マンションへ戻ると、リビングには雄吾がいた。「おかえり」「ただいま帰りました」 佳苗が靴を脱いでいると、雄吾がこちらを見る。「絢子とは楽しかったか?」「はい」 佳苗は笑顔で頷いた。「いろいろなお話を聞かせてもらいました」「そうか」「雄吾さんの子供の頃のお話も」 雄吾がわずかに眉を上げる。「何を聞いた?」「小学生の頃、一条さんとテストの点数を競っていたとか」「……そんなことまで話したのか」「ふふ。負けず嫌いだったんですね」「絢子も同じだった」「そうなんですか?」「あいつも負けると次のテストまでずっと覚えていたからな」 雄吾が懐かしそうに話す。 佳苗は笑って聞いていた。 けれど。 また胸の奥に、あのもやが広がる。 雄吾と絢子だけが共有している思い出。 自分が知らない二人の時間。「他には?」「え?」「何か聞いたんだろう?」「……はい」 佳苗は一瞬迷った。 高校生の頃、二人でパーティーへ出席したこと。 雄吾の母親が絢子へドレスを贈ったこと。 周囲から二人がお似合いだと言われていたこと。 聞いてみたかった。 一条さんのことを、どう思っていたんですか。 お母様は、一条さんのことを気に入っているんですか。 どうして私は、まだお母様に紹介してもらえていないんですか。 いくつもの言葉が浮かぶ。 けれど、どれも口に出せなかった。「……昔、パーティーを抜け出そうとしたことがあるって」「ああ」 雄吾は苦笑した。「あれか」「本当にあったんです
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