All Chapters of 剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ: Chapter 41 - Chapter 50

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第41話 晩餐会

後宮での晩餐に臨んだエステルは、初めて会ったはずの国王の顔を見て戸惑いを覚える。(この人が王様……?なんでだろ……初めて会うはずなのに、何処かで会った気がするのは……?)彼女は覚える必要がないと判断したことは本当に覚えないが、そうでないものについては良く覚えている。素の記憶力はむしろ優れているのだ。でなければ、ダンスをあのような形で乗り切ることなど出来なかっただろう。そんな彼女でも、国王の顔は記憶の片隅にひっかかるような感覚がするものの、それが誰だったのか思い出すには至らない。……ふと、国王が横目にエステルの方へ視線を向けたが、それは直ぐに戻ってしまう。だが、エステルの記憶は更に刺激されて……(あれ……?もしかして、この人って………う〜ん、でもなぁ……?)彼女の頭の中に一人の人物が思い浮かぶ。しかし、目の前にいる国王と記憶の人物は姿や雰囲気が異っており、確証に至ることはなかった。国王の登場によって晩餐会場は何とも言えない緊張感に満ちる。それも仕方ないだろう。彼はこの国の最高権力者。そして、当の本人は席に座ってからも無表情で、ともすれば不機嫌そうにすら見えるのだから。「…………」「「「…………(ごくっ)」」」「……………………」「「「……………………」」」し〜ん…………国王は未だ一言も発さず、その場に重い空気が降りる。とにかく彼が開始を告げなければ、晩餐会は始まらない。給仕たちも戸惑いの表情で困っているようだ。「………………陛下、よろしいでしょうか」見かねたレジーナが一つ息を付き、手を上げて発言の許可を求めた。「……あ、あぁ。何だ?」「陛下から何か仰って頂かないと、この場が始まりませんわ。給仕の者も、どうしたら良いか……と、困っております」そんな風に助け舟を出した。「っ!す、済まない。少し緊張してしまった」令嬢たちからは、彼の振る舞いは国王に相応しい堂々としたものに見えていたが、彼の意外な言葉に少しだけ緊張の糸を緩める。「何せ、これほど多くの美しいご令嬢方を一度に目にする機会は初めてだからな。どうやら目を奪われていた
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第42話 交流

晩餐の席で国王であるアルドから話しかけられたエステル。彼女は彼がこの場に来てから、彼の声や気配により、何処かで彼と会ったような……と感じていた。そして彼に話しかけられ、その表情を見たとき……それは記憶にある人物と結びつこうとしていた。「え、え〜と……アルド|陛下《へ〜か》?」「なんだ?」戸惑いながら、エステルはその疑問をぶつけることにした。「私の名前を知って……ご存知と言う事は、もしかして何処かで会った……お会いした事がありますか?」素の喋り方になってしまいそうなのを何とか訂正しながらエステルはアルドに聞いた。デニスと話をしたときは普通に敬語で話せていたのだが、知ってる人かも……と思うとついつい言葉遣いが砕けてしまうのだ。「いや、|こうして《・・・・》君に会うのは初めてだな」「そ、そうですか……(じゃあ、やっぱりアランさんとは別人なんだ……それはそうだよね、髪も目も色が違うし。でも……この人もアランさんと同じくらい|強い《・・》ね)」本人から否定され、頭の中で思い描いていた人物……アランとの外見の違いを改めて認識して彼女はそう結論づける。だが、アルドの答えが何か含みをもたせるような言い回しだった事には気が付かなかった。そして、エステルとアルドの一見すると何気ない会話の様子を見て、レジーナとミレイユ……いや、彼女たちだけではなく他の令嬢たちも驚きの表情を浮かべていた。彼女たちのその様子には頓着せず、アルドはレジーナとミレイユにも声をかける。「レジーナ嬢とミレイユ嬢は久し振りだな。変わりないか?」「……はい、健やかに過ごしておりますわ」「……私もです」レジーナですら戸惑う空気を隠すことができず、言葉少なに答えることしかできない。彼女たちは一体何に驚いているのだろうか?「……陛下は、少し変わられましたね」「……そうか?……あぁ、いや……まぁ、そうかも知れないな」そこで初めて、レジーナや他の令嬢たちが自分の態度に戸惑っている事を察したアルドは苦笑いした。そして、チラ……と、エステルの方を見る。「?」彼女は不思議そうにコテン、と首を傾げる。今の会話の流れで自分の方を見る理由が分からなかったからだ。そしてアルドは、令嬢たちを見渡して宣言する。「これまでの私の態度からすれば、君たちがそう思うのも無理はない。だが、これは信じて欲しいのだ
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第43話 その頃の男たち

