《フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する》全部章節:第 51 章 - 第 60 章

79 章節

第051話 最悪の結末②

 イタリア・トスカーナ州、ピサ。  有名な斜塔の背後に二柱の巨人───《天使》は佇立していた。  《天使》は静かに目を閉じ、微動だにしていない。「梶原さん、お疲れ様です。今日の残りの予定は、夜のニュース報道での生中継だけです。時間がありますので今のうちに休憩しましょう。我々もせっかく観光地として有名なピサにいるんです。少しは羽を伸ばしましょうよ」 アシスタントディレクターにそう促されるが、梶原はじっと《天使》を見つめ続ける。「私は結構です。ここにいます。いつ《天使》が動き出すかわかりませんからね。皆さんだけで行ってきてください。何かあればすぐ連絡します」「でも……」「誰かは《天使》の「見張り」として残らないといけないでしょ? それなら私が適任です。私が「見張り」の任務に最も適しています。それが何故だかわかりますよね?」 梶原は有無を言わせない目つきでアシスタントディレクターを睨みつける。  その眼光に気圧されたアシスタントディレクターは及び腰になった。  その上で、確かにここに残って《天使》に何か動きがないか見張っている役は必要なので、梶原の言葉に甘えることにした。「わ、わかりました、梶原さん。それじゃあ見張りを……いや、留守番をお願いします。何かあれば我々もすぐに戻りますので、ご連絡ください」「わかったわ。何かあればすぐに連絡する。でもせっかくなんだし、ゆっくりピサを観光して、名物料理でも食べてきてよ」 睨みつけるような眼光から一点、梶原は柔和な表情でアシスタントディレクターに微笑みかける。「梶原さんって、仕事熱心なんですね」「まあ、そうだな」 アシスタントディレクターは、撮影チームのメンバーと撮影機材を片付けつつ、梶原のことを噂する。「でも、何て言うか……。仕事熱心というだけじゃ足りない気がするんですよね。だって寝るとき以外、僕たちとの打ち合わせ中や食事中も、片時も《天使》から目を離さないんですから」「まあ、そうだろうな。梶原にとって《天使》は「憎むべき相手」だからな」「え? 憎むべき相手? どうしてですか?」 アシスタントディレクターの手が止まる。「なんだ、お前、知らなかったのか? 梶原だぞ
last update最後更新 : 2026-09-06
閱讀更多

第052話 最悪の結末③

 有名な鐘楼である「ピサの斜塔」を見下ろすように二柱の巨人───《天使》は佇立していた。  彼らは微動だにせず、ただその場に在り続けていた。  その目は閉じられ、表情は仮面のように静かだったが、一方の《天使》の目が薄っすらと開かれる。  そのことに、もう一方の《天使》も気付いた。「どうかしましたか?」「ああ。残念ながら失敗だったようだ」「そうですか。元々期待はしていませんでしたが、やはり残念ですね」「私は今回は少しは期待していたんだが……。まさか最初のゴールでさえクリアできないとは……」「それだけ人類は「分断」が進んでいるのでしょう。実に愚かです。ただでさえ脆弱な存在で、お互いに助け合わないと存続できないのに、そんな者同士で争い合っている。そんなことをしている場合ではないのに……。自分たちの状況がわかっていないのですかね?」「わかっていないのだろうな。わかっていたら、こんなことはしていない。お互いに争うことを止め、手を取り合って脅威に立ち向かっただろう」「どうでしょうかね……。その脅威に立ち向かう方法で意見が割れて、ますます「分断」を深めそうです」 そう言い捨てる《天使》は溜息をついたように思えた。  そしてもう一方の《天使》は、表情を緩め、少し皮肉を込めた失笑をしたように思えた。  しかし、それらはあくまでそう「思えた」だけで、二柱の《天使》の表情に変化はなかった。「どうしますか? また「《運命の2d6》」を振って、次に異世界に送り込む年齢の者を決めますか?」「そうだな。どちらにせよ、人類が「《至宝》」を見つけるまで「《審判》」は続けなくてはならない。「《運命の2d6》」は振らなければならない」「全ての年齢の者が、異世界に送り込まれても、この調子では人類が「《至宝》」を見つけることはできなさそうですけどね……」 一方の《天使》は「《運命の2d6》」を取り出し、手のひらに乗せる。  そして今まさに、再び「《運命の2d6》」を転がそうとした、その時───。「───
last update最後更新 : 2026-09-07
閱讀更多

