透の左手が無意識に右腕の――あの赤黒く爛れた火傷の痕がある場所を、服の上から強く握りしめた。「炎の中で、声が聞こえた。理沙の声だった。彼女は僕を探して、あの通路に入ってきて……そして」 透の呼吸が浅く、不規則になる。「僕は、手を伸ばせなかった。自分が燃えるのが怖くて、彼女を助けに行けなかった。……結果として、僕は使用人に助け出されて生き残り、理沙は……」 理沙は、死んだ。 いや、違う。 私の脳内で、佐伯のメールの文面が激しく明滅する。『一人目の花嫁。透の従姉にあたる女。公式には階段からの転落死。血中から規格外の睡眠導入剤』。 透の記憶の中の「理沙」と、一人目の花嫁である「理沙」。 時系列がおかしい。火災は十数年前。だが、花嫁の転落死はわずか二年前だ。 透は火災で理沙を死なせたと思い込んでいるのか? それとも、別の誰か――例えば、もう一人の親族か何かと混同しているのか? いや、美津子が彼に「理沙は火事で死んだ」「理沙は階段から落ちた」事実を、都合よく切り貼りして彼の罪悪感として植え付けたのではないか。 どちらにせよ、彼は自分の「恐怖による見殺し」という原罪を、すべてこの腕の傷とともに背負い込んでいる。「だから、言っただろう」 透の瞳が、痛みに耐えかねたように私を捉えた。「逃げ込んで息を潜めていた僕の弱さが、人を殺したんだ。……僕に関わる人間は、皆、この白灰蘭のように、灰の中から咲くことを強いられる。最後には狂って、消えていく」 その言葉は、私に向けられたものではない。 何十年もかけて、彼が自分自身を呪うために唱え続けてきた、絶望の呪文だった。「……透さん」 私は彼の言葉を否定するのではなく、ただ一歩だけ彼の方へ歩み寄った。 むせ返るような黒土の匂いの中で、彼のシトラスの香りがはっきりとわかる距離。「息ができない場所で、ただじっと息を潜めて、やり過ごすことしかできな
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