All Chapters of 敏腕エロマッサージ師、ワケアリスケベ女が集まるマンションの管理人になる: Chapter 61 - Chapter 70

84 Chapters

リナという少女①

 ――すんげー良心的なホストクラブじゃん。  ――勧めたかいがあったわ。 正直なところ、リナの中に残っているのは楽しかったという感情だけだったりで、どういうことが楽しかったとかそういう記憶はあんまりなかったりする。「ハイッ! ホストの皆さんはとってもジェントルマン、でした!」 流れて来たコメントに対して嘘偽りなくそのままをお返事する。 素敵な人たちだった。  リナに尽くそうっていう気持ちがとっても伝わって来て、リナが楽しいですと言えば本当に嬉しそうに笑ってくれて。 お酒を口にしたことはないけれど、もし酔っぱらってしまったのならあんな風になってしまうのかも知れない。  楽しくて、嬉しくて、頭がぐるぐるずぅっと回っているような感覚だった。 ――それで? 恋ってなんなのか、わかった?「んー……それは、どう、でしょー」 一番の目的である恋については、よくわからないまま。  とっても楽しかったことは事実だし、日本の口説き方を素敵だと思ったこともそう。 けれども、当たり前に恋をしたなんて実感はない。 ――や、サンシャインの人たちは絶対そこまで踏み込まねーから。  ――んなのある? ホストじゃん。  ――でもあそこはちげーから。タウンナイト見てねーの?  ――タウンナイトってあれだっけ? 夜の店紹介雑誌だっけ?「ですねー。リナも事前調査として読みました! ホストクラブ界隈ではかなり良心的で有名なお店だそうです!」 コメント内で喧嘩が起きないように割り込んで言う。 タウンナイトを読むときはとても恥ずかしかったけれど、確かに他で紹介されているお店に比べたら内容が全然違ったのはよく覚えている。「ハマれないのに、ハマっちゃう、でしたか。実際に伺うまではわかりませんでしたが、今は少しわかるような気がします」 感覚的な話になっちゃうけれど。  ここから先はダメだよって、楽しめるラインをしっかり守らせてくれた、と言いますか。  そこを超えたらどうなっちゃうんだろう、なんて考えてしまうと言いますか。「なんて。ママにこれ以上はもうダメだよって言われちゃったので、確かめられませんが」 同時に、少しだけ。  この先と言うものを考えた時、身体の奥が少し震えたような気がした。  それが、何なのかはわからないのだけれど。「あははー。でも、改めて? 
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予測不能、回避不可能

 これで何度目の予測可能、回避不可能か。「いや、えっと、美香、さん?」 「なんでしょうか?」 優菜を部屋へ送って寝かせて、自分の家へと戻って来て。  背中に龍か般若を背負った美香に出迎えられた。「れ、連絡なしにここまで遅くなったのはとても申し訳なく思うと共に、ですね? それでもご飯を用意して待ってくれていたのはとても嬉しく思います、ありがとう」 「とんでもないです。今の私にとってこの時間は幸せの一部ですから」 「うぐっ……」 朝は二人、昼は優菜、そして夜は美香との時間。  今回みたいに優菜がショートの勤務だったりすれば夜も三人の時間になることはあるけれども、基本はそういう形だ。 特に約束だルールだとしているわけではなく自然とこうなったわけで、怒る怒らないの話ではないのだが。  そう言ってしまえば美香は多分がっかりする。何より俺自身そういう言い訳をしたくない、みっともないから。「悪かった。その、ついなんだろうな、優菜とヤりたくなってしまって。美香への連絡とかそういうの、忘れてしまったんだ」 となればもう素直に打ち明けるしかない。  衝動に身を任せてしまった結果なんだから。「……気持ち、良かったですか?」 「え? あ、あぁ。うん。そこまで正直に言うのはなんだか、だけど。気持ちよかったよ」 なんとも意外な質問が来た。  まだどこかむすっとしている様子に変わりはないけれど、少しだけ雰囲気が柔らかくなって。「そう、ですか」 俺の答えを聞いた美香は、小さく息を吐くと一緒に。「なら良かったです」 「へ?」 背負っていた重たいプレッシャーを簡単に消した。「こう言ってしまうのは若干悔しいのですが。私はあなたの女であって恋人でも妻でもありません。大地さんがいつどこで私以外の女を抱こうともそれは何と言いますが、自然のことなんだと思っています」 「自然?」 「もっとも、そう思えるようになったのはここ最近の話ですが。今の私は何と言いますか、あなたが一番快適に、心地よく気持ちよく日々を過ごしてくれることが嬉しいのです。衝動的な欲求の発露、良いじゃありませんか。それは大地さんが我慢しなかったということです」 なんというかそれは。「都合のいい女過ぎないか?」 「む。もちろん連絡を貰えなかったことは怒っていますよ? それに衝動的なモノを私で
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はしたないお願い

