妊娠がわかると、青木紗季(あおき さき)は早く白石颯真(しらいし そうま)にこの嬉しい知らせを伝えたかった。けれど、オフィスのドアを開けた途端、颯真に腕の中へ引き寄せられ、深いキスをされた。熱を帯びた手が服の内側へ滑り込み、シャツのボタンも外されていく。紗季は受け止めきれず、慌てて彼の悪戯な手をつかんだ。「颯真、今日はだめ。私……」颯真は片眉を上げ、低く艶めいた声で言いながら、紗季の手を取って自分の腰元へ導いた。「生理?でも、君の顔を見るだけで苦しくなるんだ」紗季の顔は一瞬で赤くなった。颯真の瞳の奥に、抑えきれない欲情が渦巻いていたからだ。紗季は数秒ためらってから、小さな声で言った。「じゃあ、別の方法で……してあげる」そう言うと、紗季は素直に膝をつき、颯真のベルトを外した。颯真は、紗季が懸命に受け入れようとする姿を見つめ、目を細めて低く息を漏らした。すべてを吐き出したあと、颯真はスマホを置き、紗季の唇の端をそっと拭った。その声は満ち足りた愉悦を帯びていた。「なあ、紗季。俺のためなら、何だってできるくらい好き?」紗季は颯真の手を取り、そっと指を絡めた。見上げる瞳には、どうしようもないほどの想いがあふれていた。「うん。颯真のこと、本当に大好き」颯真は笑い、紗季の髪をやさしく撫でた。その眼差しがかすかに揺れる。颯真の胸から響く力強い鼓動を聞いて、紗季はようやく今日ここへ来た目的を思い出した。口を開こうとした瞬間、颯真のスマホがまた鳴った。颯真は画面を一瞥すると、一言だけ残して足早に出ていった。「会議がある。先に帰ってて」紗季はまだ甘い余韻の中にいて、急に冷えた颯真の声に心が追いつかなかった。しばらく呆然としたあと、紗季は立ち上がって帰ろうとした。けれどオフィスを出たところで、颯真が休憩室へ入っていくのが見えた。紗季は吸い寄せられるように足を向けた。後を追った途端、中から低く押し殺したすすり泣きが聞こえてきた。「颯真、紗季に本気になったんじゃないでしょうね?私、見たのよ。あなたたちがベッドで抱き合ってるところ。約束したじゃない。紗季を惚れさせて、最後に惨めに捨てるだけだって。それなのに、どうして何度も抱いたのよ!」たったそれだけの言葉に、紗季は全身を打たれたように立ち尽くした。惚れさ
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