ガラスケースの隅に、名入れサービスについての説明書きがある。説明書きによれば、イニシャルでもフルネームでもいいらしい。ローマ字、ひらがな、カタカナから選べるそうだ。 説明書きを読み、イニシャルを入れてもらうことに決めたはいいが、肝心のライターが決まらない。名入れできるものだけになってある程度絞りやすくなったが、成也の好みを千夏は知らない。 熟考の末、千夏が選んだのは銀古美の、逆エル字にアラベスクが彫られ、ユリの紋章の飾りがついたライターだ。 店内を見回すと、千夏に話しかけた店員が近くにあるピアス売り場を整頓していた。「すいません、このライターに名入れお願いします」 店員はガラスケースを開けてジッポライターを手に取ると、千夏に見せる。「これで間違いないですか?」「はい、それです」「ではこちらへどうぞ」 レジの隣にある小さな作業場の前に案内され、近くにある丸椅子に座らされる。「彫りたい名前をここに書いてください」 小さなメモ帳とボールペンを渡され、”S,S”と書いて店員に渡す。「側面で大丈夫ですか?」「はい」「すぐに終わりますので、その間よかったらこれを見ててください」 店員はジッポライターのカタログを開き、千夏に手渡した。開いてあったのはギフト用ページで、オイルとセットにプレゼントすることをおすすめしている。 名前を彫っていく音に耳を傾けながら、売り文句を指先でなぞった。(つまり、オイルも買えってことね。でも、オイルもあった方がいいか) 店員の思うつぼだなと思いながらギフトボックスの色を決めていると、音が止む。「こんな感じでいいですか?」 ジッポライターの側面には注文通りの文字が綺麗に彫られている。「はい、ありがとうございます。あの、オイルと一緒に買いたいのですが……」「はい。ギフトボックスは赤、青、白から選べますがどうしますか?」「青でお願いします」「すぐに包みますので店内でお待ちください」 千夏は一生身につけることがないであろうシルバーアクセサリーを眺めながら、ラッピングが終わるのを待つことにした。 こういった店のアクセサリーはいかついデザインが多いと偏見していたが、女性向けの可愛らしいものやシンプルなものがあって、思わず欲しくなってしまうものもあった。 5分もしないうちに店員に呼ばれ、会計を済ませてシルバ
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