《フィギュアオタクで手に触れた物をなんでもすぐ壊す僕が異世界全民ロードサバイバルで人類の分断を修繕する》全部章節:第 71 章 - 第 79 章

79 章節

第071話 二回目の異世界へ③

 ついに発射されてしまった六発の核ミサイル。  僕たちが固唾を呑んで見守るその瞬間も、ミサイルは《天使》に向かって突き進む。  至近距離から発射されたミサイルが《天使》に着弾するのは一瞬だった。 と、思われた。 しかし───。「人類諸君。またしてもこのセリフを言わねばならぬようだ。だからキミたちは不合格なのだ、と」 閉じられていた《天使》の両目が薄っすらと開く。  その瞬間、発射されたミサイルはピタリと動きを止め、空中で停止した。『な、なにッ!? どうしてッ!? 何故なのッ!?』 ミサイルを発射したリポーターが、その光景を目の当たりにして困惑の声をあげる。『きゃぁぁああぁぁぁぁぁッ!』 次の瞬間、動きを封じられたのは六発の核ミサイルだけではなく、リポーターの乗る撮影用の軍用ヘリも、まるで見えない巨大な手に鷲掴みにされたかのように空中で停止する。『そんな馬鹿なッ! ここまで周到に……憎き《天使》に悟られないよう完璧に偽装して、ここまで接近してミサイルを発射したのにッ!』 彼女は気が狂ったようにミサイルの爆破ボタンを押すが、ミサイルがその指令に従うことはなかった。「また失敗してしまうというの……!? また、人類は《天使》に一矢報いることなく、失敗してしまうというの……!?  嫌よ、そんなの……。そんなのは嫌。絶対に嫌。《天使》を殺す。私は絶対に《天使》を殺す。そして《天使》に殺された父の無念を雪ぐの!」 リポーターは、ついには拳を核ミサイルの爆破ボタンに叩きつける。  そして、何度も、何度も拳を叩きつけるが、六発の核ミサイルは、一発さえもその威力を炸裂させることはなかった。「たった一発でいい。たった一発でも爆発すれば、さすがの《天使》も無傷では済まないはず……」 僕は、今にも核ミサイルが爆発するのではないかと緊張しつつ、リポーターのリポート映像を見続ける。「でも、もしそんな事(=核ミサイルがこの場で爆発する)が起ったら、あの場に集まった僕と同じ十六歳の若者達も無事では済まないだろうけど……」 僕はその事が心配で、不憫に思う気持ちもあった。「《天使》に一矢報い
last update最後更新 : 2026-09-22
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第072話 二回目の異世界へ④

 僕は状況を固唾を呑んで見守る。  僕の隣で詩華も僕と同じく、固唾を呑んで状況を見守っていた。 しかし、ついにリポーターの発射したミサイルが、《天使》に対して効果を発揮することはなかった。『くそーッ! なんでッ! なんでなのよーッ!』 リポーターは拳を打ちつけて「計画の失敗」を悔やむ。「どうしてキミたちの汚らわしい武力が我々に対して通用すると思うのか。また我々が油断していたと思うのか。我々は油断などしていない。キミたちの浅はかな計画は、最初からお見通しだ。これまで捨て置いていたのは、そんな計画など、我々にとって取るに足らないものだからだ」 《天使》の表情は変わらない。  冷たい鉄の仮面のように微動だにしていない。  《天使》の声は聞こえるが、その口元が動くこともなかった。  《天使》の存在は揺るがない神のようにそこに在り続けるだけだった。「愚かな人類よ。あなた達は「仏の顔も三度まで」というそうですね。我々は仏ではありません。次もまた許すとは限りませんが、今回は許しましょう。しかし、人類に対して、また罰は与えなければなりません。我々の力を思い知り、二度と愚かな行為を犯さぬよう、十分に注意することです。」 薄っすら開かれていた《天使》の両目が、さらに大きく開かれる。  その両目からは光が溢れ、周囲を眩い光で包んだ。  その光景は神々しさもあった。  光は眩しかったが、温かみを感じたのだ。 しかし───。 次の瞬間、誰もが恐れていた事態が始まった。「うわーッ!」 「きゃあぁぁぁぁぁッ!」 「な、なんだこれはッ!?」 「こ、これはまさか、かつての「《消失12》」のッ!?」 リポート映像の中の若者達から悲鳴があがる。  よく見ると、あの場にいる全員の身体に異変が起き始めていた。「あ、あれは……! 「《穴》」だ!」 僕は悲鳴に近い声をあげる。 リポート映像で見る「戦友」達の全身に、まるで墨汁を振り撒かれたように黒い点の「染み」があらわれる。  そしてその「染み」は、墨汁が布に染み広がるように「戦友」達の身体に無数に広がり始めた。「うわーッ!」 「きゃあぁぁぁぁぁッ!」
last update最後更新 : 2026-09-23
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第073話 二回目の異世界へ⑤