「どうぞ、粗茶ですが」 「ありがとうございまス、奥サマ。朝のお忙しイ時間に申し訳、ありませン」 「おくっ!? い、いいいえいえとんでもありませんよっ! ご相談のお邪魔でしょうしすぐ席を外しますので! ごゆっくりお過ごしください!」 呼びに来てくれた時とは打って変わって、奥様の一言でめちゃめちゃ機嫌が良くなったよね、ちょろい。  ここで訂正するのもやぶへびだろう、とりあえず黙っておくとするかね。 さて、改めてエリーさんを部屋に招いた。  管理人としての仕事かもしれないと言えば美香は同席するべきじゃないのだろうが。「イエ、その……よろしければ奥サマにも同席して頂けれバ」 「え? あ、はい。それは、構いませんが……」 ちらりと美香が俺に視線を飛ばしてきて、頷きを返す。 何となくエリーさんからは微妙な目を向けられたがその理由と美香を同席させる理由はなんだろう?  何処となくいやーな予感はするものの、話を聞いてみないことにはわからない。「それで、どのようなご相談でしょうか?」 「エエ、っと、ですネ……」 口ごもるエリーさんは美香の方へと申し訳なさそうな顔をする。 美香に気が引けるって感じだけど、何を申し訳なく思うのか。  そのあたりの事を考えると何となく感じていた嫌な予感は正しかったかとため息をつきたくなるが。「ワタシと、セックスをして頂きたくテ」 「せっ!?」 ……あー。 美香が素っ頓狂な声を耳にしながら、心の中で大きなため息を一つついて。「既に伴侶が居られる方にするお願ではないとはショウチしておりまス。ですガ――」 「ふぅ……ストップ。先に誤解を解いておきましょう。美香とは結婚していません、あえて言うのであれば内縁の妻と言えるかもしれませんがね」 「う……大地さん、ずるい言い方です……」 そりゃ言葉を選んだからね、だから恨みがましい視線はノーサンキューってことで。「ソウ、でしたカ」 こんな気づかいはらしくないけれどエリーさんを見れば少し安堵した様子だ。  同時にそんな反応を見せてくれるあたり、あやふやな関係への理解はあるらしい。  ワンナイトへの慣れにしてもそうだったけど、自分で身体売ってたとも言ってたし妙な心配は要らないか。「それで、セックスをとのことでしたが。わざわざこんな形で仰られるんです、何か理由があるの
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お仕事 前編

