蒼士はベッドから降りると、クローゼットからシャツを取り出した。ボタンを留めながら言う。「今日は会社を休んで、家でゆっくりしてて」「駄目です。今日は有賀さんの収録が......」「駿人に見張らせれば大丈夫だ」紗寧は眉をひそめた。「本当に......大丈夫なんですか?」「スターエンタメの前社長だぞ。安心して任せておけ」「......」蒼士は最後のボタンを留め終えると、彼女へ振り返り、わずかに口元を上げた。「それに、その状態で会社へ行けるのか?」紗寧は自分の体に残された痕を見下ろし、さらに両脚へ目をやると、二秒ほど黙り込んだ。「......分かりました」......蒼士が寝室を出ると、横川が廊下で待っていた。「朝食の支度が整っております」蒼士は短く返事をし、足を止めないまま告げる。「軟膏を買ってこさせろ。打ち身に効く、なるべく効果の高いものを」横川は一瞬きょとんとした。「どなたか、お怪我を?」蒼士が横目で彼を見た。その眼差しは淡々としていたが、横川は瞬時に口をつぐみ、慌ててうなずいた。「かしこまりました。すぐに手配します」紗寧はしばらく寝室に座り込んだまま動けなかった。ようやくゆっくりと布団をめくり、ベッドから降りる。足の裏がカーペットに触れた途端、足の甲に広がる青あざが鈍く痛んだ。慌ててベッドサイドテーブルへ手をつき、どうにか体を支える。そのまま足を引きずりながら、浴室へ向かった。鏡に映った自分の姿は、まともに見られたものではなかった。鎖骨から下には、無数の赤い痕が残っている。足元へ目を落とすと、足の甲の痕はさらに痛々しかった。皮下に広がった内出血が、透き通るほど白い肌に青紫色のあざとなって、いくつも浮かび上がっている。紗寧は下唇を噛んだ。昨夜の光景を思い出した途端、また耳まで熱くなってくる。蛇口をひねり、両手ですくった冷水を顔へ浴びせた。冷たい雫が顎を伝って落ちていく。それでも、頬の火照りは少しも引かなかった。ずいぶん時間をかけて身支度を済ませ、紗寧はゆっくりと階段を下りていった。蒼士はリビングのソファに座っていた。目の前のローテーブルには、数本の塗り薬と打ち身用の塗り薬が並んでいる。彼はライトグレーの部屋着に着替えていた
Read more