「一日一個のチョコは、今日はまだ食べていませんので……副団長殿に、特別に一個あげます」 はい、とミラは小さな指先で一粒のチョコレートをヴィクトルの目の前に差し出した。 ――元は、ヴィクトルがミラに贈ったチョコレートである。それを、ヴィクトルを慰めるためのオヤツとして還元するとは、一体なんの因果だというのか。 しかし、である。 重症の恋煩いにかかったヴィクトルにとって、そんな矛盾はどうでもよかった。 ミラが、自分のために大事なチョコを差し出してくれたのだ。「ミラ……」 ヴィクトルはガタッと姿勢を正し、ミラを見つめた。 ミラの小さな手が、確かにチョコを差し出している。しかも、いつの間にか個装の包み紙が丁寧に剥がされており、彼女の白い指先が、艶やかなチョコレートの球体を直接掴んでいた。 ヴィクトルはそれを、穴が空くほどじっと見つめる。(これ……このまま、俺が口を開けて食べていいのか……?) いやしかし、それを今の構図のまま実行してしまうと、ミラの指先まで自分の口の中に入れてしまうことになるのではないか。 世間的には女性との経験だってそれなりにあるはずのヴィクトルだった。だが、今の彼はまるで恋を知ったばかりの少年のように、凄まじい勢いで脳内会議を繰り広げていた。 まだ付き合ってもいない――ましてや友達認定すらされていないのに、そんな破廉恥な真似をしていいのだろうか。 彼がぐるぐると真剣に悩んでいた、その時だった。「はい」 悩む時間が焦れったかったのか、ミラの手が容赦なく突き出され、躊躇なくヴィクトルの唇へとチョコが押し込まれた。「!?!?!?」 不意打ちの甘みが広がるのと同時に、ミラの指先が、ヴィクトルの前歯にほんの少しだけ触れた。 その微かな感触に、ヴィクトルの顔面は瞬時に真っ赤に染まる。 しかし、当のミラはそんな男のパニックなど一切気にした様子は見せなかった。自分の指先に、ほんの少しだけ溶けて付着してしまったチョコレートを見つめると――ぺろり。 なんの気負いもなく、ごく自然に、己の舌先でそれを綺麗に舐めとった。(いいのか!??!?!? 今、舐めた!?!?!?!?) ヴィクトルの脳内で、本日何度目か分からない大爆発が起きた。 彼はウブな童貞ではない。 それなのに
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