第053話 最悪の結末④

 ───あれ? ───僕は死んだ? 体がとてもフワフワする。  上も下も、右も左もない。  宇宙を漂っているみたいだ。 ───やっぱり死んだ。 ───僕は死んだんだ。 その事を自覚し、実感したが、不思議と悲しみといった感情などは、何も感じなかった。「当然だね。僕は死んだんだもの。《天使》の《審判》で異世界に転移させられ、最初のゴール地点に辿り着くも、そのゴールを守るドラゴンを倒せず、僕はドラゴンに殺されたんだから」 僕は身体の力を抜き、自分が流されるままに身を委ねる。  そうしていると、徐々に悔しさと、後悔の念が膨らんできた。「ごめん。父さん。ごめん。母さん。僕は《天使》の《審判》に失敗してしまった。二人から、あんなに異世界でのサバイバル術を習って訓練し、準備をしていたのに……」 父と母を想うと涙が溢れそうになった。  僕は死んだ。  《天使》の《審判》で最初のゴール地点を守るドラゴンに殺された。  だからもう両親に会うことはもうできない。  二人とは、これで永遠にお別れなんだ。 僕は最後にもう一度、父と母に心の中で謝罪した。 次に僕が思ったのは詩華に対する後悔の念だった。「詩華。ごめん。異世界でも必ず君と一緒にいて、絶対に君を守ると誓ったのに……」 僕は前世の記憶、そしてこの宇宙に数え切れないほど存在する多次元宇宙の別世界の僕の記憶が混同し、詩華を信じられず、遠ざけ、詩華と一緒に異世界で行動をせず、単独挑戦モードを選んでしまった。「本当にごめん。しかも単独挑戦モードを選んだのに、最後にドラゴンに襲われた時には、むしろ詩華に助けられた」 僕は強大なドラゴンの襲撃にも怖気ず、冷静に魔法陣の存在に気付き、ドラゴンに立ち向かおうと、その場にいる戦友全員を鼓舞して指揮した詩華の雄姿を思い返す。「本当に素敵だった。本当に美しかった。本当に勇敢だった。
last update最後更新 : 2026-09-07
閱讀更多

