All Chapters of 剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ: Chapter 81 - Chapter 90

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第81話 囚われの少女たち

(神殿?女神様のですか?……でも、確かに距離と方角は合ってるかも)(君が報告してくれた道筋を地図に照らし合わせるとそうなる。あの神殿も王国成立以前から存在して、増改築を繰り返してきたというから……何かしら秘密の空間があっても不思議ではないのだがな)(女神様のお膝元で悪さしてるなんて……バチあたりな!!)(そうだな。もし本当にそこが神殿の施設なら……ただでさえ許されざる所業だが、さらに罪深い。問題は神殿自体の関与があるかどうかだが……今段階では何とも言えんな)そんなふうに、アルドと念話をしながら連絡員の男に案内されて階段を上っていくエステル。宵闇亭から降りたときよりもかなり長く、既に二〜三階くらいの高さは上ったと思われた。(これだけ上っても出口に辿り着かないって事は……やっぱり、神殿の土台になってる築山の中なのかも)(まず間違いないだろう)王都の中でそれほどの規模の建造物は、王城の他には神殿くらいだ。二人は既にそこが神殿の中であることを確信していた。やがて、長い階段は終わりを告げ……行く手に扉が待ち受ける。重たそうな鉄製の物だ。キィ……と軋んだ音を立てて男が扉を開く。その先は、これまでの通路とは趣が異なっていた。薄暗かった照明はかなり明るくなり、殺風景な石造りの壁は純白の漆喰で塗り固められていた。床も光を反射するほど滑らかに磨き込まれた石材となり……なるほど、ここが神殿の内部と言われれば、そう思えるくらいの雰囲気だ。雰囲気は変わったものの、これまでとさほど変わらない狭さの通路を更に奥へと進んでいく。すると再び扉が現れるが、今度は見張りらしき男が二人、扉の前に立っていた。そして、連絡員の男が門番たちに声をかける。「『商品』となる娘を連れてきた。通してくれ」「……では、証を見せろ」値踏みするようにエステルをジロジロと眺めた門番の一人言うと、連絡員の男が懐から何かを取り出して見せた。「……よし。通れ」「ああ。……行くぞ」男に促されてエステルは扉を潜るが……門番たちの粘りつくような視線を感じ、彼女は不快に思うのだった。(……またイヤらしい目で見られてる気がする。捕まってる女の人たち、大丈夫かなぁ……)自分がそういう対象として見られている事に慣れない彼女は辟易としながらも、自分以外の捕まってる女性たちが酷い目にあっていないか……と心配する
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第82話 囚われの少女たち2

ついに攫われた女性たちの監禁場所に潜入を果たしたエステル。そこには想像以上に多くの美しい少女たちが囚われており、皆一様に暗い表情だ。もう既に諦めた様子の者、さめざめと泣いている者、呆然として無表情の者……何れにしても言えることは、誰もが己の不幸を嘆き希望を失っている様子だったということだ。エステルが入ってきても、ちら……と一瞥しただけで、彼女たちに大きな反応は見られない。また可哀想な女の子がやってきたのか、くらいの認識だろう。彼女たちのその様子を見たエステルは、悪の組織に対する怒りが再燃し、絶対に壊滅させると決意を新たにする。(……みんな、絶対に助けるからね!もう少しの辛抱だから。……あれ?あの子、どこかで見たような……?あ!もしかして……?)エステルは少女の一人に見覚えがあるような気がして……心当たりの人物を思い出した。「……ねぇねぇ。もしかしてあなた……クララさん?」「え!?ど、どうして私の名前を……?」悲しげにうつむいていた少女はエステルに声をかけられ、驚きで顔をバッ!と上げた。「あ、やっぱり!ティーナさんに似てたから……直ぐに分かったよ」少女……クララは、姉と似たような金髪に近い茶色の髪と緑色の瞳をしており、姉よりやや幼いその容姿もよく似ていた。年のころはエステルと同じくらい。ここに囚われている少女たちは何れも見目麗しい容姿の者ばかりだが……やはり彼女も、人攫いに目を付けられれしまったのか納得できるくらいの美貌の持ち主だった。「お姉ちゃんの知り合いの方なんですか?」「うん、私はエステル。ティーナさんにあなたを助けて欲しいって頼まれたんだ。あ、それは一応秘密ね」エステルはクララを安心させるように微笑むと、少し声を落としてそう答える。一応、彼女も潜入作戦である事は理解しているので、極力目立たないように……とは考えているのだ。意外なことに。極秘任務という言葉に酔ってるだけかも知れないが。「助けるって……無理よ、ここはいつも見張られてるし、凄く強い用心棒がいるって聞いたわ」「へぇ……強い用心棒かぁ……(戦う機会があるかな?)」クララの『強い用心棒』という話に興味を示すエステル。全く、ぶれない娘である。「それよりも、怪我とかは無い?酷い目にあったりは……」「それは大丈夫。手荒な真似はされてないし、食事もちゃんと出されてる。湯浴みも
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第83話 太陽の娘

