All Chapters of 死に戻り令嬢は、初恋を選んだ元婚約者が土下座しても絶対に許さない: Chapter 21 - Chapter 30

47 Chapters

第21話 仕掛けていたのは……

「……もしもし、諸星代表」 エレベーターの冷たい壁に背を預け、私は震える指先で通話ボタンを押した。 画面の向こうからは、激しい市場の喧騒とはあまりにもかけ離れた、静かで、優雅に紅茶をすするような音が聞こえてくる。『結月、今朝の威勢はどうした』「……申しわけございません」『チャートを見ているのか?』 帝の声は驚くほど冷静だった。まるで、この天文学的な大暴騰を最初から予期していたかのように思える。本来、あれだけの損失が出ていたら、怒声を浴びせられるだろうと思っていた。「今回の空売りは、完全に私の見通しが甘かったのです。フルクラ電機の買い圧力が異常です。謎の海外ヘッジファンドが、市場の売りをすべて飲み込んで買い上げていますわ。このままでは数十分でロスカットに――」『あれを動かしているのは俺だ』「……え?」 一瞬、思考が真っ白に染まった。 受話器から流れる帝の低く艶やかな声が、私の鼓膜を冷酷に揺らす。『言っただろう。失敗したら君をもらう、と。……自立を急ぐあまり、俺の腕からすり抜けていこうとする気高き女王様を、どうすればこちらを振り向かせられるかと考えたくてな。少しだけ、市場の風向きを俺好みに変えさせてもらった』「そんな……っ、あなたが仕掛けたというのですか……!?」 背筋にぞっとするような戦慄が走った。 陽太をハメるための罠どころではない。私は最初から、この諸星帝という絶対的な捕食者の網の中で、踊らされていただけだったのだ。  前世のデータですら太刀打ちできない、世界の資本を牛耳る男の圧倒的な暴力――『助けて欲しかったら、俺を頼れ』  卑怯な男の言いなりになるなんて。詰めが甘かったわ……。『早くしないと破産が待ってるぞ?』「意地悪なさらないでください」『そうだな、その可愛い唇で俺にキスのひとつでもしてくれるなら、今すぐあの買い玉をすべて決済して、市場を大暴落(ガラ)に導こうじゃないか。君が仕掛けた空売りの大勝利、という形にしてね』「っ……!」 屈辱に唇を噛み締める。 けれど、エレベーターの表示階数は刻一刻と上がっていく。あと数分で実父の待つ社長室に着いてしまう。  父に「預かったファンドを運営し、早速数億の赤字を出しました」などと報告することになれば、もしかしたら一条陽太と結婚させられてしまうかもしれない。  私の独立の夢は永久
Read more

