ホールの前方にあるステージの照明が一段と明るくなった。 桐島ホールディングスと浅倉商事の合同プロジェクトが動き出した。 「おっ、いよいよ始まるな。麗香、行こうか」 顔を真っ赤にしていた直樹だったが、ステージの進行を機にこれ幸いとばかりに背を向けた。麗香専務の腰を抱き寄せながら、勝ち誇った顔で最前列の席へと歩いていく。取り巻きたちも、主人の後に続く犬のようにぞろぞろと移動を始めた。 ハンカチで手のひらの血を静かに拭いながら、会場の壁際に身を寄せる。 インカムにそっと触れ、小さくノック音を二回響かせた。 『こちら璃子。舞台、整いました』 『……璃子。手を切ったな?』 低く、地を這うような仁さんの声。 『何かされたのか? 璃子の身体は、髪の毛一本に至るまでこの俺のものだ。……許せない。明衣ちゃん、予定を早めろ。これ以上璃子を傷つける奴らは、俺がこの手で一人残らず引き裂く』 初めて聞くほどの激しい怒りの声だった。 『了解です。仁さん。では、私、横田明衣が返却請求代行の名に懸けて、最高のショーを整えます』 ステージ上には、浅倉商事の社長夫妻、そして今回のプロジェクトの鍵を握る浅倉結衣ちゃんが、緊張した面持ちで席についていた。 浅倉結衣ちゃんは、自分が桐島ホールディングスに利用されようとしていることも、婚約者である田中が裏で何を企んでいるかも、すべて知った上で今はまだ大人しく騙されている無垢な令嬢を演じている。 そんな浅倉結衣ちゃんの姿を、ステージの下からいやらしい笑みを浮かべて見上げている男がいた。 ――田中だ。 ジャケットの胸元をいじりながら、田中は浅倉商事の資産を乗っ取った後のバラ色の未来でも妄想しているのか、鼻息を荒くしてニヤニヤと歪んだ全能感を隠そうともしていない。 だが、そんな田中の背後に、音もなく一人の美女が近づいていく。 背中が大胆に開いた、ミッドナイトブルーのシルクドレス。 会場のどの令嬢よりも圧倒的な気品とオーラを放つその女性、聖子さんが、田中のすぐ耳元で、甘く囁いた。 「田中先輩。お会いできて嬉しいわ……」 「あ、浅浅……っ、じゃなくて、真壁さん!?」 田中が弾かれたように振り返る。その顔は、一瞬でだらしなく崩れた。地味な新人の聖子さんが自分を追ってこの最高級のパーティーにまでやってきてくれたという事実に、完全
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