《フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する》全部章節:第 41 章 - 第 50 章

79 章節

第041話 ダイヤ宝箱とドラゴン①

 僕はトラックの周囲を何度も回り、荷台に積まれたガラクタの山を見上げる。  トラックの荷台に積まれたガラクタは、どれも本当に役に立たないジャンク品ばかりで、他の人が見たらゴミの山としか思えないだろう。しかし「改装」のスキルで様々な物資から異世界での冒険に役立つ「装置」を作製できる僕にとっては、これらはいずれも貴重な資源だった。  だが、そうした価値のある資材の山を前にしても、僕はドラゴンに対して、ドラゴンが守るダイヤ宝箱を僕が奪い取る一瞬の隙を作る方法は見出せなかった。「やっぱり今は無理かな……。なにせ相手はドラゴンだ。ダイヤ宝箱は欲しいけど、諦めた方がよさそうだね……」 僕は肩を落とすが、最初の《天使》の《審判》で異世界に転移させられ、命懸けのサバイバルを生き抜いて、現世に生還した父と母からこう言われていた。「異世界では決して無理をするな」 「異世界では自分の命を最優先にするんだ」 「異世界では状況を見誤るな」 「異世界では身の丈で生きるんだ」 「異世界では決して欲に負けるな」「父さんと母さんの言う通りだ。ダイヤ宝箱は諦めよう」 そう自分に言い聞かせ、トラックの運転席に戻ろうとした僕は、トラックの荷台に積まれた一際大きな物資───スポーツカーが目に留まる。「……そうか。このスポーツカーを使えば……」 僕は妙案を閃き、顔を輝かせた。  ※ ※ ※「せっかくのスポーツカーだし、もったいない気はするけど……」 僕はピカピカの高級車を眺める。  このスポーツカーは誰もが知る高級車で、街でこの車が公道を走っていたら、誰もが振り返る「憧れのステータス」だった。「でも、異世界では役に立たないし、宝の持ち腐れになるくらいなら……」 僕は意を決して、スポーツカーに黄銅宝箱から獲得したエネルギーの少ない魔力石をセットする。 そしてギアを操作し、ドライブモードにセットすると、鉄パイプと重りで作った装置でアクセルを全開にする。  そしてハンドルを操作して、車の車首をドラゴンに向けると───。「上手くいってくれよ……ッ!」 僕はブレーキにセットしていた重しを一気に取り払った。  するとスポーツカーは轟音とも言うべきエンジンの唸りと共に駆け出し、解き放たれた暴れ馬の如くドラゴンに向かって突き進んだ。 ドラゴンの
last update最後更新 : 2026-08-29
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第042話 ダイヤ宝箱とドラゴン②

「いいぞッ! そのまま行けーッ!」 僕は拳を振り上げてスポーツカーを応援する。  ドラゴンの尻尾の一撃を掻い潜ったスポーツカーは、そのまま狙い通り、ドラゴンの胴体に激突する。 ───かと思われたが、その瞬間、ドラゴンはその巨躯からは想像もできない俊敏さで立ち上がり、スポーツカーが自分の胴体に衝突する事故を回避した。「しまったッ! 避けられたッ!?」 僕は作戦が失敗してしまったかと危ぶみ、固唾を呑む。 しかし、幸いな事に、僕の作戦は失敗に終わらなかった。  立ち上がったドラゴンは胴体にスポーツカーが衝突する事故は回避したが、その結果、スポーツカーが自分の巨躯の下を走り過ぎる際、後ろ足を踏まれてしまったのだ。「グオォォンッ!」 決して痛かったわけではないだろう。  ドラゴンが全身に纏う鱗はその一枚一枚がぶ厚い鉄板のように重厚で、例え大型のダンプカーが猛スピードで衝突しても、傷一つ負いそうになかったが、自分の足の上をスポーツカーが通過するという不快感にドラゴンは怒り、咆哮をあげたのだ。 ドラゴンはまたも尻尾をスポーツカーに打ち付ける。  しかし、悪路でバウンドしたスポーツカーは奇跡的にドラゴンの一撃を掻い潜った。  そしてその事がドラゴンの癇に障ったのだろう。  ドラゴンは追いかける必要もないのに、スポーツカーに狙いを定め、翼を広げた。「凄い……! ドラゴンが飛び立つぞ……!」 まるで空を覆う帳のような翼。  その大きな翼で地面を叩きつけるように羽ばたいたドラゴンは、フワリとその巨躯が空中に浮きあがる。  そして打ち上がるように上昇すると、ゆっくりと大空を旋回した。  翼を広げたドラゴンの影が、地を這うモンスターのように周囲を駆けまわる。  その姿は雄々しかったが、ドラゴンの影に包まれると、まるで暗闇に迷い込み、今にも頭上に巨大な岩が降り注ぐような恐怖を覚えた。「ドラゴンの威圧感はゲームや漫画、アニメ、それに小説で見たり読んだりするのとは全然違うね。まさに王者。ファンタジー世界の王者だよ」 僕は全身を感動と恐怖で震わせながらも急いでダイヤ宝箱に駆け寄る。「なんて綺麗な宝箱なんだ……」 僕はその美しさに目を奪われた。「何が入っているのか本当に楽しみだ」 僕は感動に打ち震えながらも、期待に胸を膨らませ、急いでダイヤ宝箱を抱
last update最後更新 : 2026-08-30
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第043話 ダイヤ宝箱とドラゴン③

