と在庫回転について、次回お伺いした際にご説明いただけますでしょうか」「KUZÉ ma vieの件ですね」「はい。加えて、既存取引先の条件見直しも含め、今期の収益見通しを確認させていただければと」声は穏やかだった。責める響きはない。融資条件をどうこうするという強い言葉もない。ただ、確認したい、と言っているだけだった。けれど森川は、その静けさの方が重いと思った。銀行は、騒がない。だが、数字の変化には静かに気づく。新規ブランドへの販促費増加。在庫回転の鈍化。利益率の低下。EC施策の効果不明。既存取引先の条件見直し。久世物産の中で、まだ問題ではない、まだ調整できる、と言い換えられていたものが、銀行の目にはすでに変化として映っている。
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60.篠原さんのおかげです

販売テストの集計日は、朝から小野寺製菓の会議室に、いつもと違う静けさがあった。机の上には、印刷された資料が何種類も並んでいる。セット別販売数。セット別利益。購入者コメント一覧。商品説明カードへの反応。ECページの閲覧数。カート投入率。購入完了率。同封カードに関するメモ。そして、次回改善案。どれも、数字としては大きくない。全国的に話題になったわけではない。注文が殺到したわけでもない。EC限定セットが即日完売したわけでもない。けれど、紙の上に並んだ数字には、たしかに動いた跡があった。美緒はノートPCを開き、資料の表紙を確認した。仮のタイトルは、まだこうなっている。第一回販売テスト結果整理。その文字を見てから、美緒は顔を上げた。向かいには千鶴が座っている。背筋を伸ばしているが、膝の上の手は少し硬く重ねられていた。期待しているのだろう。けれど、それを顔に出しすぎないようにしている。岳は隣で腕を組んでいた。いつものように表情は硬い。簡単に喜ぶつもりはない、という顔だった。けれど、初めて会った時のような拒絶の硬さではない。数字を見る前の経営者の慎重さだった。美緒は、資料の一枚目を二人の前に置いた。「今日は、成功か失敗かを一言で決める場にはしません」千鶴が少し目を上げる。岳も、黙って美緒を見た。「何が届いたのか、何がまだ届いていないのかを確認します」美緒はそう言って、画面を切り替えた。成功か失敗かを急いで決めると、見えるものまで見えなくなる。今日の報告を、喜ぶためだけの場にも、反省するためだけの場にもしたくなかった。岳が短く言った。「数字で見せてもらいましょう」「はい」美緒は頷き、全体結果のページを開いた。「まず、今回の販売テストは、大成功という報告ではありません」
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