第054話 新たな自分①

 僕は自らの死を自覚し、涙が溢れそうになった。「もう次なんてない。これっきりだ。僕はこのまま、消えてなくなる。何故なら僕は死んでしまったのだから。もう《天使》の《審判》も《至宝》も、父も母も、詩華も関係なくなる。全てが無に帰するんだ……」 死はなんと残酷なんだと僕は全身が震えるような恐怖を覚える。  しかし、不思議なことに、何事からも解放される浄化感と、この先の事を、何も考えなくて良いという許しを得たかのような幸福感も覚えた。「これが死か……。不思議な感覚だね。でも、人って死んでもしばらく、こうして意識が残るんだ。この後はどうなるんだろう? やがて眠りに就くように僕の意識は薄れ、そして永遠に戻らないのかな? この状態はいつまで続くんだろう?」 その事を疑問に思った僕は、手足に意識を集中してみる。「あれ? 感覚があるぞ。それになんだか動かせそうだ」 僕は手足を動かしてみる。  すると僕は何かに包まれているということがわかった。「なんだ、これ? 僕はどうしたっていうんだ? 僕はどこにいるんだ?」 尚も僕は手足を動かし、僕を包む何かを探る。  すると───。「うわぁッ!」 不意に身体が浮遊感を覚え、僕は自分が転落したことを悟った。「死ぬ! 今度こそ本当に死んでしまう!」 そう覚悟した僕だったが、そうした転落は僅か五十センチ程の高さしかなかった。「痛いッ!」 それでも痛みを覚えた僕は声を上げる。「死んだのに痛みを感じるなんて、酷いな。死んだら何もかもなくなって痛みからも解放されるんじゃなかったの?」 そう思いながらも手をつき、状態を起こした僕は、その時、はっと気が付く。「なんだ、ここは? いや、違う。そうだ。ここは僕の部屋だ……!」 僕は自分が、自分の部屋のベッドから落ち、目が覚めたことを認識する。  その瞬間───。「うッ───! ぐッ! うわァッ!」 僕の頭の中に「今の白石 傑」としての記憶が流れ込む。  いや、しかし、それは逆で、「今の白石 傑」に「別世界の白石 傑」として、僕の記憶が流れ込んだのかもしれない。  とにかく僕は膨大な情報の記憶が一気に溢れ出し、頭が割れんばかりに痛んだ。
last update最後更新 : 2026-09-08
閱讀更多

第055話 新たな自分②

「よかった。本当によかった。僕は死んでいない。ドラゴンに殺されていない。生きている。僕は生きているぞ」 僕は自分の生を実感し、生きている事の喜びに身を委ねる。「やり直せる。もう一度、やり直せる。《天使》の《審判》の最初のゴールで何があり、どう対処したら良いのか僕は知っている。クリアできる。今度こそ僕は《天使》の《審判》をクリアできる……!」 僕は《天使》の《審判》で異世界に転移させられ、最初のゴール地点でドラゴンに殺された失敗を、やり直せることに歓喜した。  しかし───。「うわぁッ! な、なんだこれッ!?」 次の瞬間、僕は自分がいるこの空間の「異様な光景」に気付き、驚きの声を上げる。「フィ、フィギュアが部屋いっぱいで、足の踏み場もないじゃないか……!」 所狭しと並べられたアイドル、怪獣、ロボット、ヒーローのフィギュアの数々に僕は驚いたが、次の瞬間。「い、いや。違う。これは僕の大切なコレクション。僕の大切な宝物の数々じゃないか……」 僕は何を驚いているんだ?  これは僕が集め、僕が作り、僕が並べたフィギュアたちじゃないか。 僕は鏡の前に立ち、鏡に移る自分の顔を、まるで今日初めて見る顔であるかのように確認する。「そう。これが僕。アイドルオタクでフィギュアコレクターの白石 傑が今の僕」 そう考えた僕は違和感を覚える。「でも、今の僕ってなんだ? 僕は僕じゃないか。さっき流れ込んだ記憶は何? 前世での僕の記憶? 別世界での僕の記憶? 白石 傑に前世の記憶が蘇った? それとも前世の僕に、今世の白石 傑のこれまでの人生が、記憶の情報となって流れ込んだ……?」 僕は今の僕と、ついさっきの事のように思えるが、異世界でドラゴンに殺された僕と、どっちが本当の僕なのかわからなくなる。「いや、どっちが本当の僕なんてないのかもしれない。そのどちらもが本当の僕で、今この僕こそが僕なんだ」 僕はついに自分を取り戻す。  そして気力が漲り、活力が炎となって目に宿った。「傑。どうした。何を騒いでいるんだ?」 僕がベッドから落ちたり、部屋中のフィギュアを見て叫んだ驚きの声を怪訝に思い、母が心配して様子を見に来てくれた。「だ、大丈夫。なんでもないよ。僕は平気だよ」 僕
last update最後更新 : 2026-09-09
閱讀更多

