イタリア・トスカーナ州、ピサ。 有名な斜塔の背後に二柱の巨人───《天使》は佇立していた。 《天使》は静かに目を閉じ、微動だにしていない。「梶原さん、お疲れ様です。今日の残りの予定は、夜のニュース報道での生中継だけです。時間がありますので今のうちに休憩しましょう。我々もせっかく観光地として有名なピサにいるんです。少しは羽を伸ばしましょうよ」 アシスタントディレクターにそう促されるが、梶原はじっと《天使》を見つめ続ける。「私は結構です。ここにいます。いつ《天使》が動き出すかわかりませんからね。皆さんだけで行ってきてください。何かあればすぐ連絡します」「でも……」「誰かは《天使》の「見張り」として残らないといけないでしょ? それなら私が適任です。私が「見張り」の任務に最も適しています。それが何故だかわかりますよね?」 梶原は有無を言わせない目つきでアシスタントディレクターを睨みつける。 その眼光に気圧されたアシスタントディレクターは及び腰になった。 その上で、確かにここに残って《天使》に何か動きがないか見張っている役は必要なので、梶原の言葉に甘えることにした。「わ、わかりました、梶原さん。それじゃあ見張りを……いや、留守番をお願いします。何かあれば我々もすぐに戻りますので、ご連絡ください」「わかったわ。何かあればすぐに連絡する。でもせっかくなんだし、ゆっくりピサを観光して、名物料理でも食べてきてよ」 睨みつけるような眼光から一点、梶原は柔和な表情でアシスタントディレクターに微笑みかける。「梶原さんって、仕事熱心なんですね」「まあ、そうだな」 アシスタントディレクターは、撮影チームのメンバーと撮影機材を片付けつつ、梶原のことを噂する。「でも、何て言うか……。仕事熱心というだけじゃ足りない気がするんですよね。だって寝るとき以外、僕たちとの打ち合わせ中や食事中も、片時も《天使》から目を離さないんですから」「まあ、そうだろうな。梶原にとって《天使》は「憎むべき相手」だからな」「え? 憎むべき相手? どうしてですか?」 アシスタントディレクターの手が止まる。「なんだ、お前、知らなかったのか? 梶原だぞ
最後更新 : 2026-09-06 閱讀更多