 自覚の有無は別にして、男も女も性癖というものを抱えているものだ。  それはその人の送ってきた人生によって培われるというか、自然に発生したり抱えたりするものだから割とどうしようもない。 だが、だ。「んちゅっ♡ じゅ、るぅ♡ れ、れろ♡ はぁ、んっ♡ や、っぱリ♡ とってモ、おじょうずね♡ キスだけで蕩けちゃいそウ♡」 「結構なお手前で、なんて言った方が良いか? こっちの台詞でもあるよ、エリー」 「やん♡ もう、ほんトにあなたは反則ヨ、ダイチさん♡ そんな目で、言わないデ♡」 流石に母親のセックスを、それも父親ではない相手との行為を見せつけられたリナちゃんは、どう性癖を歪ませてしまうことやらと心配はしてしまう。 そんな若干気が入っていないフランクフルトの味がするキスだったからか、エリーは相変わらずの無表情ながらも少し悪戯気に口端を持ち上げて。「それでハ、お礼に♡ こっちの味見も、させて頂戴♡」 「……あぁ、嬉しいよ」 「ふフ♡ そう♡ それで、いいのヨ♡」 丁寧に俺のズボンを降ろし、膝の間に跪いた。「やっぱリ♡ 素敵なおちんぽネ♡ オスの匂いがたまらなイ♡」 既に勃起したイチモツをうっとりと見つめながら、鼻先を近づけ軽く嗅いでくる。  くすぐったいやらなにやらと言った感じではあるが、流石元プロとでも言うべきか、中々に男心をくすぐってくるよ。「エリー」 「はイ♡ それジャ♡ 日本人にナラって……頂きまス♡」 日本人とはまた違う、肉厚な唇が落とされた。  軽いご挨拶のようなキスだと言うのに、ねっとりとしているとでも言うのか、絡みついてくる感じ。「ちゅ♡ ちゅっ♡ は、ぁ……♡ ん、んんぅ♡ おいしい、ワ♡ もっと、飲ませテ♡」 竿の部分を登るようにキスで啄まれた。  同時に尿道を駆け上ろうとしていたガマン汁を絞り出し、亀頭の先で吸い上げられる。 ……上手いな、やっぱ。  慣れているという言葉が一番相応しいだろうが、かなりのテクをお持ちで。「はぁ、ん♡ ダイ、チ♡ あなたのコレ♡ とっても素敵、ヨ♡ ずっと、こうしていたくなっちゃウ♡」 「良いんだぞ? そうしてくれても」 「もウ♡ いぢわる、ね♡ そうじゃ、ないでしょウ♡」 何かを期待している瞳だね。  無表情と口上のギャップがたまらないのはそうで、何を思わずともそ
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お仕事 後編

 演じているという言葉はそのまま正しいだろう。「ん˝ぉ˝っ˝♡ だ、ダイチの♡ やっぱりぃ♡ キ、くぅっ♡ おおき、すぎよッ♡」 「俺からすれば、エリーが感じすぎなんだよっ」 「んぃぃいっ♡ や、だ、ダメッ♡ そんな、さいしょ、からぁっ♡ パンパンッ♡ 強すぎっよぉっ♡ はぉ˝っ♡」 モノの大きさは特別関係ない。  挿入するまでにした愛撫の効果としか言いようがないさ。 依頼はリナちゃんにセックスを見せる、だ。  そしてエリーはエリーの中にあるセックスというものをまさしく今リナちゃんに見せつけている。「すごいっ♡ すごいのぉっ♡ こ、こんなの初めてなのっ♡ やっぱりあなたはっ♡ 素敵なオスッ♡ すてきっ♡ すてきよぉっ♡」 媚びた声に、巧みな腰使い。  イラマチオの時と同じように、意識することなくセックスの呼吸が合ってしまう。  表情を大きく変えないままに、俺の腰の動きに合わせて自分も腰を振る。 要するにエリーという女が今までに積み重ねてきたセックスというものがこれであり、相手を自分にはまらせようとする、お客様相手のセックス。「ったく……さぁっ!」 「んぎっ♡♡♡」 大きなケツを加減して叩く。  そうすれば見事に、いっそ過剰だと思えてしまうほど背筋を張り伸ばして嬌声が上がる。「まーさか俺が客になることがあるとは、思ってなかったよ!」 「あうっ♡ も、もっと♡ 叩いてっ♡ 思いっきり、してぇっ♡ スパンキング、好きなのぉっ♡」 バックで腰を振る俺へと一瞬恨みがましそうな目が向けられた。  その瞳にあった色こそが本当のものだろう。わかってる。 気持ちいいセックスというのなら、あの時のほうがよっぽど気持ち良かったと。「マ、マ……」 ぎゅっと胸元を握るリナちゃんはどう思うかね。  頬を上気させて、興奮で肩を小さく上下させている所を見るに、ショックだけではないことが伺えるが。 まったくもって、無表情に近いエリーから、こんなわかりやすいほどに表情が豊かなリナちゃんがよく生まれたもんだよ。「よ、っと」 「ふ、あぁっ!?」 依頼である以上お仕事セックスに努めなきゃならないけれど、やっぱり見せるってんなら多少なりともリナちゃんが想像していたかもしれない光景を見せてあげようじゃないか。「気取ってんじゃねぇぞ」 「っ♡」 肩を
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出来る限りの自分自身

