退院の手続きを済ませるため、母が入院している病院を出た私は、自分が運び込まれた病院へ戻っていた。 勝手に病院を抜け出すような真似をして、病院側には迷惑をかけてしまった。 それに、奏人先輩にも。 せめて連絡の一つくらいは入れなければと思い、バッグの中からスマホを取り出す。「あ……電源が」 画面は真っ暗だった。 どうやら、いつの間にか充電が切れていたらしい。 私は大きく息を吐き、近くの椅子に腰を下ろし、背もたれに身体を預ける。 ぼんやりと天井を見上げたその瞬間、視界がぐらりと揺れた。「……っ」 急激な眩暈に襲われ、思わず目を閉じて俯く。 昨日から、あまりにもいろんなことがありすぎて身体も心も、もう限界に近かった。「朝霧、大丈夫か」 不意に聞こえた声に、私はゆっくりと顔を上げると目の前には、床に片膝をつき心配そうに私の顔を覗き込んでいる奏人先輩がいた。 「奏人先輩……どうしてここにいるんですか?」「どうしてって、あのまま本当に朝霧を放っておけるわけないだろ。ここで待ってれば、戻ってくると思ったんだよ」 奏人先輩の性格を考えれば、そうするのも当然かもしれない。 昔からこの人は、困っている人間を見て見ぬふりできる人ではなかった。 先輩の話では、私が病室からいなくなったことについても、看護師さんにきちんと説明してくれていたらしい。 また、迷惑をかけてしまった。 そう思うのに、不思議と罪悪感よりも安心感の方が大きかった。 それが少しだけ、怖かった。「ありがとうございます。……もう大丈夫です。退院の手続きをしに戻っただけなので」「退院の手続きって、お前、本当に大丈夫なのか?」 奏人先輩は眉を寄せた。 昨日倒れたばかりで、今もこうしてふらついているのだから当然の反応だった。 鏡を見なくても、自分の顔色がひどいことくらい分かっていた。 私はその顔を見られたくなくて、少しだけ視線を逸らす。「はい。行かないといけないところがあるので」 そう答えると、奏人先輩はしばらく無言で私を見つめていた。 やがて、大きくため息をつく。「……わかった。とりあえず手続きしてくる。朝霧はここで待ってろ」「え、でも――」「今のお前を一人で動かせれないだろ」 それだけ言うと、奏人先輩は私の返事を待たずに歩
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