ついにXデー当日、十五日の朝を迎えた。 京都の空は、これから降りかかる冷酷な現実を暗示するかのように、分厚い鉛色の雲に覆われている。 一条財閥ペントハウス、緊急対策室。 壁面に並んだ巨大モニターには、今夜の調印式および祝賀パーティの舞台となる超高級ホテルの平面図と、各所に配置された一条の特殊警備部隊の配置状況が青い光で表示されていた。「兄さん、すべての配置が完了しました」 凜がタブレットを操作し、最新のデータをメインモニターへと転送する。 画面に映し出されたのは、黒川商会を中心とした裏社会のネットワークと、政治家・警察幹部へつながる資金ルートの相関図だ。「黒川商会が海外へ逃がそうとしていた隠し資金のルート、および彼らに加担する裏社会の全ネットワークの特定が完了しました」 凜の声には、狩りの総仕上げを目前にした研ぎ澄まされた緊張感が宿っていた。「さらに、彼らに買収された警察上層部や政治家のリストも完全に掌握しています。これらを今夜の午後八時——宝生樹が資金の自動送金プログラムを起動し、絵里香が調印書にサインするのと全く同じ瞬間に、関係各所の監査部門や敵対派閥へ一斉送信する手筈が整いました」 隼人は腕を組み、モニターに映る相関図を冷ややかな瞳で見据えた。「ご苦労だったな。……これで奴らの退路は完全に断たれた」「ええ。彼らをこのまま泳がせれば、ただの詐欺師である宝生樹や絵里香だけでなく、背後にいる黒川龍臣や白鷺銀行の副頭取、さらには癒着している権力者という巨悪まで、すべて一つの網で完全に釣り上げられます」 それは一条の莫大な財力と情報網を極限まで駆動させた、何重にも連なる死の包囲網だった。 物理的な退路の封鎖、電子的な隔離、そして政治的な防波堤の完全破壊。これらが数秒の誤差もなく完璧に連動しなければ、黒川のような裏社会のトップはわずかな隙を突いて逃げおおせてしまう。 わずかな綻びも許されない、極限の頭脳戦の最終局面だ。「……だが、敵も素人ではない」 隼人はモニターから視線を外し、振り返って凜へ告げた。「黒川龍臣が自ら会場へ足を運ぶということは、当然、自身の周囲に最も優秀な『清掃屋』を配置してくるはずだ。いざとなれば、力ずくで血路を開こうとするだろう」「その対策も抜かりはありません」 凜は自信に満ちた笑みを浮かべた。「会場となる
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