エステルが後宮で晩餐会に臨んでいるころ……クレイは何故かギデオンと一緒に食事をしていた。場所はクレイ(と、本来はエステルも)宿泊している宿の近く、歓楽街にある酒場兼食堂だ。歓楽街と言っても色街などではなく、彼らが入ったような店が集まった区域で、治安もそれほど悪い訳では無い。酒に酔った客たちの陽気で賑やかな声で、店内は喧騒に包まれている。そんな中にあってクレイは少し不機嫌そうな顔をして、目の前に座るギデオンに向かって愚痴を零しているところだった……「まったく……一体どうなってやがる。結局アイツ、帰ってこないし。王城に泊まるだって……?何だってんだ」騎士登用試験が終わったあと、彼のもとに伝言があった。曰く、『エステルは今日、王城に泊まるので、君は心配せずに先に帰って大丈夫だ』……と。「あの嬢ちゃん、お前より強ぇんだろ?にわかには信じられんが……しかし、それなら特別待遇も分からんでも無ぇ」「ああ、それは分かる(師匠の事が知られてるなら尚更な……)。だが、それはつまり……」クレイは複雑そうな表情で言う。……何だか物凄くイヤそうな顔だ。「どうした?」「……いや、つまり、幹部待遇の可能性があるよな?」「……腕っぷしだけでそうなるとは思わんが、そう言う可能性はあるかもな」「うわ~……ありえね~……アイツが上司とかないわ~」顔を顰めながらクレイは言った。本当に嫌そうである。これまでの彼の苦労を思えば、それも仕方がないだろう……そしてある意味では、エステルが彼らの上司になると言うのはあながち間違ではないのかもしれないのだ。それはおそらく、彼らの予想の斜め上を行くだろうが……「……だが、お前の言う通り、腕っぷしだけじゃそうはならないよな。じゃあ、大丈夫か」そう考えると少し安心するクレイだが、一抹の不安は拭いきれない。そして、その失礼とも言えるクレイのエステル評を聞いたギデオンは、複雑そうな表情で聞いた。「……彼女は腕っぷしだけなのか?」「そうだ」ノータイムで返すクレイ。なんなら若干食い気味だった。そして彼はギデオンに、いかにエステルが能天気で、適当で、何をしでかすか分からない娘である
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第44話 夜の後宮

