白鷺銀行が主催する商業パーティーの会場は、京都でも随一の格式を誇る最高級ホテルのグランドボールルームだった。 天井に輝く巨大なシャンデリア。弦楽四重奏の優雅な生演奏。 会場には政財界の重鎮や名立たる投資家たちが集結している。その中で桐島絵里香と宝生樹は、ひと際華やかな装いでグラスを傾けていた。「素晴らしい夜ね、樹くん。今日の融資審査の通過で、うちの会社の信用は完璧なものになったわ」「ええ。ですが、これはまだ始まりに過ぎません。今夜の最大の目的は、このパーティーの主賓——一条財閥・地方支社のトップとの提携ルートを作ることです。一条の後ろ盾さえ得られれば、僕たちの巨大開発プロジェクトは誰にも止められない」 二人は勝利を確信したように微笑み合い、これから手にするであろう巨万の富と権力に酔いしれた。 その時、会場の入り口付近が俄かにざわめき始めた。 ざわめきは波のように広がり、やがてオーケストラの演奏すらも霞むほどの静寂と、息を呑むような緊張感が空間を支配する。「来たわ。一条財閥の代理責任者、凜様よ」 誰かが囁いた声に絵里香たちも一斉に視線を向けた。 会場に姿を現した凜は、夜の闇を織り込んだような深い黒のロングドレスに身を包み、息を呑むほど研ぎ澄まされたオーラを放っていた。 若き女社長として絶頂にいるはずの絵里香ですら、その圧倒的な格の違いと気品を前にして言葉を失っている。 だが、会場の視線をより強烈に惹きつけていたのは、そんな彼女の隣を微塵の気後れもなく悠然と歩く男——イタリア製の最高級ビスポーク・スーツに身を包み、藍色のネクタイを締めた俺の姿だった。 絵里香は凜の隣を堂々と歩く俺の姿を認めた瞬間、持っていたグラスを取り落としそうになった。「な……っ!? どうして、あいつが……!」 信じられないものを見るように目をひん剥き、次いで、彼女の顔に明らかな侮蔑の色が浮かび上がった。昼間、銀行のエントランスで見た高級車——あの時の歪んだ推測が、彼女の中で確固たる真実へと変わった瞬間だった。 俺たちがフロアの中央へ進み出ると、獲物を見つけたハイエナのように絵里香と樹が足早に近づいてきた。「ちょっと! あなた、こんな神聖な場所で何をしているの!?」 周囲の目を気にしつつも、怒りと優越感を隠しきれない声で絵里香が吐き捨てる。「昼間の高級車を見て
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