第22話 深く溺れるようなキス

 私は悔しさに奥歯を噛み締め、じっとその漆黒の双眸を睨みつけた。 「卑怯な男……っ」「なんとでも言えばいい。俺は欲しいものを手に入れるためなら、世界中の資本を敵に回すことも厭わない。すべて蹴散らすからな」  帝は薄く冷徹な笑みを浮かべ、顎をすくい上げていた指先にわずかながら力を込めた。  そのまま有無を言わせぬ強引さで私の身体を引き寄せ、自らの広い胸板へと押し包む。衣服越しでも伝わる、硬く、圧倒的な男の体温。廊下の冷たい空気など一瞬で吹き飛ばすほどの熱が、私を絡め取っていく。 「早くしないと、白峰ファンドが終わるぞ? あと数分持つかどうかだ」  耳元で囁かれる低く掠れた声。そのあまりの至近距離に、私の心臓は警報のように激しくトクン、トクンと跳ね上がった。  悔しい。利用されるだけの前世から抜け出すために、自分の力で立つと決めたのに。世界の覇者であるこの男の掌(てのひら)から、私は一歩も外へ出ていなかったなんて。  けれど、これはただの絶望ではない。 私を支配しようとするその漆黒の瞳の奥に、執着と、それ以上に私を焦がすような狂おしいほどの甘い情熱が揺れているのが見えてしまった。「……わかりましたわ、諸星代表」  私は諦めたように、ゆっくりと瞳を閉じた。 プライドを捨て、彼の仕立てのいい黒スーツの襟元にそっと指先をかける。 覚悟を決め、背伸びをして、その冷徹で美しい唇に、自らそっと触れさせた。 ちゅ、と静かな音が、静寂に包まれた高級廊下に響く。 ほんの一瞬、取引のためのキスのつもりだった。 しかし、私が唇を離そうとしたその瞬間、帝の腕に猛烈な力がこもり、私の腰を強引に抱きすくめた。「ん……っ!?」  驚きに目を見開く間もなく、今度は帝の方から、逃がさないと言わんばかりの深く激しい口づけが降ってきた。 触れるだけの甘い接吻から、一転して私のすべてを奪い去るような熱烈な愛撫。 彼の舌が滑り込んできた瞬間、頭の芯がぐにゃりと溶け、思考が完全に麻痺していく。マスカットジュースの甘い残り香が、帝の容赦ない吐息に混じって私の脳を急激に惑わせた。「んぅ……っ、ん……!」 身体が熱い。悔しいはずなのに、強引で、けれど不思議なほど優しく私を壊れ物のように扱う彼の腕の中で、私の身体からみるみる力が抜けていく。心臓の音が廊下に響いてしまうのではないかと思うほど
Read more

第24話 帝からの挑戦状

  おっといけねえ、最高のイケメンが、鼻血とは恰好がつかねえぞ。   「よし、結月に会いに行こう。あの女が誰のものか、ちゃんとわからせてやらないとな」    俺はすぐさまマンションを飛び出し、ザギンへと向かった。 高級ブランドのVIPルームにふんぞり返り、言われるがままに数百万円の最高級オーダーメイドスーツに身を包む。鏡を見ると、そこには泥水を浴びてボロ雑巾のようだった俺ではなく、誰もが見惚れる完璧な超絶イケメンの御曹司が立っていた。  「フッ、モテる男ってのは罪だぜ……」    もう今から女が言い寄って来そうなほどだ。  金持ち、イケメンと聞けば、女なら誰でも尻尾振ってついてくる。俺の結月もそうなるだろう。  さらに宝石店で最高級のダイヤの指輪を買い、花屋で抱えきれないほどの真っ赤な薔薇の花束を受け取る。さっき用意した(今はレンタルだがそのうちちゃんと買うぞ)高級外車の助手席にそれらを積み込み、運転席に深く腰掛けた。  これで準備は1000%完璧だ!  さあ、今から結月のところへ行って、このスマートな指輪を嵌めて盛大にプロポーズしてやろう。  さっきの妄想が蘇る。その続きも。 『君のことが最初から気になっていたんだ。俺と一緒になろう』 『嬉しい、陽太さん……すきっ♡』
Read more

第25話 捕まる男

   「ふざけるな……ふざけるなよ諸星帝ぉぉおおおおおおおっっっっ!!!!」    俺は高級車のハンドルを狂ったように殴りつけ、スマートフォンをフロントガラスに叩きつけそうになりながら絶叫した。――が、この車は親父名義ですらない、さっき見栄を張るためだけにザギンの高級レンタカー屋で借りたばかりの超高額な外車(真っ赤なポルポル)だ。傷をつけたら一発で数百万の弁償になることを、俺の脳みそは一瞬で計算し、スマホを投げるのだけは全力で堪えた。  俺のこういう冷静なところ、マジで経営の才能があると思う。  それにしても許せない。  せっかく最高級のオーダーメイドスーツを着て、ダイヤの指輪も薔薇の花束も用意して、絶頂の天才投資家として結月を優雅に迎えに行くはずだったんだ。  それなのに。俺の大好きな、前世では俺の奴隷だった結月が、他の男の腕の中で蕩けそうになっている。そんなおぞましい現実を、当のバケモノ(諸星帝)から直々に、東京ドームいじりのクソマウントメールで送りつけられたんだぞ!?  俺のガラスのようなハートとプライドはズタズタだ。  狂気的な独占欲が限界突破して、頭の血管が全部ブチ切れそうだった。 「許さねえ……絶対に許さねえぞ諸星帝……っ!」  悔しさにギリギリと奥歯を噛みしめるが、痛いのですぐやめた。 
Read more