晩餐会で楽しいひと時を過ごしたエステルは自室へと戻ってきた。そして暫くは居間でまったり過ごしてから入浴する事になった。この国では入浴の習慣は平民にも浸透しており、エステルもそれ自体に戸惑うことは無い。だが、そこはやはり後宮の浴室である。「わぁ~……ここも凄く広い!!」エステルは目を輝かせて言う。彼女が泊まっていた宿は共用の浴室だったのだが、何とか2人は入れるかどうか、という広さだった。しかし、当然ながら目の前のそれは宿のものとは比べ物にならない。湯船は優に4~5人は入れそうなほどで、その周囲のスペースも十分な広さがあった。これほどの浴室が各部屋にあるのだとしたら……何とも贅沢なものである。「失礼します。お身体流させていただきます」エステルに続いて、クレハも入ってくる。入浴するエステルはもちろん裸であるが、クレハは薄い湯浴み着を着ていた。「へ?……ちょ、クレハさん!?ひ、一人であらえますって!」高位の貴族ともなると身体を使用人に洗ってもらうのは普通の事であるが、エステルはそんな事は知らないので慌てふためく。割と何事にも動じない彼女であるが……他人に身体を洗われるというのは流石に抵抗があるらしい。ある意味では貴重な姿かもしれない。「どうかご遠慮なさらず」「遠慮というか……あぅ」結局派断りきれずに二人で入ることになった。「ひゃん!?く、くすぐったい……!」「エステル様のお肌……本当に|肌理《きめ》細やかで綺麗でいらっしゃいますね」石鹸を泡立て、クレハがエステルの全身を優しく丁寧な手付きで洗う。他人の手が全身の肌を撫でる慣れない感触、そのくすぐったさにエステルは悲鳴を上げた。「ちょ!?く、クレハさん……そ、そこは自分で……」「いけません。後宮の女性たるもの、しっかり身体を磨かねばなりませんよ」「ひ、ひぇ~っ!!?」クレハの勢いに押されてエステルは逆らう事が出来ない。そんなふうにエステルがタジタジとなるという、やはり非常に珍しい光景が浴室では繰り広げられるのだった。「うぅ……つかれた……」今は夜着に着替えて、あとは寝室で寝るだけ、というところなのだが……本来はリラックス出来るはずの入浴で、ぐったりと疲れてしまったエステル。やはり、千里の道を駆け抜けるほどの体力を持つ彼女が見せる姿ではなかった。「ん~……お風呂に入っちゃったけど、
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第45話 真夜中の密会

寝静まる夜の後宮。本来であればエステルもとっくに眠っている時間である。しかし、どうにも身体を動かしたくてうずうずしていた彼女だったのだが……寝室の窓に何かが当たる音を聞きつけ、中庭に誰かがいることを見つけた彼女は、一人その場所へとやって来た。中庭は魔法の照明の淡い光に照らされているが、殆どの場所は闇に沈んでいる。後宮の建物に四方を囲まれ、そこだけ別世界のような錯覚に陥る。「……え〜と。そこに誰かいますよね?」エステルは誰何の声をかける。疑問の形を取りつつも、彼女は既に何者かの気配を感じていた。そして庭木の陰からその人物は現れる。「流石だな、エステル。良く来てくれた」「アルド|陛下《へ〜か》……」ある程度気配を読んでいたエステルは、既に誰であるのか予想していたのか、あまり驚いている様子は見られない。だが、なんでこんな時間に、こんな場所で……? という疑問はあるので、少し戸惑いはあるようだ。アルドは笑みを浮かべて彼女の疑問に答える。「なに、君と話をしたくてな……他の令嬢の目があるところでは中々話せないから、こうして呼び出してしまったのだ。許してほしい」「それは大丈夫ですけど……私に話って……?」アルドとは今日初めて会ったはず……それが何故、自分とだけ……? と彼女は疑問に思う。「一つは……謝罪だ」「謝罪……?」ますます混乱するエステル。アルドに謝罪されるような事など、全く思い当たることが無いからだ。しかし。「……『我が身を望む姿へ』」「え、魔法?……あ!?」エステルの目の前で、アルドの姿が一変する。それは、彼女がよく知る人物のものだった。「あ、アランさん……?やっぱり……」「『やっぱり』か……君は晩餐のときも疑念を持っていたようだったが……何故分かったんだ?」アルドの偽装の魔法は、髪や瞳の色はもちろん、|顔貌《かおかたち》の印象まで変えるものだ。なので普通は見破る事は出来ない。その姿の正体を知る者は限られ、その他の関係者の間で『アラン』は国王直属の部下、という事になっている。……詰め所の兵士が知っている位には、割と正体を知られて
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第46話 迷推理

