紗寧は自分の身体を見下ろした。鎖骨から下には赤い痕が点々と残り、無事なところがほとんどない。息をのみ、慌てて布団を引き寄せて身体を包む。耳まで熱くなった。昨夜の光景が、頭に浮かぶ。大きな窓の前に押しつけられ、熱を帯びた肌に冷たいガラスが触れた。背後から覆いかぶさるように身体を寄せてきた彼の吐息が、耳元にかかる。低く、抗いがたい声だった。「まだ俺がダメだと思うか?」紗寧は布団に顔を埋めた。このまま繭のように全身を包んでしまいたい。恥ずかしすぎる。しばらく布団の中にこもったあと、彼女はゆっくりとベッドを下りた。足がカーペットに触れた途端、膝から力が抜け、危うく倒れそうになる。慌ててベッド脇のテーブルにつかまり、身体を支えた。両脚から骨が抜けてしまったかのように力が入らず、歩くだけでも震える。紗寧は壁に手をつき、一歩ずつ浴室へ向かった。歩くたびに身体の奥がじんと重く疼き、昨夜の出来事を思い出させる。洗面台の前で鏡を見ると、映っているのが自分とは思えなかった。頬は赤く、唇は少し腫れ、目尻にも赤みが残っている。雨に濡れた花のように、妙に艶やかだった。いちばん困るのは首元だ。耳の下から鎖骨まで赤い痕がびっしりとついていて、隠しようがない。紗寧は下唇を噛み、水道の蛇口をひねった。両手ですくった冷たい水を顔に当てる。顎を伝ってしずくが落ちても、頬の熱は引かなかった。身支度を済ませると、ウォークインクローゼットを長いこと探し、ようやく白いタートルネックのニットを見つけた。襟はちょうど鎖骨まで隠してくれる。鏡の前で痕が見えないことを確かめてから、ゆっくりと階下へ下りた。蒼士はリビングのソファに座り、スマホで何かを見ていた。シャワーを浴びたばかりらしく、額にかかる短い髪のせいで、いつもの冷たく鋭い雰囲気が和らいでいる。どこか穏やかで、気だるげに見えた。足音を聞いて、彼が顔を上げる。目が合った瞬間、紗寧の耳がまた赤くなった。蒼士はわずかに口元を緩め、スマホを置いて彼女へ手を伸ばした。「こっちへ」紗寧は彼をにらみ、そちらへは行かずに食卓へ向かった。だが二歩進んだところで、また脚から力が抜ける。慌てて椅子の背につかまり、心の中で蒼士を散々罵った。蒼士が立ち上がって近づき、
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