第27話 王者に捕らえられた女王

「ふぅ……」 白峰ホテルの正面ロータリー。父から完全に自立し、自分の足で一歩を踏み出した高揚感に浸っていたその時、私の前に一台の漆黒の最高級リムジンが滑り込んできた。 目の前で開けられた後部座席の扉。その奥の仄暗い空間に鎮座していたのは、完璧な三つ揃えの黒スーツを纏った、諸星帝その人だった。 「乗れ、結月」  低く、逆らうことを許さない絶対的な声音。私は一瞬躊躇ったけれど、彼が文字通り私の命の恩人(ファンドの盾)である以上、無視することなどできるはずもない。「……お迎え恐れ入ります、諸星代表」 静かにシートへ腰を下ろした瞬間、バタン、と重厚なドアが閉まり、車内は完全な密室となった。冷房の効いた空間に、帝が愛用している微かなシダーウッドの香りが満ちていて、それだけで今朝のあの濃厚なキスの記憶が脳裏に蘇り、耳の裏がカッと熱くなる。「父親との『取引』は終わったようだな。白峰の看板を捨てて、清々したか?」 帝は長い足を組み、愉しげに片方の眉を上げた。すべてを見透かしているようなその漆黒の双眸が、私の唇をねっとりと這うように見つめてくる。 「おかげさまで。これからは一人の投資家として、あなたの資産を増やすためにこの頭脳を捧げますわ」「ビジネスの話はもういい」  私が一線を引こうとした瞬間、帝の手が伸びてきた。私の細い手首を強引に掴むと、そのまま抗う隙も与えず、引き寄せる。「あっ……!」 気がつけば、私は帝の固く逞しい膝の上に横抱きにされ、彼の広い胸板に完全に閉じ込められていた。衣服越しに伝わる圧倒的な男の体温。 「諸星代表、車内ですわ……っ、離してください!」「嫌だと言ったら?」  帝はフッと低く笑い、自由になったもう片方の手で、私の髪を愛おしげに梳きながら、その長い指先で私の顎を再びゆっくりとすくい上げた。至近距離で見つめ合う。彼の瞳の奥にあるのは、冷酷な支配欲だけではない。私を丸ごと溶かして喰らい尽くしてしまいそうな、狂おしいほどの甘い独占欲だ。 「さっきの廊下でのキス、ビジネスの代償にしては随分と熱かったな、結月。……本当は、君も俺に狂わされていたんじゃないのか?」「それは……っ」 否定しようとした唇が、言葉を紡ぐ前に塞がれた。「んぅ……っ!?」 今朝よりもさらに深く、強引に 貪るような接吻。私の驚きの吐息ごと吸い上げるように、
Read more

第28話 車内でのキスは激しくて

 「ん、……ふぁ……っ、ん……」  どれほど深く、激しく貪り合っていただろう。 車内の冷房がまるで機能していないかのように、帝に触れられている肌からドロドロとした熱が溢れ、脳の芯を焼き尽くしていく。 ようやく唇が離されたとき、私を横抱きにする帝の端正な顔には、勝利を確信したような、ひどく艶艶しい微笑が浮かんでいた。 「随分と可愛い声を出すようになったじゃないか、結月。今朝、朝食のテーブルで俺の顔を冷たく見据えていた女王様と同一人物とは、到底思えないな」 「っ……からかわないで、ください……」  私は赤くなった顔を隠すように、彼の黒スーツの胸板に額を押し付けた。 悔しい。実父を論破して自由を手に入れたはずなのに、この男の腕の中にいると、自分がただの「無力な女」に戻ってしまう。 ドクドクと不規則に跳ね上がる心臓の音が、衣服越しに彼に伝わっているかと思うと、恥ずかしさでどうにかなりそうだった。 だが、帝の手は止まらない。 私の腰を抱きすくめたまま、もう片方の長い指先が、私のブラウスの第一ボタンへとゆっくりと伸びていく。 「な、何を……」「ビジネスの話は終わりだと言ったはずだ。白峰のファンドであれだけの爆益を出したんだ、投資家としての君の『頭脳』の価値は十分に証明された」  帝は低く掠れた声で囁きながら、ボタンを一つ静かに外した。 隙間から滑り
Read more