「な、なんとかしないと……ッ!」 僕は自分を追いかけるドラゴンから逃れ、なんとか助かる手段を探して必死に考えを巡らせる。  しかし、今の僕に妙案は浮かばなかった。  今は、ただただトラックを走らせることしかできなかった。 そしてついに、ドラゴンの口が大きく開かれる。 大きく開かれたドラゴンの口は、まるで巨大な洞窟のようだった。  先の見えない暗闇が奥まで続き、唸り声が聞こえてきそうだった。そしてその余りの禍々しさは、一歩退くではなく、逆に吸い込むように僕を引き寄せる引力が伴っていた。 僕は全身に鳥肌が立ち、ますます恐怖で身体を強張らせる。 そしてドラゴンの喉の奥に明かりが灯った。「《ドラゴンの息吹き》だ……ッ! 炎の一撃が来る……ッ!」 僕はハンドルをギュッと握る。 そしてそれは一瞬だった。 ドラゴンの喉の奥から溢れ出るかのように明かりが広がると、周囲を焼き尽くすかと思える程、巨大な炎柱が吹き出された。「うわーッ!」 僕は慌ててハンドルを切り、「《ドラゴンの息吹き》」を回避する。「あんな炎をまともに浴びたら、骨まで残さず焼き尽くされてしまう……ッ!」 僕は「《ドラゴンの息吹き》」の高温と轟音に恐怖する。「な、なんとかしないと……ッ!」 僕は必死に逃げ延びる方法を考えた。  ドラゴンは尚も僕を追いかけ、そして二回目の「《ドラゴンの息吹き》」を僕に浴びせようと、また口を開いた。「駄目だッ! 避けられないッ!」 僕は死を覚悟する。  今の僕に「《ドラゴンの息吹き》」を避け、ドラゴンを振り切る術はなかった。  ドラゴンの喉の奥が、また明るくなる。  炎の息が準備され、輝きだしたようだ。  成す術のない僕はその光を見つめるしかできなかった。「やっぱりダイヤ宝箱に……、ドラゴンに手を出すべきじゃなかったかッ!」 僕は、その瞬間を覚悟した。 そして「《ドラゴンの息吹き》」が吹き出される。  ───まさに、その瞬間だった。 僕とドラゴンの間を、何かが猛スピードで駆け抜けた。  その速度と、けたたましい爆音に僕はもちろん、ドラゴンも面食らった。 先ほど、僕が放ったスポーツカーだった。  草原という悪路を走行した衝撃で、僕がセットしたハンドルの固定
last update最後更新 : 2026-08-31
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第044話 ダイヤ宝箱の開封

