王都へ帰還してからの生活は、まさに『完璧』の一言だった。 私たちにあてがわれた屋敷は、王城のすぐ隣という最高の一等地でありながら。 不気味なほどに静かで、外の喧騒など一切聞こえてこない。 毎日、美しいドレスと美味しい食事が用意され、街へ出れば人々が私を神のように崇めて道を譲る。「……平和ね」 私は、広々としたサンルームで、ふかふかのソファーに沈み込みながら呟いた。 あまりにも平和すぎて、少し暇を持て余してしまうほどだ。 三百年生きてきた魔女としては、何か研究や魔法の実験でもしたいところだけれど……。「ヴェラ様」 背後から、ふわりと温かい体温が私を包み込んだ。 アシュが、私の背もたれ越しに身を乗り出し、その長い腕で私の首元をそっと抱きしめてきたのだ。「どうかされましたか? 何か、ご不満でも?」「ううん。ただ、毎日あなたが至れり尽くせりでお世話をしてくれるから、私が何もすることがなくて。少し体が鈍ってしまいそうだなって」 私がクスクスと笑いながら彼の腕に触れると、アシュは私のうなじに顔を埋め、甘く低い声で囁いた。「ヴェラ様は、何もしなくていいのです。ただそこにいて、呼吸をして、俺に向かって微笑んでくだされば……それだけで、俺の宇宙は完璧に満たされるのですから」 彼の熱い唇が、私の耳たぶを甘く噛む。 背筋にゾクッと心地よい悪寒が走り、私は思わず身をよじった。「も、もう……アシュったら。朝から甘えん坊なんだから」「俺は、一秒でも長くヴェラ様に触れていたいのです。あなたの肌の温もりがないと、息が詰まって死んでしまいそうになる」 本当に、この子の愛情は果てしない。 三百歳の魔女である私を、まるでガラス細工かお姫様のように扱い、少しでも離れることを嫌がる。 重い。 間違いなく、普通じゃないくらいに愛が重い。 でも、その重さが、どうしようもなく私の孤独を埋めてくれるのだか
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