「あの、すみません。先日そちらに伺った久我千影と申します。お聞きしたいことがあって……野上さんはいらっしゃいますか?」 翌日。 星見の丘へ電話をかけ、受付の職員にそう告げる。 『少々お待ちください』 そう返されてから、しばらく。 やがて保留音が途切れ、受話器の向こうから野上さんではない聞き覚えのある声が響いた。 『……また、あなたですか』 その第一声だけで、歓迎されていないことが嫌というほど伝わってくる。 『何度来られても困るのですが』 電話に出たのは、以前ここを訪れた際にも露骨に迷惑そうな態度を見せ、私を追い返した高坂施設長だった。 やっぱり、簡単には話を聞かせてもらえそうにない。 それでも、ここで引き下がるわけにはいかなかった。 「長居をするつもりはありません。少しだけ、確かめたいことがあるんです」 『その少しが迷惑だと言っているのがわからないんですか?』 冷たい声が返ってくる。 『以前も申し上げたはずです。児童の過去について詮索されても、こちらは何もお答えできません。お引き取りください』 「ですから、私は――」 「どうした?」 不意に背後から声をかけられ、振り返る。 そこに立っていたのは玲司だった。 ついさっきまで少し離れたところで仕事の電話をしていたはずなのに、いつの間にかこちらへ来ていたらしい。 私の様子がおかしいことに気づいたのか、眉間に僅かな皺を寄せている。 「……取り合ってもらえないの」 「貸せ」 「え?」 私が聞き返すより早く、玲司は私の手からスマートフォンを取った。 「ちょっと――」 止める間もなく、そのまま耳へ当てる。 「久我玲司だ」 一瞬、向こうが静まり返った。 『……久我、玲司様?』 先ほどまでの刺々しい声が嘘のように消える。 『これは……大変失礼いたしました』 あまりにも露骨な態度の変化に、私は呆れて玲司を見上げた。 けれど当の本人は、そんなことなど気にも留めていない。 「こっちも忙しい中で時間を作って行くんだ。無駄なやり取りをして、俺の時間まで浪費したくないのだが」 『は、はい。おっしゃる通りでございます』 どう考えても、さっきまで私と話していた人と同一人物とは思えない。 「今から行く。施設長室を空けて待っていろ」 『し
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