 ドラゴンがスポーツカーを「《ドラゴンの息吹き》」で焼き尽くしている隙に、僕は猛スピードでトラックを走らせ、森の中に逃げ込む。  スポーツカーの次に、僕を狙っていたドラゴンだったが、ドラゴンは森に隠れた僕を見つけることができず、しばらく周囲を旋回していたが、ついに諦め、大空に帰っていった。 息を殺してその様子を窺っていた僕は、ドラゴンが諦め、遠ざかってくれたことに心から安堵し、全身の力が抜けて運転席のシートに沈み込んだ。「あ、危なかった……。本当に殺されてしまうところだった……」 僕はもう二度と、絶対にドラゴンに手出しはしないようにしようと誓う。 僕の心臓は、まだ恐怖で早鐘を打ち、全身は冷や汗でびっしょりだったが、それでも僕は、そうした苦労を経て獲得したダイヤ宝箱に関心が移る。「凄いぞ……。本当にダイヤ宝箱だ。ついに僕はダイヤ宝箱を獲得したぞ……」 恐らく、今回、僕と一緒に《天使》の《審判》で異世界に転移させられた戦友の中で、ダイヤ宝箱を獲得した者はいないはずだ。  「同級審判全体チャンネル(=ワールドチャット:今回の「《審判》」に挑む戦友たちの「呟き」が次々と表示され、ログとして流れる)」にも、そんなメッセージは影も形も見当たらないからだ。「誰よりも早く……僕が一番にダイヤ宝箱を獲得した……」 その偉業に僕は喜びが沸き立つ。「どうだ。戦闘に役立つスキルがなくても、知恵を働かせ、工夫すれば、僕の「改装」のスキルは異世界で生き延び、ドラゴンからダイヤ宝箱を奪うことだってできるんだ」 僕は相手を見返してやったという達成感に歓喜する。  それは自分に対して自信が持てた瞬間だった。 前世、そして別の次元世界で蔑まれ、ゴミのように捨てられ、命を落とした僕は、自分の価値を信じられずにいたが、ついに僕は自信を取り戻したのだ。 僕はしばらくその感動に浸り、心を落ち着かせ、早鐘を打つ心臓を静まらせた。 そして汗を拭いて心身を整えると、ついにダイヤ宝箱を開けようと、煌びやかな戦果に向き直る。「さて、何が入っているのか……」 僕は期待に胸を膨らませ、宝箱を開ける。「──────ッ!? こ、これは……ッ!?」 僕は宝箱の中身を見て思わず声をあげた。  このダイヤ宝箱は、あれ程、強大なドラゴン
last update最後更新 : 2026-09-01
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第045話 ダイヤ宝箱の価値

「わかったぞ。実はこのダイヤ宝箱はある妖精が魔法で姿を変えられていて、今にも僕だけに見える小さな女の子の妖精が僕に語り掛けるんだ。そしてその妖精は異世界の事をよく知る事情通で、いわゆる「ナビ役キャラ」なんだ」 僕は妖精のようなナビ役キャラが現れ「ダイヤ宝箱を開けてくれてありがとう。おかげで私の封印が解かれ、外に出る事ができたわ。お礼に、これから私が、あなたが《至宝》を見つけられるように異世界を道案内してあげるわ」と言ってくれる事を待ち望んだが、ついにそうした妖精は現れなかった。「なんで……。どうして……。どうしてダイヤ宝箱の中身が空っぽなんだ?」 僕はひどく落胆する。  貴重なスポーツカーを犠牲にし、あわやドラゴンに焼き殺されるかという危険を冒したのに、その苦労に見合う、なんの対価も得られない事にショックを受けたのだ。 ダイヤ宝箱がその輝きを失う。  異世界の宝箱は、中身を獲得すると姿が変わり、これまでに獲得した黒鉄宝箱も黄銅宝箱も、中身がなくなると質素な木箱に変化していた。  それと同様に、今回、獲得したダイヤ宝箱も姿を変化させ、質素な木箱になってしまった。「何も中身を獲得していないのに、木箱になってしまうなんて……」 僕は乱暴に木箱になってしまったダイヤ宝箱を放り投げる。 するとその時だった───。『おめでとうございます! ダイヤ宝箱を獲得した事で、あなたは新たなスキルを獲得しました!』 突然、僕のステータスウィンドウが開き、華々しいファンファーレと共に、僕にメッセージを表示する。「うわっ! な、なんだこれっ!? え? 新しいスキル? 何? どういう事?」 僕は戸惑いつつ、ステータスウィンドウを確認する。『スキル「改装」の「上級スキル」が解放されました! 条件を満たす事で、あなたは「改装士」の上級職に「転職」することができます! 未知の職業の前提条件:1/???』「な、なんだこれ? 上級スキル? 転職? 未知の職業の前提条件?」 僕は何度も何度もステータスウィンドウのメッセージを読み返すが、それ以上の詳しい説明はなかった。「随分と不親切な説明だな。わからない事だらけだよ。これがゲームなら、運営会社に文句のメールを送りつけるところだよ」 僕は悪態をつきながらも、新たなスキ
last update最後更新 : 2026-09-02
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第046話 ゴールを目指して