【第02章】第056話 ドラゴンに殺されたスクラップ改装師①

『おはようございます。七時になりました。朝のニュースをお伝えします』 いつもと変わらず、定刻通りにテレビのニュース番組が始まり、僕は「また、このニュースだ……」と思わずにはいられなかった。「父さん、もう七時だよ。あと少ししたら、僕は家を出ないと遅刻しちゃうよ」 僕は父親を急かす。  すると父は台所で「なにっ!? もうそんな時間かっ!?」と、僕に持たせるお弁当が間に合わないと悲鳴をあげた。 そんな父の様子に、僕は少し笑う。「ふふっ。父さんは相変わらずだな。身長二メートル十五センチ、体重百五十キロの巨漢。学生時代は相撲部の主将として鳴らし、細菌化学兵器の研究者の肩書きを持つ。そして掃除、洗濯、料理など、家事全般が大好きで、いつも僕たちのごはんを作ってくれる。但し、量が自分の身体に合わせて作るので、いつも大盛りで、完食するのに苦労するけど、おかげで僕はとても健康だ。父さん、本当にありがとう」 父は、尚もキッチンで慌てていたが、僕の為に用意しているお弁当は、もうすぐ完成しそうだった。  そしてそんな父とは対照的に、母は落ち着いた様子で僕に持たせる「装備品」をミリタリーのボストンバッグに詰め込んでいた。  拳銃とサバイバルナイフ、それに小型のライフルやマシンガン、手りゅう弾、さらにはロケットランチャーなど、殺傷能力の高い火器が次々と収められた。  母がそれらをバッグに詰め込む所作は、まるで狙撃手がライフルに弾丸を込めるかのようで、慎重かつ丁寧だが、迷いがなく、正確で、そしてスピーディーだった。「さすが自衛隊で「鬼陸将補」と異名を取る母さんだね。手際が良くて惚れ惚れしちゃうよ」 僕は次々と詰め込まれる銃火器を見つめる。  しかし、これらの武器は異世界に持ち込めないことを知っていた。「でも宝箱から拳銃は出てきたし、どうにかして持ち込む方法があるのかな……?」 僕がそんなことを思っていると、母が僕にミリタリーバックを私ながらこう言った。「今、世界は動揺し、治安が悪くなっている。身を守る武器が必要だ。肌身離さず、いつも
last update最後更新 : 2026-09-09
閱讀更多

第057話 ドラゴンに殺されたスクラップ改装師②

「この後のリポート映像もわかるよ。大勢の観光客が、ピサの斜塔と《天使》のツーショットをカメラに収めるんだ」 僕がそう予言すると、その予言通りにリポーターが『ご覧ください。「《天使》」と有名なピサの斜塔のツーショットです』とリポートを届けてくれた。 僕はますますニヤリと笑う。「同じだ……。前回の《天使》の《審判》で僕が異世界に転移させられた時と、全く同じだ」 僕は喜びで拳を握る。「これならやり直せる。これなら今度はもっと上手くやれる。これなら今度こそ、《天使》の《審判》でドラゴンに殺されることなく、最初のゴールをクリアすることができるぞ……!」 僕はピサの斜塔と「《天使》」のツーショットという音声を耳にしつつ、テレビで高さ五十五メートル、地上八階建ての鐘楼であるピサの斜塔が映し出され、そしてその奥に、そんなピサの斜塔がマッチ棒に見えてしまう程、巨大な二柱の巨人が佇立する姿を見つめた。「見ていろ。《天使》。僕は必ず《審判》をクリアし、《至宝》を見つけてやる」 僕は決意を全身に漲らせた。『英国からイタリアまで千二百キロを一日で移動するとは驚きですね。これまでも「《天使》」は、そのような距離を一日で移動したことがあったのでしょうか?』『千二百キロというと、東京から北海道にある日本本島の最北端・宗谷岬までの距離に相当します。世界各地を転々と移動する「《天使》」ですが、一日でこれ程の距離を移動することは珍しく、過去にインド・チェンナイから、タイ・バンコクまで移動した二千キロに次ぐ二番目に長い移動距離で───』 尚もニュースは続き、ピサを訪れていた観光客が、突然現れた二柱の巨人に驚き、目当ての斜塔以上にカメラで「《天使》」の姿を収めていましたなどと、前回と同じリポートが続いた。 僕は、リポートニュースが前回で同じであることを喜んだが、次に、リポートニュースが前回と同じであった為、急速に興味を失った。  正直、僕はこの手の「《天使》」のリポートニュースは見飽きていた。  この巨人が突如として出現し、人類に「死の宣告」───「《|審判《ジャ
last update最後更新 : 2026-09-10
閱讀更多

