「こういう男ってさ」 営業前の更衣室で、沙耶が化粧をしながら言った。私が贈答記録を眺めているのを見ての言葉だった。 「女に花を送る時だけ、妙に見栄を張るのよね。普段はケチでも、花だけは高いやつ」「見栄」「うん。自分がいい男だって、信じたいの。金で買った関係なのに、ロマンチックだと思いたい」 その横で、ひなのが顔を出した。 「でも、自宅に送らない人もいますよ。いつも仕事先っぽい住所にしてる人」「仕事先っぽい住所」 私が訊き返すと、ひなのは頷いた。 「ネイルサロンとか、個人事務所みたいな宛名。でも実際は、本人がそこに受け取りに来てるっぽいの。バレないようにしてるんだと思う」 ひなのは明るく言うけれど、その裏に、見てきた現実の重さがあった。夜の店の女たちは、男の見栄も嘘も、毎晩間近で見ている。誰よりも正確に、隠し事の癖を知っている。 私の中で、何かが噛み合った。 送り先の「見せ方」そのものが、偽装なのだ。 住居に直接送れば住所が残る。 だから別の宛名にする。 けれど、受け取るのは結局その女自身。 追うべきは住所じゃない。 どの名前で、いつ、誰に届くか。 その三つを並べれば、消えたはずの生活圏が、記録の中から浮かび上がる。 私は、贈答記録を時系列で並べ直した。電卓の代わりに、今夜はペンと地図が武器だった。 三崎の来店日。送迎先の変更。住
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