「ふ、ぅ……」 なんかヤり捨て感を抱いてしまうが、それは置いておいて。「あ、ぅ……あ、あァ……♡」 「……」 ベッドの上で完全にノびてしまっているエリーを呆然と見るだけのリナちゃんを何とかしないとなって。 仕事というか依頼の中にアフターフォローなんてものは無かったけれども、流石に管理人としての自分が放置を許してくれない。「リナちゃん」 「っ……!」 声をかけてみれば、肩を大きく震わせた。  流石に恰好がつかないし、ベトベトで気持ち悪いはそうだが下着くらいは履いておこうか。「全部じゃあないけれど。これもまた、お母さんの一面だよ」 「マ、マの……一面?」 多分、セックスという行為の衝撃よりもエリーの変貌とも言える姿に驚きが抜けない、信じられないのだろうから。「このマンションの管理人、ホストクラブのキャスト……そして、こういう俺。今言っただけでも3枚の仮面を俺は持っている」 「かめん、ですか?」 「エリーならそうだね、キミの母親としての仮面だったり仕事中のものだったり。大人ってのは色々な側面を持っていて、相手によって見せるべき自分の仮面を被る。今のも、セックスを楽しむエリーって仮面の一つで」 「……その仮面全部を一つにしたのが、ママ、デスカ」 賢い女の子だ。  受け入れることはまだ難しいだろうけど、理屈の部分は理解してくれている。「エリーから聞いたよ。娘には隠し事をしないって」 「約束、ですかラ」 「うん。だからこれは隠し事じゃあない、ただ単に見せる機会がなかっただけの姿で……いずれキミが大人になった時、大切だと思った誰かに晒す姿でもある」 「う……」 そうとも、賢いキミはわかっている。  エリーの姿に未来の自分を重ねたんだ。自分もこんな風になってしまうのかもしれないと。「エリーも反射的にかどうかはわからないけど言っていただろう? お互いの醜い部分を曝け出してぶつけ合うって」 「……ハイ」 「それが出来るのはやっぱり大人なんだ。今のキミでもセックスは出来るかもしれない、だけどお互いを認め合って受け止め合うセックスは難しいと思う」 「……」 好奇心は猫をも殺す、じゃあないけれど。「ゆっくり大人になっていい。キミの好奇心や興味があるものに一生懸命になれるところはきっと素敵なことだ。でもその素敵で自分を殺してしまった
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健全なハマり

 世は泰平危ぶまれる事もなし。  エリーとの一件というか、お仕事はあったが生活を見れば穏やかなものが続いていると思う。  残すところは俺自身の進路というか、就職活動をどうしようかと言った部分の問題ではあるが。「――うぅん」 これで職業安定所に来るのは何度目か。  職員さんに顔を覚えられてしまっているのか、何でまた来るの? いい加減仕事決まったでしょ若いんだし。  みたいな顔で見られるようになってしまったよね。「でも、なぁ……働ける気がしないんだよな」 茜ママから後継者云々の話を貰ったからってのも、考えに入れないようにしているつもりだけど、つもりでしかないだろう。 ニート万歳、働きたくないでござるなんて言葉が思い浮かぶ。  出所は知らないけれど、思わずうんうんと共感してしまうよ。「後継者、か」 あるいは、強く惹かれている部分もある。  茜ママやグランズのマスターは尊敬する人たちだ、その人たちの後を任せてもらうなんて光栄でしかない。 ただ、その道を行くとなるのなら明るい世界で手に入れたものを捨てなきゃいけない時が来るかもしれないわけで。「ほんっと、優柔不断な野郎だな、俺は」 美香と優菜、どっちを選ぶ? みたいな話でもあるのだろう。 今の関係ってのが世間に認められるはずもない。  それでも構わないなんて言ってくれるかもしれないが、その言葉に甘えるということはつまり、俺の作る狭い世界で飼い殺しにすると言う事だ。「んなの、責任を取るなんて言葉からはほど遠いしな」 選ばなくちゃいけないと思う。  同じくらい、選ばなくてもいい未来を探したいとも思っているけれど。「ふぅ」 パソコンの電源を落として、立ち上がる。  窓口の人が、求人票持ってこいやみたいな圧を放っているけれど、頑張ってスルーして。「どうする、かな」 職業安定所を後にした。「――改めテ。この間はムチャな依頼に応えてくれテ、ありがとうございまシタ」 「構わないよ、エリー。ビジネス、って言うのは寂しいかもしれないけれど、仕事に違いはないんだから」 帰り道の途中、偶然か待たれていたのか。  恐らく後者だろうマンションの近くで車に乗っていたエリーに連れられて、お高いだろう喫茶店へとやって来た。「ビジネス……えぇ、そうネ。けど、あんなことを頼めるのはアナタしかいなかっ
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夜の仮面

