王都の空に、巨大な影がふわりと浮かび上がった。 それは、鳥でも魔物でもない。 純白の車体に、きらびやかな金と銀の装飾が施された、超特大の『魔導馬車』だった。「わあ……! すごいわね、これ!」 私は、ふかふかのビロードのシートに身を沈めながら、窓の外を流れる雲を見て歓声を上げた。 この馬車は、先日帝国から送られてきた『貢ぎ物』の一部だ。 皇帝専用に作られた最高級品らしく、何頭もの透明な魔力馬(ペガサス)に引かれて、空を滑るように飛んでいく。 振動は全くなく、室内は広々としたリビングのように快適だった。 美しいシャンデリアまで下がっているのだから、驚きだ。「帝国って、本当に魔法技術が進んでいるのね。こんな素晴らしい馬車に乗れるなんて、夢みたい!」「ヴェラ様が喜んでくださって、俺も嬉しいです」 私の隣で。 完璧な微笑みを浮かべたアシュが、銀のフォークに刺したマスカットを、私の口元へと運んできた。「さあ、ヴェラ様。あーん、してください」「ん……美味しいわ。とっても甘い」「ええ。ですが、俺にとってはヴェラ様の笑顔の方が一億倍も甘いですよ」 アシュは、私の口元についた果汁を親指でそっと拭い、それを自身の舌でペロリと舐めとった。「も、もう……アシュったら。エヴリンもいるんだから、少しは慎んでよね」 私は顔を赤くして、向かいの席に座っている親友の方をチラリと見た。 せっかくの『女子旅』だ。 私とアシュばかりがイチャイチャしていては、彼女が退屈してしまう。「ねえ、エヴリン。このマスカット、とっても美味しいわよ。あなたも食べる?」 私が声をかけると。「…………ッ!!」 向かいの席で、なぜか窓ガラスに顔面をピタリとくっつけるようにして外を見ていたエヴリンが。 ビクンッ!! と、まるで雷に打たれたように肩を跳ねさせた。「エヴリン?」「い、いいいいえ結構ですぅぅっ!!」 エヴリンは、私の方を一切見ず。 ただひたすらに、窓の外の雲を凝視したまま、裏返った声で叫んだ。「わ、私、今は雲の数を数えるのに忙しいの!! ひとつ、ふたつ、みっつ……ああ、なんて素晴らしい雲なのかしら!!」 彼女は、額から滝のような冷や汗を流し、ガクガクと震える両手で窓枠を強く握りしめていた。「どうしたの? なんだかすごく震えているけれど……もしかして、空
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