試合が動くたびに球場が揺れた。打球が飛ぶ。歓声が上がる。惜しい当たりならため息が漏れる。その一つ一つに、二万人を超える者たちが反応する。「そこで振るのか」実篤が唸りながら腕を組む。「初球から行くべきだったな」「結果論はやめましょうよ」光也が即座に反論する。「追い込まれる前に勝負する選択肢もあった」「勘でやる時代は終わったんですよ。いまはデータです」「インテリぶりおって」「才色兼備に越したことはないでしょう?」(……また始まった)。実花はホットドッグを食べながら苦笑する。ハラペーニョの辛味が鮮烈で美味しい。(こっちも娯楽ね)真剣に議論する二人を見る。本人たちは気づいていないが、かなり楽しそうだった。ずっとこんな調子でよく飽きないと思ったが、楽しければ飽きないはずである。(不思議だわ)実花はグラウンドへ目を向けた。前の生でも野球は見ていた。時間だけはあったから、かなり見ていたほうだと思う。だが、目の前の光景と記憶の中の野球は全然違う。◇◇◇夜。一人きりの部屋。やることがないから、眠くなったら寝ようと思って部屋はもう暗い。野球の中継を映すテレビだけが明るかった。時計を見る。十時。恒一はまだ帰ってこない。試合が進んで、ピッチャーが代わる。時計をもう一度見る。十一時。まだ帰ってこない。連絡もない。どこにいるのかも分からない。帰ってくるのかさえ分からない。『旦那様は今日は遅くなるそうです』使用人から聞いただけ。遅くなるとは何時なのか。待っていれば帰ってく
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