横川はすぐにあとを追った。その場に残された麻耶は、前後して廊下の奥へ消えていく二人を見送り、訳が分からないという顔で目を瞬かせた。首をかしげた途端、突拍子もない考えが頭に浮かぶ。――まさか八角様......横川さんを相手に発散するつもりじゃないでしょうね?いや、それはない。八角様は男に興味がないし。ちぇっ、残念......あんなに男前で色気のある顔をしてるんだから、女だけじゃなく男まで落としたら、さぞ面白いのに。麻耶は勢いよく頭を振り、脳内に広がりかけた妄想を追い払った。それから小部屋へ戻る。床に落ちていたタオルを拾い上げ、豊水のそばへしゃがみ込んだ。ナイフに残っている指紋を丁寧に拭き取ってから、自分の手で強く握り、自らの指紋を付着させる。そこまで済ませると、鞭で打たれてできた自分の傷を見下ろした。誰が見ても息をのむほど痛々しく見えることを確認してから、豊水のスマホを手に取り、警察へ通報した。電話がつながった瞬間、麻耶の表情が一変する。冷たく澄んでいた瞳にはたちまち涙がたまり、唇がかすかに震え始めた。泣き声の混じった甘くか弱い声は、怯えきったウサギのようだった。「もしもし......警察、ですか......?」恐怖を抑えきれないように声を震わせ、何度も言葉を詰まらせながら訴える。「た、助けてください......性的な目的で、違法に監禁されています......私だけじゃありません......ほかにも大勢います......はい。みんな、さらわれてきた人たちです......わ、私......あの男をナイフで刺してしまって......」電話の向こうの担当者も、明らかに緊張した様子だった。「落ち着いてください。ゆっくりで大丈夫です。今、どちらにいらっしゃいますか?」麻耶は一度すすり泣き、屋敷の住所を伝えた。声は何度も途切れ、必死に泣くのをこらえているように聞こえる。「お願いします......早く来てください......怖いんです......」通話を終えると、麻耶はスマホを床へ放り投げた。頬にはまだ涙の跡が残っていたが、瞳はすでに元の冷たさを取り戻している。嫌そうな顔で涙を乱暴に拭った。――まったく。こういう女々しい芝居は、本当に性に合わない。......その頃、
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