「ねえねえ、ちょっといいかな?」「……え?わ、わたし……?」クララから話を聞いて、彼女を励ましたあと……エステルは情報収集のため他の少女からも話を聞こうとした。クララにはエステルが囮として潜入している事は話したが……一応、秘密の任務なので他の少女達には伏せる事にした。ただ、少しは安心させたかったので、騎士団が動き始めているということだけは伝えるつもりのようだ。最初に声をかけた少女はずっと呆然と座っていただけだったが、まさか自分が声をかけられるとは思ってもみなかったらしく、戸惑いの表情を見せている。泣き腫らしていたのか目は真っ赤に充血し、頬に涙が伝った跡が残っているのが痛々しい。エステルは胸が締め付けられたが、ことさら明るい調子で少女に接する。彼女もその雰囲気につられたのか、多少は表情も和らぐ。「ちょっと聞きたいんだけど……あ、言いたくなかったら言わなくてもいいから」「う、うん……何かしら……?」少女の了承を得てから、少し慎重にエステルは問う。「あなたが攫われたのは……王都のどの辺りだった?」「え……?ええと、確か……南街区の……」「ふむふむ……それで、やっぱり『宵闇亭』ってお店から地下に……?」「い、いえ……目隠しされて場所は分からなかったけど、私を捕まえた人は確か……『新月亭』って言ってたわ」「ふむ……私とは別の場所なんだね……」そうやってエステルは少女から連れ去られた経緯を聞き出した。そして、他の少女たちにも同様に聞き込みを行っていく。中には憔悴しきって喋ることもままならない少女もいたが、エステルが癒やしの奇跡を使うと喋られるくらいには元気を取り戻した。本来、聖女の癒やしの奇跡は精神的な要因を取り除く事は出来ないのだが……もしかしたら、彼女のありあまる元気が癒やしの力を良い方向に作用させたのかもしれない。その少女だけでなく、エステルが声をかけた者は程度の差こそあるものの、誰もが少し元気を取り戻したようだ。そして、最初は誰もがうつむき会話などする気力も無かった少女達は……いつしか、そこかしこでお喋りを始めていた。同じ境遇の者同士……ある意味、仲間意識が芽生えたと言うこともあろうが、彼女たちを結びつけたのはエステルだ。いまも、少女たちの中心となって明るい笑顔を振りまいていた。その様子を少し離れたところで見ていたクララは、彼女こそ太陽
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第84話 夜の神殿

