All Chapters of 冷徹社長の甘い罠〜執着溺愛が始まった: Chapter 31 - Chapter 38

38 Chapters

第31話

それに、匡介が口にした「社長秘書」とは、もちろん莉奈のことではなく、遠回しに澪のことを言っている。莉奈の仕事ぶりが酷いことは誰もが知っており、黒崎グループとの重要なプロジェクトを任せたりするはずがなかった。しかし、澪が匡介との昔話を避けたがっていることを見抜いた彼は、あえて話をすり替えたのだ。匡介のやり方を熟知している澪からすれば、そのプロジェクトを秘書室の誰かに任せるのではなく、最も信頼している、かつ損な役回りとなる誠に押し付けることは明らかだった。澪は少々苛立ちながら、何とか気持ちを落ち着けて言った。「まさか、そんなに社員思いの方だったとは、存じ上げませんでした。では、柊社長、私はどこで仕事をすればよろしいですか?」明らかに不満そうでいながら、妥協せざるを得ない澪の様子を見て、匡介は面白くなった。彼は澪が以前使っていたデスクを指差す。「あそこはどうだ?社長室から一番近いから、連絡を取りやすい」澪は眉をひそめた。なんだか腹がたつ。3年かけてやっと離れたはずのその席へ、自分はまた戻らなければならないのか?躊躇う澪を見て、匡介は眉をくいっと上げ、冗談っぽく続ける。「もし篠原さんが、あそこでも遠すぎると感じるなら、俺のデスクを半分貸してもいいけどな」それを聞いた瞬間、澪だけでなく、周りで聞き耳を立てていた人々の瞳も驚きで見開かれた。自分たちはここから離れるべきでは……?しかし、社長が立っている以上、先に腰を下ろすわけにもいかない。彼らは興味津々の顔で、事の成り行きを固唾を飲んで見守る。匡介ならやりかねないと感じた澪は、すぐに自分の荷物を例のデスクに放り投げ、悔しさを滲ませながら言った。「お気遣いありがとうございます。こちらの席で十分ですので」それを見て、匡介の口角が少し上がった。澪はもう以前の、言いなりでひたむきな社長秘書ではない。感情を隠さず、こうして逆らってくる彼女の変化が、今の匡介には新鮮だった。目的を達成した匡介は上機嫌で、まだ周りで固まっている社員たちに目をやった。「全員、自分の持ち場へ戻れ。今月はよくやった。今のところ、最も重要なのは黒崎グループとの提携だから、他の案件は少し優先度を下げても構わない。期限については追って杉本経由で伝えるから、進捗管理はあいつに連絡しろ」要するに、面倒事を
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第32話

澪は、匡介のふざけた態度に腹が立ち、一瞬固まった。だが、さっき莉奈が言った言葉を思い出し、少し複雑な気持ちになる。匡介と完全に縁を切ろうと決めてから、周りの誰もが彼は自分に気があるのだ、と言ってくるようになり、今では、本人でさえ、それを隠さなくなった。加えて、かつて自分を苦しめていたことの真相も、一つずつ明らかになりつつある。いくつかのことについては、本当に自分が匡介のことを誤解していたのかもしれない……しかし澪は頭を振り、匡介のことを頭から追い出すと仕事に没頭した。匡介が社長室へ入っていった後、ずっと我慢していた秘書室の面々が小声で話しながら集まってきた。「なんか澪さん、1ヶ月ぶりに戻ってきてから、完全に人が変わったみたいじゃないですか?」「私も思ってました。柊グループから離れてから、すごく強気になった感じがします」「ってことは……結局二人は喧嘩したんですか?それとも別れたとか?いや、もうヨリを戻したとかですか?」その問いかけに、秘書室の皆が静まり返る。なぜならこの問題は、考えても誰にもわからないことだったから。澪が不在だったこの2週間、匡介の残業は増えたのに、仕事の能率はかえって落ちていた。毎晩遅くまで残っていても、仕事はちっとも終わらない。それに家へ帰っても、癒やしてくれる存在はもうおらず、匡介は苛立ちが募り、もう壊れそうだったのだ。そうでなければ、あんな強引な競合潰しもしなかった。その後、武司が開いた食事会で澪と再会してからは、彼女の近況を知ることができ、匡介の苛立ちも少しは収まった。だがそれ以来、仕事中はずっと集中していたはずの匡介だったが、ふとした瞬間にぼーっとして、澪のことを考えるようになったのだった。どうすれば彼女に許してもらえるだろう?どうすれば、もう一度そばに来てもらえるのか?しかし、いくら考えても答えは出なかった。匡介の苛立ちはますます募り、情緒も不安定になっていた。そんな匡介に柊グループの役員たちはいつも怯えていた。そして現在、澪自らが舞い戻り、匡介にとってこれとないチャンスが訪れた。そんなわけで、今日の匡介はとても機嫌がいい。午前中だけで、先月の3倍もの仕事をこなした。溜まっていた業務を午前中だけで片付け、優雅に昼食をとっていた匡介は、誠が持ってきた黒崎グル
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第33話

