翌朝。 コンペ会場へ向かう直前、麗香専務から「専務室へ来なさい」と璃子の会社用携帯に連絡が入った。別に、あの二人や、こんな理不尽な会社のために徹夜をしたわけではない。自分私自身のプライドを守るための戦いだが、何とも腹立たしい。 眠そうになる目を必死に見開いて、何度も自分の頬を叩いてみたり、化粧室へ行き冷たい水で顔を洗ったり……。そうやって必死に睡魔と戦いながら、山城グループとのコンペに使用するマーケティングデータを仕上げたというのに、お礼の一言もなく呼び出しだなんて、本当にどこまでも身勝手な人たちなのだ。 こんなことを心の中でブツブツ思いながら、廊下を歩いているうちに、麗香専務のいる専務室の前へと到着した。 これほどまでに豪華な木目のドアを見せつけられたら、中にはさぞかし仕事のできる人がいるのだろうと、普通なら思う。だけど、実際は中身のない無能が、見た目だけの圧でこんな豪華な部屋を用意してもらえている、これこそが給料泥棒と言えるのだろう。 (世も末ね) 静かにノックをする。 「失礼いたします。如月です」 璃子が入ってくるのを、今か今かと待ち構えているのだと思っていた。 けれど、ゆっくりとドアを押し開けると、室内は異様なほど静まり返っている。その不自然な空気に、何かが起きる、と直感が告げた。 「璃子、本当に完璧にできたんだろうな? 失敗したら、大損だからな」 開口そうそうに、直樹さんは椅子から立ち上がることもなく、これ見よがしに足を組み替えて鼻で笑った。 「ご確認をよろしくお願いします。麗香専務」 直樹さんの言葉を完全に無視して麗香専務の傍へ歩み寄り、手にしているタブレットをデスクへ置いた。 データを見たところで、麗香専務にはどんな意味があり、どんな効果があるのか、全く理解できないだろう。ただただ、怒りのはけ口をこちらに向けて難癖をつけるだけだ。 「それで、家政婦さん。これをどう説明しろと? わたくしに、恥をかかせるおつもりですの?」 麗香専務の反応は、思っていた通り。タブレットの画面を睨みつけ、すぐに璃子を睨み返す。そんな行動くらい、とうに観察済みだ。 「コンペと言えば、解説も必要だというのに。璃子はそれさえも準備していないのか!」 直樹さんは、組んでいた足を組み替えて勝ち誇ったように身を乗り出した。 「では、こちらをお使い
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