 三年前───。 人々が変わらぬ日常を過ごしていたある日。  宇宙から「《天使》」と名乗る二柱の巨人が突如として現れ、地上に舞い降りた。  そして人類に対して「《審判》」という脅威を与える《天使》を、人類は攻撃した。  しかし、その攻撃は無意味だった。  人類の戦力の総力を上げて行った攻撃だったが、《天使》には何一つ通用しなかった。  そして人類は《天使》を怒らせ、《天使》は人類に、今後、二度と愚かな行為を起こさないよう、恐怖を与えることにした。 それが後に「《消失12》」と呼ばれる災厄だった。 《天使》が、人類に対して恐怖を宣告すると、全世界の十二歳の若者は、全身を「《穴》」に蝕まれ、かき消された。  この世界から、たった一人の例外もなく、十二歳の若者が全員、姿を消したのだ。 僕の妹の虹心も、この時、災厄に巻き込まれ、失われた。 それが「《消失12》」だった。  人類が《天使》に恐怖し、抵抗をやめた災厄。  それが「《消失12》」だった。「その「《消失12》」と同じ恐怖が、今、僕の身に起っている……!」 僕は自分の身体が「《穴》」に食い荒らされ、もう半分以上が消えてしまっていることに恐怖する。「まさかこんな事がッ! 異世界に行くはずが、その前に、こんな所で「消失」してしまうなんて……ッ!」 僕は自分が「《穴》」に食い荒らされ、「消失」してしまう恐怖はもちろんだが、せっかく異世界で《天使》の《審判》をやり直し、今度こそ成功させて最初のゴールに辿り着こうと思っていたのに、その願いが叶わなくなってしまったことを残念に思った。「すまない、虹心。今度こそ《天使》の《審判》をクリアして、お前の無念を晴らそうと思ったのに……」 今まさに消え去ろうとする僕は、最愛の妹・虹心の姿を思い浮かべ、思い出の中の妹に謝罪する。「すまない、詩華。今度こそ異世界で詩華と一緒
last update最後更新 : 2026-09-24
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第074話 二回目の異世界へ⑥

「終わりましたか?」 一方の《天使》が、もう一方の《天使》に尋ねる。「完了した。十六歳の若者全員と、この場にいることがふさわしくない者を消し去った」「消し去った……。彼らはこの世から消えてなくなってしまったのでしょうか?」「この世から消えてなくなったという点では正しい。だが、死んだわけではない。転移の方法は違うが、彼らは異世界に旅立った。それだけだ」「そうですか。異世界に旅立ちましたか。しかし、この「《穴》」による転移方法だと、彼らにルールを科せる事ができません。具体的には、異世界に転移して、最初の一日だけはモンスターに襲われないように「初心者保護期間」を儲けていましたが、その恩恵を彼らは受けることができなくなってしまいました」「それであれば、彼らが異世界で生き残り、最初のゴールですら辿り着くことは難しいかもしれないな」「ええ。恐らくそうなるでしょう。たった一人でさえ生き残れるかどうか」「そうだな。それ程までに異世界は、この世界の者にとっては生き残ることが過酷な環境だ」 二柱の《天使》は、異世界に転移した者たちが生き残れないことを残念に思い、溜息をついたように思えた。  しかし、それはあくまで思えただけで、実際には、《天使》は微動だにせず、ただその場に神々しく在り続けるだけだったが。「しかし、希望はありそうですね」「そうだな。希望はありそうだ」「この世界には数多の多次元宇宙───つまり並行世界があります」「そう。人々が日々の行動で一つの選択をする度に、選んだ選択の世界と、選ばなかった選択の世界が誕生し、二つの世界は別々の道を歩み始める」「我々のようにあらゆる選択肢と、あらゆる未来を「共有」して今を生きられない人類にとって、人生とはたった一度の冒険で、やり直したり、別の世界の自分と入れ替わることはできない」「ですが「修復者」は違う。修復者は、選択によって分裂し、別々の未来を歩み始めた二つの世界」を、また一つの世界に「修復」することができる」「選択を迫られた際、選択を選んだ世界と、選ばなかった世界を同時に生きることができる者……」「しかも、選択は一つ二つではない。一人の人間が、日々、何百、何千と選択している」「その選択の数だけ世界が誕生し、分裂して別々
last update最後更新 : 2026-09-25
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第075話 二回目の異世界へ⑦