 僕は今回の目的地であるゴールを目指してトラックを走らせる。  途中、黄色のスライムを見つけては、スライムを捕獲する罠を駆使して黄色のスライム水を獲得し、そのスライム水を使って食虫植物のモンスターを倒すと、今度は食虫植物のモンスターの花粉の粉を使ってゴブリンを眠らせ、ゴブリンの守る宝箱を奪いつつ、着実にゴールへの距離を縮めていた。「角ウサギを倒して「ウサギ肉」と「毛皮」を獲得し、角ウサギの角や骨を餌にスライムをおびき寄せ、罠で仕留めてスライム水を獲得し、スライム水で食虫植物のモンスターを倒して宝箱と、食虫植物の果実、それに花粉の粉を獲得して、食虫植物のモンスターの花粉の粉でゴブリンを眠らせて宝箱を奪う。このサイクルが上手く回ることで、食料も水も、武器や防具、アイテム、それに魔力石も、ゴールまで不自由することがないくらい集まったぞ」 僕はそれらのアイテムが整然と並べられたトラックの荷台を眺めてご満悦だった。「こんなに上手く異世界で食料や水、アイテムを獲得し、冒険を順調に進めている戦友は僕だけかもしれないぞ」 僕は少し自信を持って、さらにゴールを目指した。「ゴール地点は、あの丘の上か……」 僕は小高い丘を眺める。  広々とした草原は見晴らしが良く、その丘は、大海の孤島のように思えた。「何台かの車が集まっているね。何人かの戦友は無事、ゴールに辿り着いたみたいだ」 僕は仲間がいてくれることに安心感が湧き、嬉しさも込み上げるが───。「でも随分と少ないぞ……。スタート地点にはもっとたくさんの戦友がいた。皆、どうしてしまったんだろう……」 今回の《天使》の《審判》では、全世界の十六歳の若者が全員、異世界に転移させられたが、その若者たちは一ヵ所に集められたわけではなかった。  今回、僕たちが転移させられたようなスタート地点が、異世界のあちこちに存在していた。  さらにゴールも、そのスタート地点と同じ数が設定され、戦友たちはそれぞれの場所でゴールを目指していた。「だから全世
last update最後更新 : 2026-09-02
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第047話 ゴールに到達