「えへへ~……私、分かっちゃいました!!」エステルは得意満面の顔で言う。自分の導き出した答えに絶対の自信があるようだ。しかし、何度でも言うがエステル・ブレーンはポンコツだ。スペックは高いはずなのだが、如何せんそれを活かしきれないどころか常に予想の斜め上の答えを弾き出す。そして悲しいかな……彼女がそれを自覚することは無いのである。「ふふふ……ズバリ!!この間の襲撃、あれが関係してるんですね!!」ズバリとか言い出す始末。「え……?いや、あれは…………」「あんな物騒なことが起きるんだから、ここに住む将来の王妃さまや側室さまを誰かが護らなくてはなりません!!」アルドが何か言いかけようとしたのを遮って、エステルは力説する。ノリノリである。「いや、だから……あれはだな……」「だけど、この後宮はアルドさま以外の男子は入ることが出来ない…………そこで、優秀な女騎士が必要なんですね!!」アルドの言葉はもはや耳に入らず。彼女は自分が出した答えを信じて疑わない。そして、『優秀な女騎士』とはもちろん自分のつもりである。しかし、ポンコツ・ブレーンが出した答えにしては、筋道がしっかりしているようには思える。やはりスペックだけは無駄に高いのだろう……「レジーナさんやミレミレは私がこの手で護る!!」「…………」もはやアルドは目が点になっていた。「……と言うことで、私は表向き『手違い』で後宮に入り密かに皆を護る……そういう事ですね?」「え?あ~……そ、そうなのか……な?」やる気に満ち溢れたエステルに、もはや『そうではない』とも言えず、アルドは思わず肯定してしまった。「あ……でも……」「ん?どうした?」突然トーンダウンしたエステルの呟きに、アルドは何とか我に返って聞く。「そうなると、騎士になるのはどうすれば……」結局、騎士になるための試験を受けていない事に気が付いたエステルは複雑そうな表情で言う。実に今更な話ではあるが、彼女の目標はあくまでも騎士になることだから重要な事だろう。「あぁ、それなら……君が希望するなら、俺の権限で合格にすることは出来る……」「そんなのダメです!!」「……はい?」アルドの言葉をズバッと切って捨てるエステル。……どうでもいいが、先程から彼女はかなり不敬な行動を取っているのだが、それに気付くことはないだろう。実際アルドも、
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第47話 真夜中の手合わせ

愛剣を返してもらったエステルは、その調子を確かめるようにビュンビュンと振り回す。彼女にとってはショートソードなど小枝のようなものである。その細腕からは想像も出来ないほどの膂力を誇り、辺境の魔物と戦うときはその倍以上はある大剣を用いるのが常なのだ。だが……それが本来の得物では無いとはいえ、その技量は全く劣るものではない。むしろ、父である剣聖ジスタルはオーソドックスな片手剣を得意とするため、その技を徹底的に仕込まれた彼女の剣技は至高の領域にあると言っても過言ではない。一方のアルドの得物は、エステルとそう変わらないショートソード。王が持つ剣という割に、華美な装飾などなく実用一点張りのものだ。そして、エステルとアルドはある程度距離を置いて対峙する。エステルは正眼に構える。アルドも中段だが……少し右側に傾けてエステルの左肩口に狙いを定める構え。先程までの和やかなは空気は霧散し、二人の闘気の高まりとともに、張り詰めた糸のような緊張感がその場に漂い始める。木の薫りを纏った夜風が、二人の間に早咲きのプリュケスの花のひとひらをどこからともなく運んできた。薄桃色のそれがゆっくりと落ちていき……地面に触れようとする、その刹那の瞬間。 ガキィンッ!!!剣と剣を打ち鳴らす激しい金属音が中庭に響き渡り、火花が散った。お互いが同時に、神速の踏み込みで間合いに飛び込んで剣を振るったのだが……構えの態勢から次の瞬間にはもう切り結んでいた。そして、常人では視認すら不可能な初撃のあと、両者とも一所には留まらず、やはり神速の足さばきと斬撃を幾度となく繰り出す。 キィンッッ!! キンッ!キキンッ!! キキキキィンッッッ!!!超高速で振るわれる刃は照明の光を照り返し、その斬撃の軌跡が無数の流星となって闇に刻まれる。そして衝突するたびに星屑の輝きをまき散らす。(……やっぱり強い!!クレイより……ううん、もしかしたらお父さんより強いかも知れない……!)剣戟の応酬のさなか、エステルは戦うための思考とは切り離された頭の中の別の部分でそう考える。かつて彼女が戦った者の中での最強は、言うまでもなく父ジスタルだ。その父をも超えるかもしれない相手に、エステルは喜びに打ち震え笑みを浮かべた。それは戦う者がするような獰猛なものではなく、純粋な喜びを表す無邪気な笑顔。彼女は純粋に、心の底からこの戦
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第48話 後宮の夜が明けて