もう深夜になろうか……という時間。昼間は神聖で荘厳な佇まいを見せ、多くの信者や観光客たちで賑わっていたエル・ノイア神殿。今は月に照らされて闇夜に浮かび上がるその姿が、どこか不気味にすら感じられるのは、怪しげな組織の根城になってるかも知れないからか。アルド率いる騎士団の精鋭たちは神殿前広場までやって来た。念のため人目を忍ぶように、建物の影に身を潜めている。「さて、勢い込んでここまでやって来たのは良いが……これからどうしたものか。外から何かが分かるわけでもないし、かと言って中に入るのも時期尚早……か」建物の陰から顔を覗かせて神殿の威容を眺めながら、アルドはそう呟く。「陛下の権限なら、強制的に立ち入り捜査が出来るんじゃないですか?」何と言ってもこの国で一番偉い国王陛下なのだから……と、クレイは思ったのだが。しかしアルドはその言葉を、頭を振って否定する。「そう簡単にいくなら話は早いんだがな。神殿とエルネア王家はそんな単純な間柄ではない」「女神エル・ネイア様は、この国の初代国王陛下に祝福を授けたと言われている。つまり、神殿は王家に権威付けている後ろ盾とも言える存在なんだ」「そういう事だ。俺もここで戴冠式をしたしな……関係が悪化するのは避けたいところだ」アルドとディセフの説明に、クレイは「なるほど……」と納得した。「じゃあ……どうするんです?」今度はギデオンが聞く。彼は見た目ほどには脳筋と言う訳では無いが(むしろ、エステルなどよりよほど思慮深い)、頭脳労働は領分ではなかった。「予定通りって事だろ。もともとオークションが開催されるまで特に動きも無いはずだったんだ。アイツが予想以上に情報を入手してくれたが……どのみち動きようが無いのなら、当初の予定通り幹部クラスとの接触があるまで待機……って事ですよね?ディセフさん」「クレイの言うとおりだな。まあ、ここでの監視も引き続き必要だけどな。あとは……」クレイの言葉に頷いて、ディセフが更に何か続けようとするのをアルドが引き継ぐ。「あとは他にもやるべき事が出来ただろう。連絡場所となってる酒場の監視・調査。神殿も、今は直接踏み込む事は出来んが、調査の伝手が無いわけではない」本当は今にも踏み込みたい気持ちを堪えて、アルドは更に言う。「彼女がいてくれれば、囚われの女性たちの身の安全は保証されているも同然だろう。何
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第85話 仮面の男

特に大きな動きもなく夜が明けた。昨エステルも昨晩は囚われの少女たちからある程度話を聞くと、早々に就寝してしまった。監禁場所は調度の類は殆どなかったが、生活するための最低限の設備は整っており、寝具も用意されていた。食事も時間になれば3食しっかり出るらしく、待遇自体はそう酷いものでは無いようだ。もちろん、それは彼女たちが大事な『商品』であるがゆえに過ぎないのだが。そんなわけで、エステルは今……さきほど男が持ってきた朝食を食べているのだが。「う〜ん……味は悪くないんだけど、もう少し量が欲しいなぁ」まだまだ育ち盛りの彼女には物足りなかったようだ。監禁されてるからと言って食欲が落ちてるなどと言うこともない。しっかり食事をとって、しっかり寝ることが彼女のパワーの源である。「……エステルちゃん、よくそんなに食べられるわね。私なんて、ここに来てから食欲が全然湧いてこないのに……」一緒に食事をとっていたクララが感心したように言うが、それが普通だろう。「食べられる時に食べておかないと、いざと言うときに力が出ないからね!」「……そうね。私ももう少し食べておこうかな」そう言ってクララは残そうとしていた食事に手を付ける。二人のやりとりを眺めていた周りの少女たちも、それに倣って食事を再開した。(うんうん、やっぱりご飯は元気の源だからね!)エステルが来る前は悲壮感だけが漂っていた部屋も、今は少しだけ穏やかな空気が流れていた。……と、そんな雰囲気を壊す者が現れる。監禁場所の扉を開いて中にやって来たのは、仮面を被った怪しげな人物。顔面全てを覆い尽くす、男性とも女性ともつかない人面を模した白い仮面だ。どの様な顔なのか全く分からないが、体格からすれば男性だろう。彼は何をするでもなく入口付近で佇んでいた。おそらくは視線を巡らせて少女たちを観察でもしてるのだろうか。だが、暫くすると部屋の中にくぐもった男性の声が響く。「昨晩やってきたのは……お前か?」そう言ってエステルの方を指差してきた。「うん、そうですよ〜(……この人、『そこそこ』強いね。幹部かな?)」エステルは気軽に返事をしながらも、内心で警戒する。彼女が『そこそこ』と評する相手だ。確かに幹部クラスの人物であっても不思議ではないだろう。「……ついて来い」有無を言わせない口調で仮面の男は言ってから、踵を返して出口に
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第86話 癒しの聖女

