「プロポーズしたのに、なぜ驚いている?」(プロポーズしたって……)「いつ……」そういう話になったのかというつもりで実花は聞いたが、光也は何かに納得するように頷いた。「そうだったな、まだ予告したところだった」「あの……」「安心しろ。ちゃんとした場所でプロポーズするから……それよりも」(“それよりも”?)光也が目線を変えて、室内を見渡す。「煩いな」「……そう、ですか?」実花にはうるさくない。いや、正確に言えば視線はうるさい。この場にいる全員が、航も含めて自分と光也を凝視している。「え、社長って実はロリコン……」「いや、女子高生でも大人っぽい雰囲気だからロリコンは……」「でも十歳離れているのよ?」「十歳くらい大人になれば……」一斉に室内がざわつきだし、実花は確かにうるさいかもしれないと思った。実際に光也の眉間には皺が寄っている。「電話……」「……え?」(でん、わ……?)「電話が鳴りっぱなしだ。誰か出ろ」リリリリリ。(あ、確かに電話……あれ?)数秒間鳴っている。でも誰も出ない。しばらくすると、電話は切れた。でも、また鳴る。そして誰も出ない。切れる。また鳴る。切れる。「……あの」実花は光也に声をかけたが、見上げた顔はこの現象を不可解と不愉快を足して半分で割ったような顔でみていたので、実花は説明を航に求めた。 「あの、誰も電話に出ないのですが?」航が苦笑した。「出たくないんですよ」「え?」「みんな電話が苦手なんです」あまりにも自然な答えだった。実花は思わず聞き返した。「苦手って、仕事も電話かも……」「その可能性はかなり低いです」そう言うと航はスーツの内ポケットからスマートフォンを出してみせた。「仕事の電話はこっちにかかってくるので」「なるほど……では、いま鳴っているのは?」航は箱を指さす。「手紙の、電話版です」「……なるほど」思わず実花は光也を見た。「東国さんはご存知なかったのですか?」「俺も電話は嫌いだからな。まず音がうるさい、そしてこちらの都合お構いなしだ」「……なるほど」(東国さんはうるさくないけれど、こちらの都合お構いなしというところは……)「キング・オブ・自己中が何を言っているんだか」航は呆れてみせたが、彼も電話に出ようとしないところを見ると嫌いなのだろ
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