翌日。真夜中まで起きていた割に、エステルは朝早く目覚めた。どうやら、暫らく稽古ができなかった彼女のストレスが、アルドとの手合わせ(と言うか、ほぼ全力の戦闘)で解消されたため、ぐっすりと眠ることが出来たらしい。「おはようございます、エステル様。お早いお目覚めですね」「クレハさん!おはようございます!」昨日と異りスッキリと目覚めたエステルは、元気よく挨拶する。「それでは朝のお支度の準備を手伝わせていただぎます」「あ、お願いします〜」もう他人に世話をされるのも慣れたようだ。エステルは割と環境に順応するのが早い娘である。「さて、本日は特に予定はございませんが……お着替えはいかがいたしましょうか?」「ん〜……取り敢えず、連絡はいってるって事だけど、クレイとは直接話をしておきたいかな〜」昨日別れたきりの幼馴染のことを、ちゃんと覚えていたようだ。ついさっきまで綺麗サッパリ忘れていたのは秘密だが。エステルとしてはこの後も後宮に滞在しながら、極秘任務を遂行する……と思い込んでいる。(秘密の任務だからなぁ……なんて言おうか?)もうすっかり彼女は任務を遂行する凄腕女騎士の気分である。例え気心の知れた幼馴染と言えど、全てを話すことは出来ない……だって極秘任務だから。「……ま、てきと〜に言っておけばいっか」考えるのが面倒になったようだ。一体どうするつもりなのか……「何が……でしょうか?」「あ、ううん、こっちの話です〜。それにしても、昨日のアルド|陛下《へ〜か》は凄かったなぁ……」そんなふうに、まるで恋する乙女のようにうっとりと呟くエステル。もちろんそんな色っぽい話ではないのだが……「?……昨夜、陛下とお会いされたのですか?」「あ、はい。ちょっと眠れなくて……こっそり散歩に出たんです。ごめんなさい」「あ、いえ、昨日お話させていただいた通り、後宮内をご自由に出歩いていただくのは全く問題ありませんが……陛下が凄かった……とは?」「えへへ〜……実は昨日、陛下と『一戦交えた』んだ〜」「い、『一戦交えた』……!?も、もうそこまで陛下との仲が進展したのですね……」顔を赤くしてクレハが呟いた。どうやらまたしても誤解が生じている様子。……実はこの国では、男女が『一戦を交える』と言うのは隠語に当たるのだ。意味は…………言わずもがなだろう。当然エステルが言った
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第49話 再会