怪しげな仮面の男に連れられてやってきた部屋。そこでエステルは酷い怪我を負った男性を助けるべく、躊躇いもなく癒やしの奇跡使ってみせた。その様子を眺めていた男たちの表情は仮面に隠されて判然としないが、お互いに顔を見合わせて頷いたところを見ると、満足しているのであろうことが窺えた。エステルは怒りの表情で彼らをキッ!と睨みつけるが、彼らに跳びかかるのは何とか自制した。その様子をクレイが見たら、きっと彼は驚いたことだろう。(ふぅ〜……がまんがまん。今この人たちを片っ端からやっつけるのは難しくないけど……作戦が台無しになっちゃう)怒りを鎮めるように彼女は内心で呟く。そして、そのタイミングで……(エステル、どうした?何かあったのか?)(あ……へいか?)アルドの声を聞いただけで、不思議なくらいにエステルは心が落ち着いていくのを感じた。(いえ、だいじょ〜ぶです。実は……)画面の男に別室に連れてこられたこと。そこで傷だらけの男性に癒やしの奇跡の力を使ったこと。それを見た画面の男たちが満足そうにしていたこと。それらを、エステルはアルドに説明する。(癒やしの聖女であることを確認した……のか?まさか……)(でも、他のみんなからはそんな話は聞いてませんでした)他の囚われの女性とも同じようなやり取りがあったのなら、エステルが聞き込みした時に話題に上らないはずがない。そして今も、仮面の男たちは何事かを話し合っている様子。ひそひそと小声であるが……エステルイヤーは地獄耳である。彼女が男たちの会話に意識を向ければ、それが聞こえてきた。「測定値を見たときは目を疑ったが……」「どうやら間違いないな」「ああ。あの数値が確かなら……かつての赤の聖女エドナにも匹敵するぞ」「そう言えば……この娘も赤髪だな。まさか、血縁者か?」「かもしれぬが……関係ないことだ」(!!?『赤の聖女エドナ』って……お母さんのこと!?)(エドナ?……やはり、あの事件が関係しているのか?)(?……へいか、何か知ってるんですか?あの事件って……お母さんが関係してるんですか?と言うかお母さんのこと知ってるんですか?)(あ、ああ……)口ごもるような言葉からは、念話越しでも『しまった……』というようなアルドの感情が察せられたが、エステルは更に詳しい話を聞こうとする。しかし。(あ……話が終わったみ
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第87話 神殿での面会

アルドが神殿関係者との面会の調整指示を出してから僅か数刻後。彼はその日の午後には神殿にある貴人のための応接室にて神殿側の責任者を待っていた。これほどに早く調整がついたのは、フレイが有能と言うこともあるが、件の『事件』が神殿にとって重大な案件である事を示しているのだろう。「さて……果たして、鬼が出るか蛇が出るか」「もう少し泳がせなくて良かったんですか?」アルドが漏らした呟きに、お供としてついてきたディセフが反応する。神殿とコンタクトを取るのは、まだ時期尚早だったのでは……と言ってるのだ。「慎重に行きたいというお前の考えも分かるがな。ここらで攻勢に出て揺さぶりをかけたい」「……そうですね。確かに消極策ばかりではこれまでと変わらないかもしれません。とにかく……これからここに来るヤツがシロなのかクロなのか……見極めたいところですが」「ああ」と、そこで二人は部屋の外に人の気配を感じて会話をやめる。そして、直ぐに扉がノックされ部屋の中に何人か入ってくるが……そのうちの一人を見てアルドは驚く。表面にこそ出さないものの、全く予想もしていなかったその人物の登場は、彼に大きな衝撃をもたらしたのである。「お待たせして申し訳ありません、アルド陛下。お久しぶりでございます」まず挨拶をしたのは、一番の年長者と思しき女性。年齢にして五~六十くらいだろうか。その身なりや雰囲気からして、かなりの地位であることが覗える。「これはこれは……まさかミラ大神官猊下、御自らいらっしゃるとは」と、アルドは大神官と握手をしながら挨拶を交わす。今朝方打診して、まさか神殿のトップがやってくるとは思わなかったのだ。しかし、確かにそれも驚くべきことだったが、アルドが一番驚いているのはそれに対してではない。「ふふ……それはお互い様でしょう?」「それはまあ……そうですね。それで……」そこでアルドは彼女の横にいる二人の人物に目を向けた。一人は三十代半ばくらいの男性。「国王陛下にお会いできて光栄にございます。私は大神官猊下の補佐を務めております、モーゼスと申します」彼は以前、神殿を訪れたエステルとクレイに声をかけたモーゼスであった。エステルの母、エドナの知人であるとのことだったので、『事件』の事も知っているのは不思議ではないだろう。そして、もう一人の人物。まだ少女と言っても良いくらいの若い
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第88話 エドナの娘