第29話 プライベートホテルにて

  キスに翻弄され、気がつけば、私は帝のプライベートホテルのスイートルームに連れ込まれていた。今、背中に当たっているのは、巨大なキングサイズベッドの柔らかなシーツ。 重厚な静寂に包まれた部屋。 乱れた白ブラウスの間から覗く鎖骨に、帝の熱い吐息が吹きかかる。彼が私の両手首を頭上で片手で軽々と押さえ込み、有無を言わせぬ体勢で覆い被さってきた。 「諸星、代表……っ、まだ、ビジネスの話は終わっていませんわ……!」「往きが悪いな。君の身体は、もうとっくに俺のものだと認めているというのに」  帝は低く愉しげに笑い、私の首筋へとその美しい唇を寄せた。 ちゅ、と吸い上げるような甘い音とともに、柔らかな皮膚に刻まれる鮮烈な熱。そのあまりの淫らな刺激に、私の背中にゾクゾクとした電流が走り、つま先までがピンと強張る。 「んぅ……っ、ん、は……」  ダメ、頭の芯が甘い霧に包まれたように蕩けていく。  このままでは、ただ彼に喰らい尽くされるだけの獲物になってしまう。  前世の地獄から這い出て、この世界で頂点に立つと誓ったのに、この男の支配欲に完全に屈服してしまうなんて、私のプライドが絶対に許さない。  残された最後の理性を振り絞り、押さえつけられた手首の隙間から、帝のネクタイをぐい、と引っ張った。 至近距離で、その漆黒の双眸をまっすぐに見つめ返す。 「卑怯者。今朝のことは、私の負けでいいですわ。……けれど今度は私が、あなたのその余裕な仮面を市場(マーケット)で
Read more

第30話 結月のプライド

 「いい加減降参したらどうだ?」 帝の憎たらしい声が聞こえる。このまま流されて、この男のコマになって、また、今世を生きるの?   冗談じゃないわ!!   抵抗をしなくなった私を、帝が見据える。 「許しを請う気になったか、結月」「誰が」  キッと彼を睨みつけた。「私の体が欲しかったら、好きなだけ抱けばいいですわ。でも、それは賭けに負けたから。約束は約束です。それを反故するようなことはしません」「それで?」「私の心は私のものです。誰にも屈しませんわ。お好きにどうぞ」 言い放った私の言葉に、帝の動きが完全に止まった。 重苦しい静寂が部屋を支配する。怒らせただろうか――そう思った次の瞬間、帝の端正な口元が、ゾクッとするほど獰猛に歪んだ。 「お好きにどうぞ、だと? ……どこまで傲慢で、どこまで愛おしい女王様だ」  帝の漆黒の瞳が、溢れる独占欲でドロリと濁る。彼は私の両手首をさらに強い力でベッドに縫い付けると、至近距離で低く、掠れた声で囁いた。「いいだろう。君の心が誰にも屈しないというのなら、その澄んだ瞳が涙で曇り、プライドをかなぐり捨てて俺の愛を懇願するまで、身体の奥深くまで分からせてやる」「な、んぅっ……!?」 再び降ってきたのは、これまでの比ではないほどに激しく、深く、すべてを強奪するよう
Read more
PREV
12345
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status