「柊馬くん、どこへ行く気なの?」莉奈は慌てて柊馬の前に立ちはだかり、必死に懇願するような目を向けた。「E国だ!」柊馬は一瞬たりとも迷わなかった。その答えは鋭い刃となって、莉奈が抱いていたわずかな望みまで断ち切る。「正気なの?ニュースで見たでしょ。X-Xウイルスは感染力が強くて、死ぬかもしれないのよ!死にに行くようなものでしょ!」「柚希が、たった一人であそこにいるんだ!今、どれだけ怖い思いをしてるか……だから俺は行かなきゃならないんだよ!」「じゃあ、私はどうなるの?」莉奈の涙は止まらなかった。「あと5日で結婚式なんだよ。あなたがいなくなったら、私は一人でどうすればいいの?街中の人に笑い者にされて、柊馬……せっかく……ようやくあなたのおかげで前に踏み出そうとしたのに、いなくなっちゃったら……私はどうやって生きていけばいいの?」周囲の友人たちも口添えした。「柊馬さん、以前の奥様を心配されるお気持ちは分かりますが、もう過去の人です。今の奥さんは莉奈なんですよ!目の前の人を大切にした方がいいんじゃないですか?例の葬儀場の一件で、莉奈はもうボロボロなんです。もうこれ以上、彼女を傷つけないでください。それに、医者でもないあなたが現地へ行ったところで何ができるんですか?こっちから資金援助したり、物資を送ったりするほうがずっと現実的じゃないですか?」「……もう、いいの」莉奈はゆっくりと彼の腕を放した。その表情には、すべてを諦めたような絶望だけが浮かんでいる。「これが……私の運命なのかもしれない。柊馬くん、もしE国で万が一のことがあったら……」彼女は虚ろな瞳で柊馬を見つめた。「私は、あなたを追って死ぬから……向こうで、あなたのお兄さんにも責められるでしょうね。『お前のせいでみんな死んだ』『夫を不幸にする女だ』って……」その言葉に、柊馬の体がびくりと震えた。見えない大槌で胸を殴られたようだった。その場に立ち尽くし、理性と感情が激しくぶつかり合う。長い沈黙ののち、全身の力が抜け落ちたように、かすれた声を漏らした。「……やめるよ」莉奈は胸までせり上がっていた息をようやく吐き出した。急いで駆け寄り、柊馬の手を握りしめて言う。「柊馬くん、意地悪で言ってるんじゃないの……本当にあなたが心配で。柚希ちゃんは運の強い人だから大丈夫
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