「ほう。お前がゴールに辿り着くとはな」 ゴール地点の丘に辿り着いた僕を出迎えたのは、軍毅だった。  軍毅は素直に驚きの気持ちをあらわしていたが、それ以上に僕を毛嫌いするような嫌悪の眼差しで僕を見下ろした。「軍毅も悪い奴じゃない。でも、自分の四人チームに僕を誘った際、僕が申し出を断ったことにプライドを傷つけられ、目の敵にしているだけなんだ。事実、軍毅は自分の四人チームをリーダーとして見事にまとめ、誰一人として欠員を出すことなく、他の戦友に先駆けて順調にゴールまで辿り着いた。味方であれば頼れる男なんだ」 僕は軍毅に敵対的な目を向けられることは愉快ではなかったが、それを抜きにして冷静に、かつ客観的に軍毅を評価する。「傑くん……」 次に僕を出迎えてくれたのは詩華だった。  詩華は、僕が無事にゴールまで辿り着いたことを心から良かったと思ってくれているようだった。  詩華との約束を破り、異世界でも必ず詩華と一緒にいると誓ったのに、その宣言を翻して単独挑戦モードを選んだ僕に腹を立てるでも、非難するでもなく心配してくれる詩華。「本当に優しい人だ。詩華がアイドルとして人気になるのも頷ける。詩華は心の底から優しい人なんだ。その真心を誰もが感じ取り、詩華を信頼する。そして詩華を応援するんだ。詩華の持った類まれない魅力と、周囲のそうした後押し。詩華はこれからも、もっともっと人気のアイドルになること間違いなしだ」 僕は異世界に来てからの自分の行動を反省した。  僕は今の世界で、異世界でも詩華と一緒にいると約束をしたのに、その誓いを破った。  前世での記憶、さらには宇宙に数多く存在する別世界(=並行宇宙世界)の僕の記憶が混ざり合い、人を信じられなくなった僕は単独挑戦モードを選んでしまった。  しかし、そうした記憶にある僕が受けた裏切り、蔑み、仕打ちは、前世や別世界の僕であっても、今の僕の身の上に起ったことではない。「そのことを混同して、なんの罪もない詩華を疑い、裏切るなんて……」 僕は穴があったら入りたくなるほどの恥ずかしさを覚える。  そして今すぐにでも詩華に謝り、事情を説明して許してもらおうと思ったが、まさにその時───。「しかし、これだけか? 本当にこれだけしか戦友は残っていないのか?」 もう間もなく《|天使《セラ
last update最後更新 : 2026-09-03
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第048話 失敗①

 急に僕たちは暗闇に包まれる。  そう思えるほど、大きな何かが陽の光を遮り、僕たちに影を落としたのだ。 僕は背筋に冷水を浴びせられたかのように全身に鳥肌が立つ。  なぜなら、僕はこの影に見覚えがあったからだ。「ま、まさか……」 僕が空を仰いだ、その瞬間だった。「うわーッ!」 地面に突き刺さるかと思える程の勢いで急降下してきたドラゴンが、戦友の一人を鷲掴みにする。  さらに周囲にいた他の戦友は、その衝撃で十メートルは吹き飛ばされた。  幸い、大きな怪我は負わなかったが、ドラゴンの急襲は、それほどの衝撃を伴っていた。「ド、ドラゴンだとッ!?」 軍毅が慌てて武器を構える。「傑くん、大丈夫ッ!?」 詩華は吹き飛ばされた僕を心配して駆け寄ってくれる。「ドラゴンというとんでもない脅威が現れたっていうのに、他人の心配をするなんて、詩華は本当にすごいな」 そのことに感心しつつ、僕は差し伸べられた詩華の手をお礼をいって掴み、立ち上がったが、しかし、状況は最悪の事態だった。「ドラゴンだ……。しかも僕がダイヤ宝箱を奪った際に遭遇したドラゴンとは、また違ったドラゴンだが、そのドラゴンより遥かに大きい。このドラゴンこそ、このゴール地点を守るボスモンスターなんだ」 ゴール地点を守るドラゴンに比べたら、ダイヤ宝箱を守っていたドラゴンなんて、大人と子供ほどの差があった。  そんなダイヤ宝箱のドラゴンでさえ、成す術もなく殺されかけたのに、そのドラゴンより遥かに巨大なゴール地点のドラゴンに、僕たちはどうやって立ち向かえばいいのか……。「最悪だ……」 僕は死さえも覚悟し、絶望しそうになった。  全身の力が抜け、せっかく詩華に手を引いて立ち上がらせてもらったのに、膝をついてその場に崩れ落ちそうになった。「丘の上には身を隠す場所が全くない。ドラゴンの気を引くスポーツカーもない。逃げたところですぐに追いつかれるだろうし、いったい、今の僕たちに何ができるっていうんだ……?」 僕は頭の中が真っ白になって思考が停止しそうになる。  それは僕だけじゃない。この場にいる他の戦友も同じだった。  軍毅もかろうじて武器を構えているが、強大なドラゴンを相手に手出しのしようがなく、ただ武器を構えるしかできなかった。  他の戦友たちは怖気づ
last update最後更新 : 2026-09-04
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第049話 失敗②