 「《穴》」に全身を蝕まれた僕は暗闇の中にいるようだった。  どうしてこんな所にいるのかはわからない。  でも、不意に目の前に最愛の妹・虹心が現れる。『虹心ッ!』 僕は喜び、そして叫ぶ。  会いたくて会いたくて仕方がなかった妹がまた目の前にいるんだ。  こんな状況になれば、誰だって叫ぶよね。 僕は駆け出し、妹に手を伸ばす。 しかし───。『お、お兄ちゃんッ……!』『虹心ッ!』 僕の目の前で妹が「《穴》」に蝕まれる。『助けてッ! お兄ちゃんッ! 私が消えちゃうッ!』 妹は目に涙を浮かべ、助けを求めて僕に手を伸ばす。『そうはさせないッ! 僕の手を掴むんだ、虹心ッ!』 その手を掴もうと、僕も手を伸ばす。  しかし、僕の伸ばした手が妹を掴む間もなく、虹心は「《穴》」に掻き消されてしまった。 僕は失った妹を探して、必死に暗闇をまさぐる。  しかし、その手は虚しく空を掴むばかりだった。『どうして虹心がッ! 僕の妹がこんな目にッ!』 怒りと喪失感で半狂乱となった僕は、腕を振り回して暗闇を掻きむしる。『うわッ! な、なんだこれはッ!?』 僕は自分の異変に気づく。  それは僕の身体にも「《穴》」が現れ、広がっていくという異変だった。『うわーッ!』 さらに僕は自分の足元にあった床がなくなり、崩落するように落下する浮遊感を覚える。「傑くん! しっかりして! 傑くん!」 誰かが僕を呼んでいる。  同時に僕は大きく身体を揺すられる。  尚も暗闇を落下し続ける僕は、不意に全身を草地の地面に受け止められる。  ドスンという衝撃が全身に響いた。  驚いた僕は目を見開いて叫んだ。「うわーッ!」「大丈夫よ、
last update最後更新 : 2026-09-25
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第076話 悲鳴という名の号砲①

 悲鳴が聞こえる。  僕は飛び起きた。  ここは草原。  辺りは真っ暗だ。「ここが異世界……? 天国じゃなくて?」 状況がわからず僕は狼狽える。  その間にも周囲からは次々と悲鳴が沸き上がった。  詳しい状況はわからないが、僕と同じく、「《穴》」に全身を蝕まれ、消失したと思われた戦友が、周囲にたくさんいるようだった。 そしてあちこちからあがる悲鳴。  どうやら戦友たちは何かに襲われ、何が起っているのかわからないが、相当数の「犠牲者」が出ているようだ。「《天使》の「《審判》」が、始まっている。ここは異世界なんだ。でも前回は一日の「初心者保護期間」があったはず。今回はその猶予がないのか?」 僕は前回と違う様子に困惑する。  しかし、僕はすぐに今回、どうして前回と様子が違うのかの答えに思い当たった。「《天使》を怒らせたからだ。《天使》専任のリポーターが、実は《戦争》の《派閥》で、正体を隠して《天使》に核ミサイルを撃ち込もうとしたから、その罰で僕たちは「初心者保護期間」なしで異世界に転移させられたんだ……」 僕は状況がわかったが、呆然としてしまう。  前回、僕は異世界でスライムやゴブリンと戦った。  ゲームでは、簡単に倒せる雑魚モンスターとして登場するスライムやゴブリンだったが、実際はとても強く、異世界に転移してすぐの自分たちでは太刀打ちできない相手だった。  暗くて見えないが、恐らく、僕たちは今、そのモンスターたちに襲われている。  次々と沸き上がる悲鳴。  その悲鳴の一つ一つが戦友の断末魔なのだ。「ライトだッ! ライトを点けろッ!」 誰かが叫ぶ。  その声は悲鳴のようだったが、やがてすぐに本当の悲鳴に変わった。  それは断末魔でもあり、彼も「犠牲」になったようだ。  僕は彼の死を無駄にしない為にも、大急ぎで自分の身体を確かめる。 すると───。「あ……! 僕が改造したマグライト照明付きハンドガンだ!」 僕は自分のポケットに、頼もしい「相棒」があることに気付く。 僕はすぐにマグライトのスイッチを入れた。  暗闇を切り裂くように、マグライトの力強い光
last update最後更新 : 2026-09-26
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第077話 悲鳴という名の号砲②

