その夜、屋敷の外は異様な熱気に包まれていた。 完璧な防音結界のおかげで、音は一切聞こえない。 だが、遮光結界をわずかに透かして見える景色には、無数の赤々とした光が揺らめいていた。 松明の炎だ。 何百という数の人間たちが、暴徒と化して、この屋敷をぐるりと包囲しているのである。 「……やっぱり、人間は魔女が怖いのね」 私はサンルームの窓からその光景を見下ろし、小さく、ひどく落ち込んだため息を漏らした。 王都の民衆たちだ。 きっと、討伐に失敗した教会が、自分たちの手を汚さずに私を排除しようと、民衆の不安を煽って扇動したのだろう。 『あの屋敷にいる魔女が、奇病の原因だ』とでも吹き込んだに違いない。 「三百年生きてきて、こういうことは何度もあったわ。魔女というだけで、忌み嫌われ、恐れられ、石を投げられる」 私は、自分の長い黒髪を指で弄りながら、自嘲気味に笑った。 「ただ、愛する夫と静かに暮らしたかっただけなのに。……普通の夫婦のささやかな幸せすら、世界は許してくれないのかしら」 私の胸の奥に、冷たい鉛のような悲しみが沈んでいく。 ――その時だった。 「ヴェラ様」 背後から、強く、それでいて縋り付くような声が響いた。 振り返るよりも早く、アシュの大きな体が私を背後からきつく抱きしめてきた。 「あ、アシュ……?」 「そんな顔を、しないでください」 私の肩に顔を埋める彼の声は、微かに震えていた。 「ヴェラ様が悲しむと、俺の心臓が張り裂けそうになります。あなたの美しい瞳に、あのような薄汚い光を映さないでください」 アシ
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