死に戻り令嬢は、初恋を選んだ元婚約者が土下座しても絶対に許さない のすべてのチャプター: チャプター 91 - チャプター 100

116 チャプター

第91話 早速なんだけど、ちょっと五十万貸してくれ

「はぁっ、はぁっ……!」 俺は東京の雑踏を死に物狂いで駆け抜けていた。「待ちなさい!」「待つわけねえだろぉぉぉ!」 四年間、まともに走っていなかった足が悲鳴を上げる。 肺も痛い。脇腹も痛い。  でも捕まるのはもっと嫌だ!!  路地を曲がり、階段を駆け下り、何度も後ろを確認しながら走り続け――。「はぁっ……はぁっ……」 ようやく俺は、薄暗いガード下へ転がり込んだ。壁に背中を預け、その場にへたり込む。「……行ったか?」 そっと顔を出す。警官の姿はない。「た、助かったぁ……」 俺は胸を押さえた。ああちくしょう。全力疾走したから肺が死ぬほど痛い。心臓がばっくばっくしていて、破れそうだ。 ちょっと間すると落ち着いた。 で、そこで急に腹が立ってきた。「ちくしょう……!」 なんなんだ、この扱いは!「俺は選ばれし主人公だぞ!? なんで出所初日から警官に追われて、ガード下に隠れてんだよ!」 おかしい。俺の予定では、  刑務所を出る→前世の知識で投資→爆益→復活(キラキラ)→結月が俺を見直す→諸星が敗北(笑)(笑)  第三の人生、完璧だったはずなのに。 現実は――  出所→絶叫→警察に声かけられて逃走→ガード下(どん底) 「…………」
続きを読む

第93話 本社に突撃する男

 翌朝。俺は、ほとんど眠れないまま目を覚ました。 というより。公園のベンチじゃ、まともに寝られるわけがない。「いてて……腰がぁ……」 身体中が痛い。 腹も減った。 金もない。 だが、そんなことはどうでもいい。「今日は結月に会いに行く!」 そう決めた瞬間、なんだか身体が軽くなった。 結月に会えば全部変わるんだ。 俺の顔を見た瞬間。『陽太さん……! かわいそうに。私が一緒にいますからね。もう大丈夫ですよ』 ってなるに決まってる。 4年も離れていたんだ。長かった。 きっと結月も、俺に会いたくて仕方なかったはずだ。 でも、諸星帝に囲われて連絡もできず、泣く泣くあいつの隣にいた。 「可哀想に……」  結月のことを思うと胸が痛む。俺はひとり頷いた。 「今、助けに行ってやるからな!」   ※   昼前。 俺は諸星グループ本社前に立っていた。「…………」 デカい。 でかすぎる。 首が痛くなるほど見上げても、てっぺんがよく見えない。「なんだよ、このビル……」 前世にはこんな建物なかったぞ。 ガラス張りの超高層ビル。入口には警備員。 スーツ姿の人間が次々と出入りしている。 どう見ても、超一流企業。 「チッ」&n
続きを読む

第94話 追い返される男

「諸星帝、相当焦ってんな」「はぁ……」「俺と結月を会わせたら終わりだもんな」「どういう意味でしょうか」「わかってるくせに」 俺は受付台を軽く叩いた。「いいから結月を呼べ」「できません」「呼べって!」「一条様」 今度は背後から低い声がした。「ん?」 振り返る。 そこにいたのは、黒いスーツを着た警備員が2人。「……なに?」「これ以上、受付業務を妨げる場合は、ご退館いただきます」「妨げてねえよ」「大声を出されています」「出してない」「出されています」「声が通るだけ」「ご退館ください」「は?」 俺は笑った。「いやいやいや。俺、結月に会いに来ただけだから」「お引き取りください」「だから!」 警備員が一歩近づいた。「一条様」「……」「お願いします」 圧がすごい。「…………チッ」 ここで揉めたらまた警察が来る。 さすがに出所二日目で連行されるのはマズい。「分かったよ」 俺は両手を上げた。「今日は帰る」 警備員が無言で出口を指した。「でも」 俺は振り返る。「結月に伝えてくれ。一条陽太が迎えに来たって」「お引き取りください」「絶対喜ぶから!」「お引き取りください」「泣くかもしれないからハンカチ用意しとけって!」「お引き取りください!」「はいはい!」 俺はそのまま外
続きを読む

第95話 あなたのもとに戻るのは二度と嫌です

 そして三日後。ついに、その時が来た。「見つけた……!」 図書館のパソコン画面を見ながら、俺は小さく拳を握った。『白峰財団主催・女性起業家支援フォーラム』 場所は都内の大型ホテル。 登壇者。諸星グループ副社長――諸星結月。「よっしゃあ!」「お静かにお願いします」「……サーセン」 背後から司書に睨まれたので、俺は小声になった。 だが、これで勝ち確定。 今度は諸星グループ本社じゃない。一般客も入れる公開イベント。 これなら帝の手下どもも、俺を入口で追い返すことはできない。「待ってろよ、結月……」 俺は画面に映る結月の写真をそっと指でなぞった。「やっと二人で話せるな。ああ、結月に会えるのが待ち遠しいぜ!」  てなわけでイベント当日。 なけなしの金をはたいて身なりを整え、俺はホテルのロビーに立っていた。「…………」 周囲には、高そうなスーツを着た経営者や投資家、華やかな服装の女性たち。 対する俺は、最低限整えたとはいえヨレヨレのスーツに靴も汚れている。 髪は近くの公園の水道で整えてきた。もちろん整髪料などない。 手ぐしだ! いいんだ。本物の男は中身で勝負する。 むしろ、こんな格好でも溢れ出てしまう俺のオーラに、結月は気づくはずだ。 堂々とした足取りで会場へ入る。 すでに壇上ではフォーラムが始まっていた。『では続きまして、諸星グループ副社長、諸星結月様です』 拍手が起こる。 
続きを読む