「うえぇっ!? だ、ダイチがあいじんんんっ!?」 「いや、声デカすぎな?」 一瞬マスターや茜ママの顔が過ったのは確かだけど、ぶっちゃけこのテの話を俺以上に貰っているだろうメイに連絡を取って相談してみれば……いや、ここいつものファミレスだからね? 周りの人びっくりしてるからね?「え? いやちょ、え、えぇ?」 「俺自身結構驚いてるからツッコミはしないけどさ。そこまでか?」 もちろん女の人から持ち掛けてくるってのは少ないとは思う。  思うが、現に俺の知り合いでも愛人と言うかヒモというかな立場に収まっている人間はいるわけで。 例えばサンシャインの店長なんかもそうだ。  ホストとしてはそこそこだけど、理解ある女社長のヒモに収まっている。「や……う、ん。まー、わかった。落ち着いて考えりゃ、ダイチにんな話が持ち掛けられねー方がおかしーもんね」 「買い被りだと思うけど」 「んなことねーし」 実のところ俺を愛人にと言い出したのはエリーが初めてなんだけどな。「んで? 話、受けたの?」 「保留させてもらってる。正直、どうしたもんかなって思ってな」 「ふーん……断る前提、ってわけじゃないんだ」 「これでもメイいわくのリハビリってやつのおかげで、多少は相手のことを慮れるようになったつもりでね」 ちょっと冷めたコーヒーに口をつければ、味が落ちたのか苦みが強かった。 エリーにとってどれくらいって部分はいまいちわからないけれど、愛人契約を持ちかけるなんてそれなりに勇気のいることだ。  だから頷くというわけではないけれど、真面目に考えようと思う程度にはまともになれたつもりでいる。「ダイチは、どうしたいの?」 「それ、なんだよな」 かつての自分ならどんな答えを出していたのか、今の俺には正直わからない。 だからこそメイに相談しようと思った面がある。  重ねてメイはきっと愛人にならないかなんて話をバカみたいに貰っているだろうし、少し前の俺を誰よりも知っている人間だから。「……あたしがダイチを飼う、つったら?」 「飼うって」 「あたしの愛人になってよ。なんて言ったらどー思うのさ」 「メイの愛人、ねぇ?」 思っていた話筋と少し逸れた気がするけど、まぁ良い。 メイ、というより命先輩のためになんて言葉で夜の世界に入った俺だ。  その時の気持ちを考える
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水たまり

