悟はしばらく封筒を見つめていた。 白い封筒には、勤務していた会社の顧問弁護士の名前が印字されている。「……」 開きたくない。 だが、開かなければ何も始まらない。 震える指で封を切り、中の書類を取り出した。 一枚目には、懲戒解雇の通知。 二枚目には、会社が被った損害額の内訳。 三枚目には、損害賠償について協議したい旨が記されていた。「こんな……」 思わず声が漏れる。 そこに書かれた金額は、悟が簡単に支払える額ではなかった。 もちろん、一括で用意できるはずもない。「どうすればいいんだ……」 頭を抱える。 仕事は失った。 次の就職先も決まっていない。 この状況で、誰が自分を雇ってくれるのだろう。 そのとき、スマートフォンが鳴った。 知らない番号だった。「……もしもし」『藤倉様でしょうか』 落ち着いた男性の声が聞こえる。『先日ご連絡いたしました弁護士です』「はい……」『書類はご確認いただけましたでしょうか』「今、読んだところです」『ご不明な点がございましたら、ご説明いたします』 丁寧な口調だった。 しかし、その内容が変わることはない。『なお、返済方法につきましては、ご事情も伺いながら協議したいと考えております』 悟は少しだけ息を吐いた。「……分かりました」 電話を切ると、再び静かな部屋が戻ってくる。 もう逃げることはできない。 自分がしたことの責任を負わなければならない。 その現実だけが、重くのしかかっていた。
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