第058話 ドラゴンに殺されたスクラップ改装師③

 僕は仏壇の前に正座すると、お鈴を鳴らした。  チーンという澄んだ音色が響き渡る。その鈴の音が終わらぬ間に、僕は手を合わせて目を閉じた。「虹心。行ってくる。今日がその日だ。必ず巨人───「《天使》」の試練に打ち勝ち、兄ちゃんが世界を救ってみせるからな」 虹心は僕の最愛の妹だ。  いや、最愛の妹だった。  過去形なのは、妹がもうこの世にいないからだ。  妹は《天使》に殺された。  《天使》は妹を殺した、憎むべき相手なのだ。  僕はその事を思い出す。  そして自らが今回、《天使》の《審判》に選ばれたことを喜んだことを思い出す。  《天使》が「《運命の2d6》」を振り、出た目は「一」と「六」だった。  その事で、全世界の十六歳の若者が、次に《天使》の《審判》に挑む為、異世界に転移させられることが決まったが、多くの若者と、その家族、そして友人や知人は悲しんだ。  僕の両親も、自分達に続き、今度は僕が《天使》の《審判》に選ばれ、自分達が命懸けで生き延びた、あの異世界に息子である僕が転移させられることに嘆き悲しみ、《天使》に対して怒りに震えたが、僕は違った。 僕は喜んだ。 僕は、自分が《天使》の《審判》に選ばれ、異世界に転移し、《天使》の科す《至宝》を僕こそが見つけ、《天使》に一矢報いてやりたかったのだ。  だから僕は喜んだ。「これで《天使》に復讐できる。妹の無念を雪ぐことができる。見ていろ。虹心。必ず兄ちゃんが《至宝》を見つけるからな」 僕は「《天使》」に殺された妹の無念を想いつつ、そんな妹に決意が届くよう、ギュッと目を閉じて強く祈りを捧げた。「お前の妹は仏壇にはいない。お前の妹は死んでいないからだ。虹心は必ず生きている。死んだ者のように拝むな」 いつの間にか母が僕の後ろに立ち、仏壇に手を合わせる僕を睨んでいた。「わかっているよ、母さん。これは今もどこかで生きている虹心に決意が届くよう
last update最後更新 : 2026-09-11
閱讀更多

