「先生、大丈夫?」「えぇ、なんとか……。フォローありがとうございます、助かりました」 千夏は力なく笑いながら言うと、お茶を一気に飲み干して額の汗を拭った。「もしかして先生、失声症になったことあんの?」「子供の頃に、2ヶ月ほど……」 当時のことがフラッシュバックで蘇り、目頭が熱くなる。「そっか、大変だったね。ちょっと休憩しようよ。警察署出てから全然休めてないし。休憩するのも大事でしょ」 そう言って成也は、千夏の腕を引いて歩き出した。「やっぱ先生は優しくて強い人間だよ。先生の過去に何があったのか詳しく知らないけど、俺だったら失声症になるくらい辛いことがあったら、弁護士になんかなれないよ」「そんな、私は強くなんてありません。さっきだって……」「それ以上自分を卑下するなら、キスするよ?」「もう、何言ってるんですか」 彼らしい冗談に笑うと、成也は振り向き、満足げに頷いた。「うん、先生は笑ってる方が可愛いね」「そういう冗談はよしてください」「冗談じゃなくて本心だよ」 真顔で言う成也に固まり、千夏の頬は見る見るうちに赤くなった。「ですから、そういう冗談はやめてください! あと、手を離してください」「はいはい」 成也はクスクス笑いながら手を離し、1歩下がって千夏の隣を歩く。 ふたりはファミレスにつくと、ドリンクバーとケーキを注文した。「それで、さっきの女の子からどんな話聞いてたの?」「そうですね、末安さんが聞いてない部分は、本田正孝くんは1年生の頃は他の子達にいじめられていた。2年生になって常陰くんと同じクラスになると、彼が本田くんを助けてくれた。2年生の2学期から、本田くんは常陰くんと同じ塾に通い始めた。この3点ですかね。それと、マリちゃんはどうして常陰くんが本田くんを助けたのかは分からないとも言ってましたよ。それと彼女の話を聞く限り、本田くんが溺死したということだけは広まってるみたいです」「言うことを聞かせるために助けたんだよ、くだらない」 千夏の話を聞き終えると、成也は吐き捨てるように言った。いつも飄々としている彼がここまで感情を表に出すのは珍しく、千夏は思わず彼をじっと見る。
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