パーティーがお開きとなり、招待客たちが次々と帰路につく。「今日はありがとうございました」 佳苗も一人ひとりに頭を下げながら、会場を後にしようとしていた。「朝倉さん」 後ろから声を掛けられる。 振り返ると、西園寺が笑顔で立っていた。「今日はお疲れ様でした」「西園寺さんも、お疲れ様でした」「少しお話しできて嬉しかったです」「私もです」 西園寺は名刺を一枚差し出した。「もし何か困ったことがあれば、いつでもご連絡ください」「えっ?」 佳苗は驚いて目を丸くする。「私にですか?」「はい」 西園寺は柔らかく微笑んだ。「社長は仕事になると周りが見えなくなることがありますから」「そんなときは、朝倉さんにお伝えした方が早い気がして」 佳苗は思わず笑ってしまった。「分かりました」「よろしくお願いします」 二人は連絡先を交換し、笑顔で別れた。 ◇ 一方その頃。 ホテルのラウンジでは、一人の男性が電話を終えようとしていた。「ありがとう、助かった」 通話を切ると、小さく息をつく。「そうか……」 手元には、来月以降の取引予定企業の資料が置かれていた。 その中の一社に、男性の視線が止まる。「内部監査、か」 最近、その会社について気になる話を耳にしていた。 経理処理に不自然な点があり、社内で調査が始まるらしい。 まだ噂の段階で、事実かどうかは分からない。 しかし、取引を控えている以上、念のため情報は集めておく必要がある。「まあ、こちらには関係ない話ならそれでいいが……」 男性は資料を閉じる。 その時点では、ただの仕事の一つに過ぎなか
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