誠は、自分の耳を疑った。たった2週間前までなら、資料に表記ミスが3か所もあれば、匡介に死ぬほど叱責されていたのに。ましてや彼自身が間違いを修正してくれた?誠が修正のためにプロジェクトの提案書を受け取ろうとすると、匡介はデスクを指先で叩きながら言葉を足した。「そうだ、利益率の項目も直しておけ。黒崎グループへの利益配分を10%引き上げろ」今度こそ幻聴ではないかと、本気で耳を疑った。誠はもう一度繰り返す。「利益配分を10%……?」あの匡介の口からこんな提案が出るだけでも信じられないのに、10%も譲ると言ったのか?だが……相手側の担当が澪だと考えると、急に腑に落ちた気がした。なるほど、うちの社長はやはり恋愛のことしか頭にないらしい。しかし、自分が言ったことなど当たり前だと思っている匡介は、驚いている誠にむしろ嫌悪感を抱いた。「ああ、配分を変える。お前が作成したまま提出したら、黒崎グループの利益を絞りすぎだ。そんなことをしたら、篠原に何を言われるか分からないだろ?」誠は言葉に詰まった。しかし、匡介が先月まで相手の利益を削り取るべく、容赦のない交渉を繰り返していたことを言い出す勇気はなかった。誠は頷くと、他に修正がないかを確認し、資料を手にデスクへと戻った。匡介は秘書室の入り口に目をやり、少しの間ぼんやりと空想に耽っていた。実を言えば、澪が怒る以上に、こうして強硬な手段を取ることで武司に睨まれるのを恐れていたのだ。未来の義父の評価はすでにどん底に落ちている。利益でも譲歩しなければ、この先、黒崎家の敷居をまたぐことすら叶わなくなるだろう。匡介は、こう見えて状況をよく見極める現実的な男だった。午後3時、匡介は修正した提案書を持って、自ら澪のデスクへと向かった。「柊グループの方で検討した修正版の提案書だ。他に直すべき点はないか、確認してくれ」澪は忙しい手を止め、匡介に一瞥を投げた。ただ仕事の打ち合わせに来ただけだと察し、契約書に目を通し始める。匡介は急ぐこともなく、隣から椅子を引き寄せて、静かに彼女が終わるのを待った。澪は資料を眺め、匡介はそんな彼女を見つめている。うつむく澪の横顔はため息が出るほど美しく、白く滑らかな首筋はとても艶めかしい。匡介は、久しく会わなかった澪の姿を、まるで目に焼き付ける
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第34話