 僕は尚も銃のトリガーを引く。  しかし、何度、トリガーを引いても弾は発射されなかった。「あ、あれ……? どうして?」 僕は戸惑う。  そうして僕がもたついている間に、その隙を好機と捉えたゴブリンが再び襲い掛かってきた。「何をやっているんだッ! 安全装置を解除しろッ! 訓練で散々習っただろうッ!」 僕は声の主に突き飛ばされる。そして地面に倒れ込むが、そのおかげでゴブリンの凶悪なこん棒の一撃を喰らわずに済んだ。  僕を突き飛ばしたのは軍毅だった。  軍毅は、自分が持つ銃でゴブリンを撃つ。  しかし、縦横無尽に飛び跳ねる身軽なゴブリンに命中させることはできなかった。「くそッ!」 ゴブリンが軍毅に飛びかかる。  軍毅は自分に噛みつこうとするゴブリンをマグライトを盾にして防いだが、両手がふさがり、反撃ができない状態になってしまった。「撃てッ! 早くコイツを撃つんだッ!」 軍毅の悲鳴のような命令に衝き動かされ、僕は銃の安全装置を外すとゴブリンに向けて弾を発射した。  幸い、弾はゴブリンに命中した。 しかし───。 ゴブリンは短く「ギャッ!」と叫び声をあげて軍毅から離れたが、銃で撃たれた肩に傷は負っていなかった。  銃の弾は、まるでぶ厚いゴムタイヤにでも当たったかのように弾かれてしまったのだ。「そ、そんな……! 銃が効かないなんて……!」 それは信じられない光景だった。  僕は前回の異世界でも銃を獲得していた。  銃を手にすると、とても頼もしかった。  そして銃があればゴブリンくらい、簡単に倒せると思っていた。  すぐにでもゴブリンを見つけ、ゴブリンに向かって銃の威力を確かめたいと思っていたが、折悪しく、僕が銃を手にしてから、なかなかゴブリンと戦闘する機会がなく、銃の威力を確かめられずにいたが、あの時、僕がゴブリンと戦闘しなかったことは、幸運だったのかもしれない。  僕は思い違いをしていた。  銃はゴブリンに通用しない。  ゴブリンの皮膚はぶ厚いゴムタイヤのように頑丈で、銃の弾で貫通することはできないようだった。 ゴブリンは今度は僕に襲い掛かってきた。  銃は効かなかったが、弾丸で撃たれたこと自体は痛かったらしく、ゴ
last update最後更新 : 2026-09-27
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第078話 悲鳴という名の号砲③

