『いるなら入るぞ』 鍵がかかっていたはずのドアが、静かに、けれど逃げ場を塞ぐような圧迫感を伴って開く。 オートロックのカードキーを当たり前のように手挟み、部屋の中へと歩み寄ってきたのは――洗礼された美を纏った男、諸星帝。 いつもの冷徹な美貌。けれど、その底知れぬ双眸の奥には、獰猛な「独占欲」が渦巻いているように見える。 「な、なぜここが……それに、どうして鍵を……っ」「ホテルの支配人に頼めば朝飯前だ。君の居場所を把握するのに、三分もいらない」 帝は逃げようとする私の腕を強固な力で掴み上げると、そのままベッドの上へと押し倒した。 至近距離で、彼の熱く掠れた吐息が私の頬を掠める。逃げ出す隙すら与えられない。「ずいぶんと無様な顔をしているな。どうした? 見た所、あのゴキブリに圧力をかけられているみたいだな」「っ……離してください! 諸星代表!」「帝と呼べと言ったはずだ」 掴まれた手首にギュッと力がこもり、背中がゾクゾクと震える。 帝は上から私を見下ろし、嘲笑うような、けれどどこか狂気を孕んだ低音で囁いた。「俺に偉そうに喧嘩を売っておきながら、随分と底の浅い知略だな。白峰ホールディングスはまもなく破産だと聞いたが? 君の手元の口座も差し押さえられた。あのゴミ虫に、足元からすべてを剥ぎ取られた気分はどうだ?」
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