澪はもちろん、匡介が口にしたのは、武司が自分の代わりに肩代わりした1億2000万円の違約金のことだと、分かっていた。だが、この男は今さっき、誰のことを未来の義父と言った?!澪は嫌悪の表情を隠さない。「柊社長、何をおっしゃっているのか理解できません」匡介は澪が知らぬ存ぜぬを通そうとしても気にした様子はなかった。「澪、俺が事前の準備なしに動くような男じゃないのは知っているだろ?だから、まずは黒崎グループに恩を売ることで、俺の誠意を示しておきたいんだ。お前もそう思わないか?それに、このことだけじゃない。もしお前の欲しいものがあれば何でも言ってくれ」匡介の熱っぽい視線が肌に突き刺さり、澪は少し息苦しさを覚えた。澪は視線を逸らす。「申し訳ありませんが、何を言っているのか分かりかねますので」その逃げ腰な態度が気に障ったのか、匡介は上半身を起こして長い腕を伸ばすと、彼女が座るキャスター付きチェアを自分の方へと引き寄せた。そして、蹴られないよう、澪の足を両膝でしっかりと固定する。いらっとした澪は腕で彼を突き飛ばそうとしたが、その手首も捕まえられ、そのまま彼の大きな手で握り込まれた。二度目の接触に、心臓が跳ね上がり、全身の産毛が逆立つほどの戦慄が走る。「匡介さん!離してください!本当、何してるんですか?!」匡介はそれ以上の行為には及ばないが、澪を放そうともしない。匡介は小さく溜息をついた。「澪、それでいいんだ。無理強いはしない。けど、俺を赤の他人扱いするな。二人の間に何もなかったようなふりもするなよ。なあ、俺たちにもう一度、チャンスをくれないか?」言い終えると、匡介は足の固定を解き、未練をにじませながらもそっと彼女の手を離した。拘束が解けた途端、澪はすぐに彼との距離をとった。チャンス?実を言えば、この柊グループへの派遣を受け入れた時点で、とっくにチャンスなど与えているのだ。口元を結んで黙り込む澪を見て、匡介は再び観念したように言葉を紡ぐ。「澪、莉奈のことだけど、あいつの言った通りだから。ごめんな。あいつを近づけてお前を嫉妬させようなんて……当時の俺は、それが一番効果的なやり方だと思っていたんだよ。澪、お前も知ってると思うけど、俺は人を従わせるやり方しか知らない。人を謝らせる方法を思いついても、人に対して頭を下
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第35話

「誠実さこそが、唯一にして最強の武器だ」だから匡介は、当たって砕けろの精神で、抱いていた本心をすべて澪に伝えたのだった。友人のアドバイスが功を奏したのか、長い沈黙の後、澪が呆れたような声で言った。「人に無理やり折れさせようとするくせに、自分がどう折れればいいかも分からないんですか?だったら、あのとき私がどういうふうに折れれば、あなたは気が済んだんですか?」匡介は一拍おいてから、澪に問いかける。「本当に知りたいのか?」澪は小さく頷いた。すると、澪の隙を突いて、匡介は素早く身を寄せると、彼女の赤い唇に触れるか触れないかのキスをした。そしてすぐに身を引く。呆気にとられている澪を見つめ、匡介は無邪気に笑った。「こうして欲しいって俺は思ってた」澪は目を見開き、すぐには状況を飲み込めずにいた。だが同時に、どこか居心地の悪さを覚えながらも、匡介の近さに対して以前ほど強い拒絶感を抱いていない自分に気づいてしまう。かつての出来事のいくつかは、やはり彼に対する誤解だったのかもしれない。頭を抱えた澪はあれこれ考えるのが煩わしくなり、これ以上このことについて追及するのはやめた。そもそも、彼に何を期待すればいいのかさえ、自分でも分からなかったのだから。澪は話題を変えるために、手元にあったプロジェクトの企画書を彼の前に突き出す。「プロジェクトに大きな不満はありませんが、一点だけ修正をお願いできますか?」しかし、匡介は書類などは見もせず、じっと澪の顔を見つめていた。「ああ、何だ?」「プロジェクト期間中、広報チームの指揮を柊グループに執って欲しいんです。あと、取材の際には神谷と一緒に、柊社長も参加してください」匡介は迷いもせず、即答する。「わかった」「本当ですか?」澪には少し予想外だった。「ああ」匡介の言葉には、揺るぎない確信がある。澪はあっけに取られた。容姿端麗で社会的地位も高い彼は、これまで数え切れないほどのメディアからインタビュー依頼を受けてきた。しかし、匡介は人前に出ることを嫌い、自身の容姿を広告にするなど愚の骨頂だと考えていたはずなのに。過去の3年間、澪は何度か匡介にインタビューの件を持ちかけていたが、一度として彼が首を縦に振ったことはなかった。そのため今回も、彼女は涼介を道連れにしてまで、何とか
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第36話

