柊馬は防護服を身につけ、莉奈を連れて封鎖区域を出た。車は猛スピードで道路を駆け抜けていく。莉奈は安全のためだと言って、柊馬と距離を取り、車のドアにもたれかかった。弱々しい声で呟く。「出られたね……柊馬くん、私はいいから、柚希ちゃんを捜しに行って……彼女が無事だって自分の目で確かめないと、あなたは安心できないでしょ?」柊馬の胸には、複雑な感情が渦巻いていた。彼はきっぱりとした口調で言った。「お前が俺のためにここまでしてくれたんだ。見捨てられるわけがないだろ?今は病気の治療が最優先だから、まずは病院へ行こう。莉奈、俺たちの子供のためにも、お前を失うわけにはいかないんだ」柊馬は国内から専門の医療チームも一緒に連れてきていたのだが、運悪く、彼らも集団感染してしまっていた。そのため、莉奈を病院へ連れていくしかなかった。しかし病院は既に溢れかえっており、大金を積んだところで空き病室が出るはずもない。「すぐに国内から代わりの医療チームを編成して回せ!」柊馬は焦りの中で部下に命じた。莉奈は今にも倒れそうだった。「柊馬くん……もう限界かも。彼らが来るまで持たないかもしれない……」すると、運転手が口を開いた。「社長、病院関係者しか使えないようですが、この病院には特別病室があるらしいです」「関係者?」柊馬は冷徹な眼差しで言い放った。「なら、この病院ごと買い取ればいい」……特別病室の中、菫による懸命な処置と点滴のおかげで、柚希の体温はようやく下がり始めていた。柚希が意識を取り戻すと、まるで身体がばらばらになったかのような痛みを感じた。「お水飲めますか?」ベッドのそばで見守っていた弘が、すぐに立ち上がった。目は真っ赤に充血し、疲れ切った顔をしている。それでも水を注いで、柚希に差し出した。そんな姿を見て、柚希は胸が痛んだ。入院中、途切れ途切れの意識の中でいつも見えたのは、献身的に世話をしてくれる彼の姿だった。柚希はかすれた声で呟く。「あなただってウイルスに感染しているんでしょ?いつ発症するか分からない。このウイルスは体力が勝負なんだから、私の世話ばかりしてないで、ちゃんと休んで。体力を残しておかないと、発症したときに持たないから」弘はわざと軽口を叩いた。「平気ですよ。体力には自信がありますから。みんな次
Read more