All Chapters of すべてを失った元令嬢は世界を支配する男の愛を纏う: Chapter 61 - Chapter 70

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61.カミングアウト②

英玲奈side「守るため……?どういうこと?」凱は、この前に私が見た個別の経歴書の画面をパソコンに映し出すと、そこには数多くの人名と色分けされたマークが並んでいた。「赤い『×印』は、事故や南雲の不正によって理不尽に犠牲となった被害者たちのリストだ。そして黒い『×印』は、隠蔽に関与した南雲側の加害者……つまり俺の復讐の対象者を意味している」確かに父と母は×印がしてあったが色は違った。父と陽向は黒で母は赤だった。凱の説明通りなら、父と陽向は加害者で母は被害者になる。「×印の意味は分かったわ。……それなら、私の名前に着いているこの〇印は……?」もう一つの疑問だった私の名前に書かれた何重にも書かれた丸印について尋ねると、凱は切なそうに目を伏せて息を吐きながら静かに口を開いた。「『南雲の次なる犠牲者』という意味だ。俺は、英玲奈が実家でどのような扱いを受け、どう利用されようとしていたか事前にすべて把握していた。これ以上、南雲一族の野望のために都合よく弄ばれる人間を増やしたくない。結婚式のあの場で英玲奈を連れ去ったのは、そうい意味なんだ。ここに書いてある通り、『保護』というのは、文字通り英玲奈を南雲から護るためだ」「
last updateLast Updated : 2026-09-08
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62.二人で迎える朝

英玲奈sideあの後、凱が示してくれた全てのファイルと資料を改めて自分の目で確認し、事故の責任者や隠蔽工作の記録、そして凱の母方の祖父が被害者であったという決定的な証拠。南雲のことを憎みながらも、南雲一族だった私のことも気にかけて助け出しててくれた凱。私の胸の奥に残っていた最後の疑問や不信感は綺麗に消え去った。——そして、翌朝。カーテンの隙間から差し込む柔らかい朝の光を感じて、うっすらと目を開けると、真っ先に視界に飛び込んできたのは、すぐ隣に横たわる凱の素肌だった。薄い毛布から覗く引き締まった肩と胸元、そして全身を包み込む心地よい疲労感。(そうだ……私、昨日の夜、凱と……)昨夜の激しくも甘い記憶が次々と頭に浮かんできて一瞬で顔が熱くなった。いつものクールな姿とは違い、ベッドの上の凱は驚くほどに情熱的だった。撫でまわすように全身を駆け巡る指と繊細な舌遣い。時折、耳元で囁かれる情熱的な言葉、私を求めるような熱っぽい視線……そんな甘い余韻に浸っていると、隣から「んんっ……」という低く掠れた寝ぼけ声が聞こえてきた。(どうしよう……! 今、目があったら恥ずかしすぎてまともに顔が見られない……!)
last updateLast Updated : 2026-09-09
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63.舐めあう傷

英玲奈side凱の意地悪で甘い時間を過ごした後、ベッドから起き上がりリビングで朝食を食べることにした。一緒に暮らし始めて半年が経とうとするのに、朝ゆっくりと一緒に食べるのは初めてだ。「……凱。三十年前の南雲建設の事故のこと……もう少し詳しく教えてくれないかしら?あなたは、おじいさまの死は、自殺ではない……そう言っていたわよね?」私の問いかけに、凱がグラスを持つ手を止めた。凱は少しだけ視線を落とすと、過去を辿るように静かに語り始めた。「……俺の母方の祖父は南雲建設で事業責任者を務めていた。だが現場で崩落事故が起きた際、南雲の経営陣はすべての罪と責任を祖父一人に擦り付けた。そして、事故の後、事故か自殺かも分からない不可解な形で、突然亡くなったんだ」「警察は自殺として処理しようとしたが、祖父は被害者遺族への誠意ある補償と安全管理の不備を訴え、南雲の幹部たちと必死に交渉を続けていた。そんな祖父が、自ら命を絶つはずがない。南雲は真相を闇に葬り去るために不当な圧力をかけたに違いない」「そんな……っ」凱の低く静かな声に、抑えきれない地熱のような怒りが滲む。「それに事故があった現場は、家からも職場からも遠く反対方向で、祖父がその場所に行く
last updateLast Updated : 2026-09-10
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64.新しい使用人