匡介は、澪の心の中を見抜いているかのように付け加えた。「いつからお前のことが好きだったのかは自分でも分からない。もしかすると、一目惚れだったのかも。ただ、今まで恋したことがなくて、この感情の正体が分からなかったんだ。だから、卑劣な手段で強引に引き留めて……逃げられたくない一心で執着してしまった。お前を秘書にしたのも、マンションを与えたのも、すべてはお前が好きだったから。接待に連れて行くのをためらったのも、結局はお前が好きで、誰にも見せたくなかったからなんだ。今までずっと、名前のある関係をあげられなくてごめん。雨の中、高架道路に置き去りにしたことも、本当に後悔してる。何より、石原をけしかけて怖がらせたこと、本当に悪かったと思ってるんだ。ごめんな、澪」澪は匡介をまっすぐに見つめる。自分の中に築かれた頑固な壁が、崩れ去る音が聞こえたような気がした。もう認めざるを得ないらしい。自分にも、もうこの男しかいないようだ。共に過ごした3年間。この男は自分の人生そのものだったし、もう自分の一部となっている。忘れられないし、忘れたくもない。それに、黒崎家に戻った今、自分たちの仲を阻む身分的な障害もなくなり、今までの誤解も消えつつある。ならば、この男とよりを戻さない理由なんて、どこにあるのだろうか。父と母の結末を思い出し、澪の瞳にふと影が落ちた。二人と同じ轍は、絶対に踏まない。愛の告白と真摯な謝罪を受けた澪は、沈黙を守ったままだった。だが、匡介も急かすことはなく、ただ静かに彼女の答えを待った。許してもらえなければ何度でも謝ろう、そう腹を括った時だった。澪にぐいと引き寄せられ、その両手で首を抱きしめられたかと思うと、キスをされた。唇の柔らかさと、鼻先をかすめる慣れ親しんだ匂いに、匡介の頭が一瞬ぼうっとする。しかし、珍しく澪からきたのだ。踊り出したいほど歓喜した匡介は、彼女の腰を抱き寄せ、その唇を貪るように深く受け入れた。彼女主導の長いキスが終わる。昂った気配を残したまま匡介が意味を尋ねると、澪は笑ってこう言った。「どうですか?これがあなたが望んでいた仲直りの方法ですよね?」匡介は驚いたが、すぐにその意味を理解し声を弾ませた。「澪、それって……許してくれたってことでいいのか?」澪は腕を離すと、少し悪戯っぽい笑みを
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第37話