 僕は頭で考えるより先に、身体が動く。  そしてマグライトと「合体」させた銃を構えると、至近距離からゴブリンの目に向けて引き金を引いた。「ギャッウッギャウギャーッ!」 ゴブリンの目玉が弾け飛び、弾丸は眼窩を通って頭蓋骨をすり抜け、脳に達したようだった。  糸が切れた操り人形の様に力を失うと、ゴブリンはバッタリと倒れ、動かなくなった。 僕と詩華と軍毅の三人は、こうして辛うじて一匹のゴブリンを倒す事に成功した。  しかし、周囲を見渡すと、そんなゴブリンがまだ何百と飛び跳ねていた。「に、逃げましょう……ッ!」 詩華が悲鳴をあげるかの如く、提案をする。「逃げるといったって、どこに逃げるんだよッ!」 軍毅は周囲の至る所にゴブリンがいる状況に、逃げ道を見いだせなかった。「見てッ! あそこに車があるッ! あの車を使って逃げましょうッ!」 逃げ道を探して周囲を照らしていた詩華のマグライトが、一台の車を照らし出した。「こんな所(=異世界)に車があるなんて……!」「マジかよ……! なんで異世界に車が? しかし、これはラッキーだぜ!」 詩華と軍毅は異世界に車があることに驚いていた。「そうか。二人は僕と違って、まだ異世界で《天使》の《審判》を経験していないから、最初の試練が、車に乗って、七日以内に二千四百km先の補給地点へ辿り着く事だと知らないんだ」 僕は異世界に車がある事に慣れっこだったが、二人はそうではないという「経験の差」に驚く。  そこには、少しの優越感もあったが、しかし、そんな優越感に浸ってばかりもいられなかった。  その間にも、周囲ではゴブリンが戦友を殺戮しているのだ。「早く乗り込むぞッ!」 軍毅が僕と詩華を率いて車に走る。  軍毅と、そして僕と詩華は車に乗り込もうと一直線に走るが───。「どけッー!!」「なにッ!?」 軍毅が突き飛ばされる。  そして軍毅より一瞬早く、僕たちとは別の───僕たちと同じく、今回の《天使》の「《審判》」で異世界に送り込まれた「《十六世代》」の数名が車に乗り込んだ。「何をするんだ、お前らッ!」 不意を突かれ、突き
last update最後更新 : 2026-09-28
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第079話 悲鳴という名の号砲④

 次々とこの場から車が逃げ出し、その数をみるみる減らしていった。  どうやら僕と軍毅、それに詩華は、他の「戦友」に比べ、車の発見が遅かったようだ。「急げッ! あの車だッ!」 それでも軍毅は残った車に乗り込もうと躍起になるが、その度に、目の前で別の戦友に車を奪われ、なかなか車を獲得する事ができずにいた。 そうしている間にも車は、みるみる戦友に奪われ、数を減らしていく。「くそッ……! このままじゃ……ッ!」 軍機が焦る。「どこかに……、どこかに車は残っていないの……」 詩華は急速に数を減らす車を成す術もなく見送るしかできずにいた。  せっかく多くの車を見つけ、脱出の糸口を見つけたと思った直後だっただけに、落胆も大きいようだった。 しかし、そんな二人に比べて、僕は余裕があった。  何故なら───。 僕は「ある場所」をライトで照らす。  そこは、雑草が生い茂り、茂みになっている場所だった。  そしてそこには僕の「目当ての物」があった。「やっぱり今回の《天使》の《審判》でも、ここにあってくれたんだね」 茂みの中にあったもの。  それは一見すると車とは思えないガラクタの山のようだったが、よく見ると古びた小型のトラックだった。「前回の《天使》の《審判》で僕が乗り込んだトラック。嬉しいな。まるで長い付き合いの相棒に再会したようだよ」 僕は、僕の相棒だったトラックが、今回も前回同様、茂みの中にあってくれて喜んだ。「軍毅、それに詩華。あそこにまだトラックがあるよ。あのトラックに乗り込もう」 僕は軍毅と詩華を誘う。  前回の《天使》の《審判》で、僕は軍毅に四人パーティーモードに誘われたが、その申し出を断り、単独挑戦モードを選んだ。  しかし、今回はそうするつもりはなかった。  その理由は、まず、《天使》の《審判》ではゴール地点にドラゴンがいて、最低でも十六人の戦友がいないと、そのドラゴンを倒せず、最初のゴール地点に到達することができない。その為、仲間が多い方が良いという事を僕が学んでいたからというのが一点目の理由。  もう一点の理由は、僕は別世界の事ではあるが、詩華に異世界で
last update最後更新 : 2026-09-29
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