「なるべく早く戻ってきますね〜」「気を付けて行ってらっしゃいませ」王城の門のところまで付いてきてくれたクレハに見送られ、エステルは街へと繰り出した。(任務があるから、あまり後宮を不在にしちゃ不味いよね。|陛下《へ〜か》はそんなに張り詰めなくても大丈夫……なんて言ってたけど、しっかり任務は果たさないと!)もう彼女の気分は、すっかり凄腕女騎士のそれである。実際のところ剣の腕前で言えば、彼女は凄腕どころか並び立つ者もほとんどいないであろう強者だ。しかし如何せん彼女の行動は、常に誰かの予想の斜め上を行く。だから、そんな任務を彼女に任せて大丈夫だろうか……と不安になってしまいそうになるが、そもそもその極秘任務とやらが彼女の妄想の産物なので、全く問題はない。「え〜と、宿は……こっちだったね!」王城を出たエステルは、まだそれほど人出のない街を歩いていく。彼女は一度通った道は覚えているので、その足取りに迷いはない。暫らく歩くいて宿の近くまでやってくると、少しずつ賑わってくる。まだ朝早い時間帯なのでピークよりも人は少ないが、職場に向かう者や店の準備をする者、はたまた夜通し飲んでいたらしき酔っぱらいの姿もチラホラと見られた。そしてエステルは、昨日までクレイと一書に宿泊していた宿に戻ってきた。彼女は中に入ると、宿の女将に挨拶してから階段で部屋のある2階へ昇っていく。まだ引き払ってはいないので問題ない。そもそも、まだ彼女は一部の荷物を部屋においているし、クレイもいるはずだ。そして、部屋の前までやって来ると…………「おっはよ〜っ!クレイいる〜?」ノックもしないで、ば〜んっ!と勢いよく扉を開け、声をかけながら中に入る。そして、中にいたクレイの姿を目撃する。………お互いに固まって、暫しの沈黙が落ちる。「ありゃ……何で服着てないの?」「着替えてたんだよ!!扉を開けるときはノックぐらいしろっ!!バカタレっ!!」………………………………「いや、だったらさ〜、鍵くらいかけておこ〜よ」「くっ……エステルのくせに正論を……」「それに、別にクレイの裸なんて見慣れてるし」「だからいつの話をしてるんだ。誤解を招く表現はヤメロ。ていうか恥じらいとか無いのか、お前には」「だいたいさ〜、着替えるときに全部脱ぐクセやめよ〜よ」「……なんてこったい。コイツに言い返せないなん
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第50話 誤解

エステルが宿でクレイと話をしている頃。国王アルドは朝早くから執務室で書類と格闘していた。今夜もまたエステルに会いに行こうと思い、なるべく早く仕事を片付けたいと思ったからだ。熱めのお茶を淹れてもらい、時々それを口に含んで眠気を覚ましながら決裁を進めていく。コンコン……「失礼します」そこへ宰相フレイがやって来る。彼は入室するなり、挨拶もそこそこに切り出した。「陛下……」「ん?……どうした、そんな険しい顔をして?」まあ、フレイのそれは割とよく見せる表情なので、そう聞きながらもアルドはそれほど気にせずに、書類を眺めながらカップを口に運ぶ。「陛下……あまり関心しませんね」「?……何がだ?後宮の中庭のことなら……」「それもそうですが……。私が言いたいのは、その……これまでの事を思えば、女性に積極的になるのは良い事だと思います」「……?」「しかし、数日前に出会ったばかりのエステル嬢に手を付けるのは、いくらなんでも早急すぎるのではないでしょうか」「ブフーーーッ!?」少し遠慮がちに……しかしはっきり言われた言葉に、思わず口に含んだお茶を盛大に噴くアルド。「な、な……何を言ってるんだ!?」「……違うのですか?」「違うわ!!……一体どこからの情報なんだ、それは……」「エステル嬢の世話人が……エステル嬢が、それはそれは嬉しそうに『陛下と一戦交えた』と言っていた……と。ドリスから報告がありました」「あ〜……」その報告にアルドは額に手を当てて天を仰いだ。どうやら大きな誤解が生じているようだ……と。「……それは言葉通りの意味だ。隠語ではない」「そうですか。まぁ、そんな事だろうとは思ってました」「…………」何だか言外に『ヘタレ』と言われた気がしてアルドは複雑そうな表情だ。「それはともかく……彼女にちゃんと事情は説明されたのですか?」フレイは更に聞くが、こちらの方が本題だろう。「とりあえず、俺が画策して後宮審査会を受けさせたことは話したが……」「……何だか歯切れが悪いですね?」「ん、まぁな……。実は……」そうして、アルドはフレイに昨夜の経緯を説明する。あのエステルの盛大な勘違いと、二人で手合わせしたことを。「……はあ。『極秘任務』……ですか」「すまん。俺には否定できなかったよ。ああも嬉しそうにされるとな……」「……別にそれはよろしい
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