「それは駄目です。自分で買いに行ってほしいから。だって、さっき、私の言うことは何でも聞いてくれるって言ってくれましたよね?それなのに、会社の下にコーヒーを買いに行くのすら嫌なんですか?これくらいもできないなら、私たちは合わないと思いますよ?」澪はため息をついて、匡介の手を振りほどこうとした。それを聞いた匡介は、即座に立ち上がる。「待ってて。今すぐ買ってくるから!」早足で立ち去る匡介の後ろ姿を見送り、澪は思わずくすっと吹き出し、彼の背中に向かって呟いた。「今まで、散々私を使い走りにしたんだから、その分返してもらうんだから」匡介は下階へ向かう際、忘れずに誠も連れて行った。澪と仲直りができて、最高に気分がよかった匡介は、秘書室にいる全員にコーヒーを奢ろうと決めたのだった。しかも、わざわざ自分で買いに行って。ただ、一人では持ちきれないから、どうしても誠を荷物持ちとして使う必要があった。匡介と共にエレベーターへ乗り込む際、誠は少し呆気にとられ、思わず尋ねた。「社長、どこへ行くんですか?今日の午後、外出の予定はないはずですが……」匡介は眉を上げて、飄々と答える。「仕事じゃない。下にコーヒーを買いに行くんだよ。最近みんな働き詰めで疲れてるだろうから、差し入れでもって思ってさ。でも、俺一人じゃ持ちきれないから、お前にも手伝って欲しいんだ」誠は驚いた。「そんなことなら、私に言っていただければ下のカフェからデリバリーさせましたのに。どうしてわざわざご自身で行かれるんですか?」匡介は相変わらず平然としている。「別にいいだろ?デスクに座りっぱなしだと体がなまるんだ。そうだ。グループチャットで、みんなに何を飲むか聞いてくれ。1分以内に返信がなかったら、全員分アイスコーヒーにしよう」誠が指示通りグループチャットで聞くと、すぐに返信が返ってきた。しかし、それは全て【?】のクエスチョンマーク……だが、すぐにこのグループに匡介がいることを思い出した一同は、こぞって【?】を取り消し、お目当てのドリンクを打ち込み、最後には【ありがとうございます、匡介社長!】とお世辞を添えることも忘れなかった。あの気難しい柊家の御曹司が、従業員のために自分でコーヒーを買いに行くなんて!普段なら、階下のカフェに電話してデリバリーを頼むような些細なことさえ、すべ
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第38話

誠と匡介が柊グループ本社ビルの最上階に戻ると、秘書室の面々が我先にと出迎えた。匡介が軽く手を振って応えると、あちこちから「ありがとうございます、柊社長!」という感謝の言葉が上がる。匡介は手にしていたコーヒーを持ち、意気揚々と澪のもとへ駆けていった。「澪、お前が一番好きなホワイトモカを買ってきたぞ」匡介が自分の好みを覚えていたことに驚きを隠せなかった澪は、思わず眉をひそめた。自分はすっかり思い詰めていて、匡介の気持ちを誤解していたのかもしれない。だが、実際のところ、匡介の自分への好意は、確かに随所にそれと分かる形で現れていたようだ。それでも澪はわざと気のないふりをして、「でも、今日はラテの気分なんですけど」と言ってみた。匡介は以前、自分のことをふざけた女だと言った。だったら、とことん面倒な女になってやろうじゃないか。澪は匡介が言葉に詰まる様子を見ようと思ったのに、彼はもう一つのカップを当たり前のように差し出した。なんと、そこには本当にラテが入っていたのだ。「ほら、お前がお望みのラテだ。砂糖抜きにしておいたから」澪は呆気にとられ、驚いた目で匡介を見つめる。すると、匡介が得意げに眉を上げた。「どうだ?かっこいいだろ?」澪は笑いながら呆れたように目を細め、ラテを手に取って一口飲んだ。さっき澪がいらないと言ったホワイトモカを手に取った匡介は、蓋を開けながら言う。「なんで自分に飲みたいものを聞いてくれなかったんだって思ってるのか?」澪はこくりと頷いた。「そんなことまで分かるんですか?」「そんなの当たり前だ。だって、本気でお前が好きだって言ってるじゃないか。だから、好きな相手の好みを忘れるわけがない。それに、この二つのコーヒーを目の前に出さなければ、お前だって自分がどっちを飲みたいのか分からないだろ?」澪は言葉を失った。もしかして、自分のほうが匡介のことをよく分かっていないのかもしれない。彼がこんなに気の利く人だったなんて、今までどうして気づかなかったのだろう。「澪、今までは自分でできることまで、ついお前に頼んでしまっていた。少し身勝手だったかもしれないけど、あれが俺なりの愛を伝える方法で、頼りにする気持ちの表現方法だったんだ。だからこれからは、お前にできることでも、あえて俺に頼んでもらえるような、そんな
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