「この魔法陣ならドラゴンを倒せるのかよッ!?」 軍毅が叫ぶ。「わからないッ! でも《天使》だって、わざわざ私たちをドラゴンに殺させるためだけに、ゴール地点に来させたりしないッ! きっとこの魔法陣には意味があるはずよッ!」 詩華も確信があったわけではなかった。  しかし、詩華の言うことはその通りだった。  この魔法陣には何かある。  僕は詩華の指示に従い、大急ぎで魔法陣の上に立つ。「こ、これは……」 僕が魔法陣の上に立つと、魔法陣が輝きだした。  他の戦友が乗った魔法陣も同様だった。  そして魔法陣から魔法陣に光の筋が走り、それぞれの魔法陣を結ぶ、大きな魔法陣へと広がり始めた。「見てッ! ドラゴンがッ!」 詩華がドラゴンを指さす。  魔法陣が広がると、光の筋がドラゴンを捉え、締め上げたのだ。「グォオオォォォンッ!」 ドラゴンが苦痛に満ちた咆哮を上げる。「効いているッ! やはりこの魔法陣は《天使》が私たちに与えたチャンス───ドラゴンを捕縛する罠なのよッ!」 詩華は嬉しそうに声を上げる。  自分の予想が当たっていたことが喜ばしいようだった。「あなた達も急いでッ! 早く魔法陣の上に立つのよッ!」 詩華は残った戦友を急がせる。  そしてこの場にいる全員が魔法陣の上に乗った。  魔法陣はさらに広がり、ますますドラゴンを締め上げた。「グォオオォォォンッ!」 ドラゴンがさらに咆哮を上げる。  そしてついに膝を突き、翼を縛られ、地面に磔にされる。「いいぞッ! このままドラゴンを絞め殺してしまえッ!」 軍毅が魔法陣の効果に期待し、歓喜の声を上げる。  その間にも魔法陣は、ますますドラゴンに絡み付き、その動きを制限したが───。「あッ!」 「なにッ!?」 「うわァッ!」 ついにドラゴンは魔法陣に屈し
last update最後更新 : 2026-09-04
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第050話 最悪の結末①

 現実世界の朝の七時。  今朝もいつもと変わらず、朝のニュース番組が始まった。『皆さん、おはようございます。今朝もニュースをお届けします。  まずは巨人───「《天使》」の今の様子です。「《天使》」は、今日は何処にいるのでしょうか? 中継が繋がっています。呼んでみましょう。梶原さーん』『はーい。「《天使》」の専任リポーター・梶原です。今、私が何処にいるのかというと、昨日と同じく、イタリアはトスカーナ地方にある「斜塔」で有名なピサにおります。《天使》は有名な観光地、ピサが気に入ったのでしょうか? 昨日と変わらずピサに留まり続けています。周りをご覧ください。大勢の観光客がピサの斜塔と《天使》のツーショット写真を取ろうと集まっています。その賑わいは時間を追うごとに増し、昨日から今朝にかけて八万人が訪れたとの発表がありました。こちらはまるでお祭りのような賑わいを見せています』『それはすごいですね。確かにリポート映像でも大勢の人が見えます。皆さん、楽しそうで本当にお祭りのようですね。わかりました。梶原さん、ありがとうございます。引き続き、気をつけて《天使》のリポートをお願いします』『それでは次のニュースです───』 ニュース番組は早々に《天使》の今の様子を切り上げ、次のニュースに移る。  人々が変わらぬ日常を過ごしていたある日。  突如として「《天使》」を名乗る二柱の巨人が宇宙から現れ、地上に舞い降りた。  それからしばらくは連日、大騒ぎで、世界中が「《天使》」の話題で持ちきりだったが、その喧騒も数年が経過すると落ち着きを見せ始め、今では《天使》がいることが当たり前の日常になっていた。「傑は無事、異世界で《天使》の《審判》に挑戦し続けているだろうか……」 リビングでニュース番組を眺めながら傑の父が呟く。「当然だ。傑が《天使》の《審判》に屈するなどありえない。今頃は最初のゴール地点に到達し、第二のゴール地点を目指しているはずだ」 傑の母は、傑の父が淹れてくれた煎茶をすする。  その言葉は、強がりでもなんで
last update最後更新 : 2026-09-05
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