※ ※ ※ 魔術塔から研究室に続く石畳の小径を、ミラはレオンと並んで歩いていた。 朝は急いで研究室へ赴き、すぐにでも取り掛かりたいミラにしてはゆっくりとした歩調だった。「最近、エルンスト副団長殿が顔を見せませんね。体調でも崩したのでしょうか」 首を傾げたミラにレオンは呆れ顔を浮かべた。「ミラさんが振ったからでは?」「私は正直に言ったまでなのですが。そんなにショックを受けることでしょうか?」 不思議そうな表情を浮かべるミラを見て、レオンは眉間の皺を深く刻んだ。他人の機微にここまで疎いとは……どうすれば理解してくれるのだろう、とレオンは思案した。 実はあの場にレオンもいた。と言っても、距離はあったが――ミラとヴィクトルの会話を聞き取れる範囲内にはいた。 まさかあの場で、ヴィクトルがミラに告白するとは思っていなかった。それ以前に、二人はレオンから見てもいい雰囲気のように見えたのだが……。(あそこまで派手に振られたら、普通は立ち直れないよな) 風が吹けばどこかに飛んでしまいそうなほど、打ちひしがれたヴィクトルをレオンは何とも言えない感情で見つめた。少し目を離した隙に彼の姿は消えていたが、無事に帰れただろうか。 「あそこで嘘を吐いたら、それこそ不誠実では?」 普段抜けているくせに、正論を言うミラ。 「確かに、その通りですけど……」 レオンはそう呟いて、大きな溜息を吐いた。 「嘘を吐けとは言っていません。ただ、物事には言い方というものがあるでしょう。……それに、ミラさんにとって副団長殿は、それほどまでに『好きじゃない』相手なのですか?」 レオンの問いかけに、ミラは足を止め、丸眼鏡の奥の黒い瞳を瞬かせた。「お友達、ですから。それに、高額な治癒魔術を受けられない市民のためにポーションを広めたいという私の話を、あの人は誰よりも真剣に聞いて、協力すると言ってくれまし
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