 いつか橘命として彼の前にいる場面が必ずある。 そんな風には、思ってた。 もしかしたら、そういう機会があって欲しいと願っていたのかもしれないけれど、今は良いとして。「甘えるなら、もっとしっかりした人に甘えた方が、良いと思う」「しっかりした人、ね。それは、どういう?」「それこそ、美香さんとか、かな。きっと八雲君が願うなら、温かい家庭って言うのを築こうとしてくれるよ」 自分で言っておいて、温かい家庭と言うものがよくわかりはしないけれど。「温かい家庭を俺が望んでいるように見えるってことかな」「少なくとも、八雲君は理由がないと動けない人だから」「先輩を押し上げるために夜の世界へ来たように、か……そうだな、そうかも」 納得顔を見せてくれはした。 でも、これは論点をずらしただけに過ぎないことだと彼は気づいているでしょう。 私の中に生まれた、八雲君が知らない誰かの愛人になんかなって欲しくないという感情。 彼が言ったように、私もまだまだ未熟と言う事なんだと思う。 きっと本当ならここで後押しでもしてあげた方が良いんだろうってわかってるのに。 どうしても、彼の幸せは日の当たる場所にあって欲しいと思ってしまうから。「八雲君がどう考えているかは、わからないけれど。夜は、夜の世界は八雲君を手放したくないと思ってる」「……なんとなく、わかるよ。優菜のことといい、今回のエリーのことといい。足を洗いきれなかった俺が悪いんだってことも」「悪い、とは思ってないよ。八雲君は誰かに……ううん、何かに必要とされやすい人だから」「それも、わかる。というか、わからされた、かな? ほんと、どうにも俺は無自覚にそういう位置に行こうとしてるって」 あぁ、だからこそ、なのかもしれない。 反射的に私の愛人にしてしまえば、私が管理できるから、夜に近づけさせなくて済むから。 そんな風に思ったから、口に出てしまったんだと思う。「改めて、だけど」「うん」 少し、胸がうるさい。 お客さんの前では、なんともないようになれたんだけどなぁ……本当に、彼は特別が過ぎるや。「エリー……さんの愛人になるって言うのは、反対だよ」「……それは」「うん。私との約束を守ってくれる……うぅん、守るつもりがあるのなら、愛人にはならないで欲しい」 ここまで言えば、八雲君は目を丸くした。 まだま
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その先

 もう一度考える、と言うよりはだが。「向き合うか、向き合わないか、と言う話なんだろうな」 ファミレスを後にして車の中で思わず苦笑いをしてしまう。 どうにも、根本として俺がどうにかしてやるみたいな驕りがあったと自覚してしまった。「美香や優菜が、何を望んでいるのかも知らずに、よく言うよ、俺ってやつは」 表面的なことは、わかっているさ。 今の関係は歪だ、歪なままで居心地を良くしただけだ。 あるいは、俺に合わせてもらっているだけとも言えるだろう。「優菜はまだしも、美香は、な」 優菜に関してはまだ途上だという面がある。 本格的に夜の世界で生き始めたばかりで、自分なりの世界を作り始めたところ。 要するに考え方が変わる可能性があるわけだ、もちろん俺に対する好意って部分を含めて。 変わる可能性ってやつに寂しさみたいなもんを感じたりする分、未来でも俺を選んでくれるのなら応えたいとは思っているが。「……美香は、違うよな」 良くも悪くも、完成された大人だ。 俺って男を受け入れてくれているように、物事の捉え方が変わるなんて一面はあるにしても、いつまでも宙ぶらりんの関係を続けるのは、彼女を縛ることと同義なんだ。「だからこそ、美香の望みと向き合わなきゃならない」 今の俺ってやつが出来ることなんて知れている。 昼の世界を温かいと思うようになっても、昼で生きようとすることに二の足を踏む俺だ。 責任を取る、取れるなんて状態からはほぼ遠いし、言葉に説得力もない。「結局、振出しに戻る、だけど……俺の道にもう、優菜も美香もいるんだ。なら」 何ができるのか、何をやれるのか。 そんなことを、向き合って話さないとならない。 そう、メイが、先輩が言ったように。「う、うーん……」「なんか想像と違う反応が返って来たんだけど」 気合いを入れて美香にお話がありますと言ってみれば、そりゃあもう複雑かつ曖昧な表情で固まってしまった。 ……え? マジで想像と違うんだけど。 それとも聞き方が悪かったか? 美香は俺に何を望んでいる? なんて直球が過ぎた?「あ、いえ。お話自体は、理解できます」「なら良かった、んだけど」「もちろん、嬉しく思っているのは本当です。何と言いますか、望みを口にして、それが受け入れられたのなら、わかりやすく幸せになれるだろうと言う事も」「だった
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