結愛sideオフィスを後にしながら、込み上げてくる快感に笑みが止まらない。平気なふりして強がっているけれど、時折、何かを考えるような顔をして戸惑いは隠し切れていなかった。(ふふふ、今の言葉だけで信じたとは思わないわ。だけど、疑惑が積み重なればあとは勝手に自滅していくだけ……今は、種蒔きの時期よ……収穫は最後まで取っておかないとね)実の父や婚約者に裏切られて人間不信に陥っているあの女に、最も効く毒は「身内と味方の裏切り」だ。嘘と真実を混ぜ合わせた疑念の種さえ植え付けておけば、警戒心が生まれるだろう。その警戒心が二人の関係に溝を生み、関係に亀裂が走る。そうなれば、あとは勝手に修復不可能なまでに堕ちるだけだ。しかし、あの女の動揺を見ても心の中に渦巻く焦燥感と苛立ちは消えてはくれない。そして、よく分かった。私の喜びは陽向といることではなく、あの女が悔しがる姿を見ることだった。さっき「陽向が子育ての息抜きをしておいでと言ってくれた」と言ったことも全部が嘘。元婚約者と私の幸せな姿を見せれば、少しは嫉妬や苛立ちを見せると思って言ったのだ。せっかくあの女から略奪したのに、結婚してみたら陽向は全くと言っていい程『使えない男』だった。結婚前は、次々と案件を立案し大型プロジェクトをいくつも成功させ実績を積んできた陽向だったが、今はパッとしない。それどころか融資の件で何やら父から問題を指摘されたそうで覇気がなく、つねに父の顔色
آخر تحديث : 2026-08-29 اقرأ المزيد