第96話 結月の完全拒否

「結月?」「私はあなたのところには戻りません。絶対にです。土下座されても許さないと、以前、そうお伝えしたはずです」 結月の目は、俺が想像していたものとは全然違った。 懐かしさも、愛情も、迷いもない。 ただはっきりと俺を拒絶している目をしていた。「いやいや」 俺は笑った。「帝が見てるからだろ?」「違います」「大丈夫だって。ここにはいねえから」「関係ありません」「怒ってんのか?」「怒っていません」「じゃあ照れてる?」「照れてもいません」「……じゃあなんで?」 結月が、小さく息を吐いた。「一条さん」「うん」「私は今、幸せです」「…………」「夫がいて」 ズキッ。「娘がいて」 ズキズキッ。「仕事もあって」 やめろ。「あなたがいない人生を謳歌して、私はとても幸せです」 胸に巨大な槍をぶっ刺された気分だった。「……そんなわけないだろ」「本当です」「だって俺たち夫婦だったじゃん」「前世ではそういう設定だったのですか?」「そう!」「でも今は違いますよね」「魂は一緒だろ!?」 思わず声が大きくなる。周囲の人間がこちらを見た。「一条さん」 結月の声が低くなった。「あなたは何も変わっていないんですね」「いや、変わったぞ。刑務所でめちゃくちゃ苦労した」「そういう意味ではありません」「じゃあどういう意味だよ」「自分のことしか考え
続きを読む

第97話 運も実力のうち

「ん、これは――?」 頭からゴミをかぶったまま、俺は足元に落ちた一枚の紙を拾い上げた。「宝くじ……?」 くしゃくしゃになった宝くじ券。どうやら誰かが落としたらしい。ゴミに紛れていたので、どうせ当たりではないだろう。「なんだよ。ハズレ券か」 捨てようとしてふと手が止まった。 券の端に、小さく数字が並んでいる。「…………」 そういえば。 さっき通り過ぎた宝くじ売り場に、当選番号が貼り出されていた気がする。 「まさかな」  俺は鼻で笑った。 だが暇だ。 金もない。 失うものもない。 「見るだけ見てやるか」  俺は券を握ったまま、さっき見かけた宝くじ売り場へ戻った。 店頭には。『当選番号はこちら』 という掲示。「えーっと……」 券を見る。 掲示を見る。 券を見る。 掲示を見る→それを無限ループしかけた。「…………」 もう一回。 券。 掲示。「…………ん?」 俺は目をこすった。「いやいやいや」 そんなわけない。 もう一度一桁ずつ確認する。「7……」 一致。「3……」 一致。「1……」 一致。「9……」 一致。 最後まで。 全部。 一致。「…………」 俺は固まった。 指先が震える。「え?」 当選金額の欄を見る。『三等 30,000,000円』「…………」 ゼロを数える。 1、2、3、4,5、6,7……「さん……」 喉が震えた。「三千万……?」 もう一度数えた。「三千万円!?」 声が裏返った。 通行人が振り返る。 「マジかよぉぉぉぉぉぉ!?」  俺は宝くじ売り場の前で飛び跳ねた。「きた!!」 きたきたきた!「きたぁぁぁぁぁ!!」 やっぱりだ。 やっぱり俺は選ばれた男、神だった! 「神様ぁぁぁぁ! 見てたんだな俺のことぉぉぉぉ!」  刑務所4年で借金30億。 結月には拒絶され、警備員には放り出され、なぜかゴミ箱にダイブ。 そのすべてが……この三千万円へ至るための伏線だったのだ。 「なるほど……!」  俺は震えながら宝くじ券を胸に抱いた。「人生、帳尻合わせてきやがった……!」 さすが俺。 最後にちゃんと神が手を差し伸べる。 「フッ……」  俺は笑った。しかし―― 「……待てよ」  冷静になった。 この宝くじは俺のじゃない。拾
続きを読む

第100話 悪魔女・志田成美再来

「よし」 俺はカメラの位置を微調整した。 角度は少し下から。その方が顔がシャープに見える。「完璧」 照明もOK。 マイクもOK。 背景には、さっき買ってきた高級そうに見える壁紙。 どう見ても成功者の部屋だ。実際はホテルだけど。「じゃあ……始めるか」 俺は配信開始ボタンを押した。 ポチッ。『LIVE』 視聴者0人。 まあ最初だからな。 それからしばらくして――1人。「おっ」 来た! 幸運な第1号。 さらに、2人、3人。「フッ……」 俺は少し顎を上げた。「どうも。一条陽太です」 渋めの声。 いい。 かなりいい!「今日は記念すべき第1回配信ということで、人生で成功するために必要なものについて話そうと思います」 視聴者4人。 おっしゃどんどん増えろ~ィ!「まず1つ目」 俺は人差し指を立てた。「自分を信じること」 コメントが流れた。『誰?』 俺のこと知らないで配信見てんのかぁぁ? って言いたいが、貴重なひとりだ。 そのコメントを無視することにしたが、誰も他に書き込まないから、『誰?』ってのがずっと残っててクソがって思う。 しまった。サクラ雇えばよかった! しかし始めてしまった者は仕方ない。このまま行こう。「世の中にはですね、自分には才能がないとか、金がないとか、人脈がないとか言い訳する人間が多いんですよ」『あなた誰ですか?
続きを読む
前へ
1
...
789101112
コードをスキャンしてアプリで読む
DMCA.com Protection Status