ステージの下で、怒号とフラッシュが焚かれ、白金葵と佐藤翔太が警備員に連行されていく。 その光景を壇上から見下ろしながら、俺――黒岩悠斗は、深く息を吐き出した。 胸の奥を重く支配していた絶望が、すうっと消えていく。 同時に、数日前に藁にも縋る思いで彼らに接触したあの日のことを思い出していた。 正直に言えば、最初は恐怖すら感じていた。 ある日、会社の自分のデスクの引き出しを開けると、見覚えのない漆黒のカードが忍ばせてあったのだ。そこには、淡い青のラインと、必要最低限の言葉、そして秘密のチャットへと繋がるQRコードだけが記されていた。 誰がいつの間に忍ばせたのかも分からない、実体も知れない『返却請求代行会社』。 けれど、追い詰められていた俺は、そのカードに縋るようにメッセージを送った。すると数分後には丁寧な返信が返ってきた。 チャットでのやり取りの最中、驚いたのは『ご依頼人が男性の場合、誤解を避けるため、必要に応じて夫が同席することがある』という一文だった。代行業に夫婦で来るという発想が、俺にはなかった。 けれど、その気遣いが妙に安心できた。 指定された場所で、現れた二人を見た瞬間、俺は自分の考えが甘かったことを知った。 洗練された身のこなし、これまでの人生を乗り越えてきたのであろうと思うほどに理知的な瞳の女性、梨奈(りな)さん。 そして、柔らかな空気を纏いながらも、すべてを見透かすような静かな存在感を放つご主人の志遠(しおん)さん。 あの二人は、自分とは生きている世界が違うと、そう感じさせられた。 「……返却を始めましょう」 梨奈さんのその言葉を聞いたとき、震えが止まらなかった。 それは救いの言葉のようでもあり、同時に後戻りはできないのだと分かった。 白金葵の名前を出した瞬間、梨奈さんの目がわずかに鋭くなった気がした。何か関係しているのかと思ったが、プライベートに踏み込むのは違う気がして、俺は白金家の歪んだ実態を詳しく伝えた。 金と名誉のためなら、家族同士でも平気で踏みつけ合う白金家。 彼らとの婚約が決まった会食の日の出来事も、お二人にすべて話した。 店に入った瞬間から、白金家の人間は挨拶しても立ち上がらず、頭を下げても視線すら向けてこなかった。俺の父は横で何度も頭を下げ続け、俺にも目で合図を送ってきた。 地方の名家とはいえ、高
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