第059話 ドラゴンに殺されたスクラップ改装師④

 出立する前、僕は最後に自分の部屋に立ち寄る。「必ず生きて帰ってくるからね」 僕は部屋中に飾られたアイドル、魔法少女、戦隊ヒーロー、ロボット、怪獣などのフィギュアやプラモデルに別れを告げる。 僕は熱狂的なアイドルオタクだ。  子供の頃に見たグループアイドルの輝きに魅せられ、絵に描いたような「信者」に成長していた。  そしてそこから魔法少女、戦隊ヒーロー、ロボット、怪獣など、幅広く趣味が波及し、フィギュアやプラモデルなどを手当たり次第に買い漁っては、作成に勤しむ日々を過ごしていた。「そんなアイドルオタクでフィギュア好きの普通の高校生だったのに……。そんな僕が命懸けで行う《天使》の《審判》に挑むことになるなんて……」 僕は自分で作った「力作」を手に取り、名残を惜しんで指で撫でる。  僕の作品は、単にフィギュアやプラモデルを組み上げた「既製品」ではない。いずれも僕が「アレンジ」を加えた「カスタムメイド」ばかりだった。  僕はこうした「改造」が得意だった。  始めは、よりフィギュアやプラモデルの構造を知ろうと「分解」することから始めたが、そうして「分解」したパーツを自分なりに再構築して、全く新しい「カスタムメイド」の作品に組み上げていた。  僕はこうした作品の完成形や、製造過程を動画で配信している。そしてその界隈では「ちょっとした有名人」で、僕の動画配信はいつも多くの視聴者で賑わっていた。「またそうした配信ができるように必ず戻ってくるぞ」 僕は自分の子供達(=手塩に掛けて作成したカスタムメイドのフィギュアやプラモデル達)に誓いを立てる。「虹心。兄ちゃんを見守っていてくれ。お前の為にも兄ちゃんは頑張るからな」 そして机の上の写真立てに飾られた妹にも語り掛ける。  写真の中の妹は煌びやかなアイドル衣装の姿で、ポーズを決めてウィンクをしてくれていた。兄の僕が見ても本当に可愛い妹だ。『お兄ちゃんって本当にアイドルが好きだね。何がそんなにいいのよ』『うるさいぞ、妹よ。|
last update最後更新 : 2026-09-11
閱讀更多

第060話 二回目(?)の出立①

 父は家から僕を送り出し、僕が自衛隊が用意した軍用車両に乗り込む前に、僕を強く抱きしめた。  身長二メートル十五センチ。体重百五十キロ。学生時代は相撲部の主将として鳴らした父に、そのように愛情を表現されると僕の背骨はいとも簡単にへし折れそうになる。「気をつけて行ってくるんだぞ、傑」「ゔ、ゔん、わ、わがっだよ、父さん……」 危うく気を失いそうになりつつも、辛うじて僕は父に返事をする。  次に父は母を全力で抱きしめ、情熱的な接吻を交わす。  小柄な母は、父に覆い隠されそうなほど強く抱きしめられたが、父に圧し潰されることはなく、逆に嘘か本当か分からないが北米の灰色ぐまを素手で殴り飛ばしたと噂される膂力で、父に抱き付き返し、父を押し返すのではないかと思える程の強さで、負けじと父の唇に自らの唇を押し当て続けた。「まったく……。子どもの前ではやめてくれって、いつも言っているのに……」 そう溜息をつきつつ、僕は軍用車両を振り返る。「おお。すごい。これって自衛隊の最新車両じゃん。さすが僕たち全世界の十六歳の若者が、《天使》の《審判》で異世界に旅立つ日だというだけのことはあるね。政府が用意した自衛隊の出迎えも豪勢だ」 僕は目を輝かせて真新しい装甲車に手を伸ばす。「まて。傑。お前は装甲車に触るな」 母がそう僕を制したのと同時だった。「あ───」 僕が装甲車に触れると、僕の手からこぼれるようにサイドミラーがポロリと外れ落ちた。  母が「だから言ったのに……」と溜息をつく。「ご、ごめん。違うんだ。「分解」しようと思ったんじゃないよ。ちょっとミラーが曲がっていたから直そうと思ったんだよ」 僕は慌ててサイドミラーを拾い上げる。  そして立ち上がる際にボンネットに手を掛けたが、すると何の前触れもなくボンネットが跳ねあがった。そしてカバーを失ったエンジンルームが露わになる。「うわっ!」 驚いた僕はバランスを崩し、転倒を避けようとバンパーを掴むが、すると今度はバンパーがいとも簡単に外れてしまった。「なんでっ!?」 さらに前照灯も外れ落ちたので、僕は慌ててキャッチするが「ふー。危ない危ない。前照灯はデリケートだから地面に落ちたら割れてし
last update最後更新 : 2026-09-12
閱讀更多
上一章
1
...
345678
掃碼在 APP 閱讀
DMCA.com Protection Status