陽向side「陽向様、おはようございます」朝、重い体を起こしてリビングへ向かうと、俺と同い年くらいの見知らぬ男がたたずんでいた。ビシッと皺のない細身のスーツを着こなし、清潔感のあるツーブロックに二重の瞳、結愛が好きそうなアイドル風の男は、物腰が低く洗練された所作で俺に向かって深くおじぎをした。「……誰だ?」寝起きの頭と唐突な状況に戸惑う俺を前に、結愛が男の隣へ歩み寄った。結愛は男と一瞬目を合わせてニコリと笑ってから俺に紹介し始めた。「ああ、陽向には言っていなかったわね。彼は若杉さん。家のことを手伝ってもらうために新しく雇ったの」「……雇った? ヘルパーやベビーシッターなら今までの人だっているだろう。それに……今まではみんな女性だったじゃないか」俺に黙って使用人を雇ったことも、男性と言うこともなんだか面白くない。思わず顔をひそめるが、結愛は、俺の態度が気にくわなかったようで小さく溜め息をついてから一方的に話を進めた。「確かにシッターさんは女性だったけれど、私の専属運転手の加藤だって男性よ? それに今の時代、男か女なんて性別で判断するのはおかしいと思うわ。うちは男の子でしょう? 陸の遊び相手としても、男性の方が体力があって助かるのよ。それに、あなたは仕事で毎日忙しいでしょ?今後、幼
last updateLast Updated : 2026-09-11
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65.孤独な王様

陽向side「副社長……今期のグループ全体の実績報告および新規事業の予実報告会議についてですが、資料についてどのようにいたしましょうか?」「実績報告会議だと……? 例年通りのフォーマットを使用して、数字だけ変えればいいだろう」呆れた声で返す俺に、部下は困惑しながらも去年の資料をタブレットに表示させ、控えめに提言してきた。「はあ……数字はそのように致しますが、内容は大幅な修正が必要かと……。今の南雲には事業始動当初の予算を用意することも難しく、成果となる売り上げもそこまで見込めないかと……費用に対して売上が少なければ、今後の予算獲得が難しくなるかと……」「それなら中身は責任者である事業部長に考えさせればいいだろう。私はグループ全体の先行きを考えることで忙しいんだ。木を見て森を見ず……新規事業の実績という一つの木だけを見て全体を見れませんでした、では話にならないだろう。……とにかく、新規事業の話は個人的にしないでくれ。いいねっ!?」「……ですが事業部長は、二週間前に異動してきたばかりですべて任せるには荷が重いかと……前任者は退職をして頼むわけには行きませんし……」
last updateLast Updated : 2026-09-12
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69.結愛の反撃

結愛side翌朝、誰もいなくなった部屋で小切手をまじまじと見つめる。加藤と私が外出している隙を突き、新しく雇った若杉に加藤の部屋を捜索させて本当に正解だった。(まだあの女への忠誠心が残っているとは感じていたけれど、裏で直接お金まで受け取っていたなんて……。このお金であの女は、今でも加藤を裏で操っているっていうの? 思い通りになんてさせない……絶対させないんだからっ……!)画面に写る小切手の額面は五百万円。会社名の記載はなく、英玲奈個人の口座から発行されたものだ。個人的なやり取りで渡したとしても、五百万円はいくらなんでも額が大きすぎる。だが、実際の事実や渡した理由なんて、私にとってはどうでもよかった。大事なのは、この一枚の紙切れを「世間にどう見せるか」だ。(この小切手は、表面上は個人名だけれど、元を辿れば南雲グループから秘密裏に奪い取ったお金。それを運転手の加藤に渡して裏で買収していた……そう仕立て上げて拡散すれば、世間は一体どんな反応をするかな?)すぐに若杉へ電話をかけ、その小切手の現物をすぐに持って来るよう指示をする。英玲奈がかつて南雲グループにいた頃の社内資料と、この五百万円の小切手。それらを都合よく組み合わせれば、「業務上横領」と「内通工作」のスキャンダルが出来上がる。南雲グループの資金を公私混同で横領し、口止め料や工作資金として運転手
last updateLast Updated : 2026-09-17
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70.迫りくるマスコミ

英玲奈side朝、部屋で出勤の支度をしている時のことだった。スマートフォンが小刻みに震え出し、会社スタッフからの着信を告げる。仕事前のこんな朝早い時間に連絡をよこしてくるなんて珍しい。スタッフの身に何かあったのかと心配になりながら急いで出ると、焦った声が聞こえて来た。「はい、三越です」「……英玲奈さん、あー繋がってよかった。今どこですか?ネットのニュースを見ましたか……!?」「どこって家にいるけれど……ニュースって一体、何のこと……?」「まだ知らないんですね……今すぐ見てください!それと、部屋を出る前にコンシェルジュに確認してエントランスの情報を確認してもらってください!いいですね、絶対、勝手に出てはいけないですからね!!!」あまりの念押しに、見る前から既に嫌な予感しかしない。ネットを開くと、ネットニュース一覧に私の名前が表示されていた。『南雲グループ元幹部・南雲英玲奈氏に巨額の業務上横領疑惑!? 運転手に五百万円の小切手を渡し隠蔽工作!』「なにこれ……っ」記事には、南雲の裏金を不正に横領し、口止め料として運転手に流用したという根拠も何もない滅茶苦茶な内容が書かれている。
last updateLast Updated : 2026-09-18
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