「……どう言うことなんです?この神殿にエドナの娘が捕らえられてるなど……いくら陛下と言えど、我が神殿に対して根拠の無い言いがかりは許されませんよ?」先程までの柔らかな笑みを浮かべた優しげな様子から一転、見るものを震え上がらせる怜悧な眼差しをアルドに向ける。それを見たディセフの背筋を冷たいものが伝い落ちるが、当のアルドは平然とミラの視線を受け止めた。「もちろん証拠はあります」そう言って彼は自分の首にかかったペンダントを外してミラに差し出す。それはもちろん『念話』の魔道具である。「これは……?」「その青い宝石に魔力を込めて念じてみてください。『念話』が発動して、エドナの娘……エステルと会話ができます」「……!」そこで、ペンダントを受け取ろうとしたミラの手が止まった。アルドは差し出した手をそのままに、じっと彼女を見つめる。モーゼスは気遣わしげな視線を向け、レジーナはそんな彼らの様子に訝しげな表情を浮かべた。「……そう。エドナの娘は、エステルと言うのね。モーゼスから王都に来ているという話は聞いてたのだけど……」そういう彼女の表情は……喜びと悲しみ、愛しさと切なさが混じり合う複雑な感情を表していた。そしてしばらくすると、差し出されたペンダントを見つめたあと、意を決してそれを受け取り、両手で握り込んで目を閉じる。(うにゃ?へ〜か?)(!……あなたがエステル?)(え?だれ?私はエステルですけど……)ミラがペンダントに魔力を込め『念話』を発動させると、エステルが応答する。当然彼女はアルドが連絡してきたと思っていたので、知らない声に戸惑いを見せているようだ。(驚かせてごめんなさいね。私の名前はミラ。アルド陛下からペンダントをお借りして、今あなたに話しかけてるのよ)(あ、そーなんですね!はじめまして!)元気に挨拶してくるエステルの声に、ミラは相好を崩した。(でも、何でミラさんが私に……?)(それはね、あなたに確認したい事があって陛下にお願いしたの。エステル、あなたは今、エル・ノイア神殿に囚われていると聞いたのだけど、それは本当かしら?)(え〜と……私には神殿かどうかは分からないですけど、どこかの地下にいます。他にも沢山の女の人が捕まってます)それから、エステルが囮として捕まった経緯を説明すると、ミラの表情は険しいものになっていく。そして、感覚を
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第89話 捜査協力

「「「……………」」」アルドが事の経緯を説明したあと、その場には暫く沈黙が降りる。最初にそれを破ったのは、ミラであった。「神殿に所属していない聖女を集めようとしている……?」「そう……思います」彼女の呟きをアルドは肯定する。エステルが連れて行かれた先で行われたことと、幹部らしき人物たちの言動からすれば……そう結論するのは当然のことだった。「奴らの会話からすれば、聖女かどうかを何らかの手段で判別する仕組みがあるように思える……何かご存知ないですか?」疑問の形を取っているが、彼は神殿のトップであるミラであれば、何か知っているはずだと確信している。問われたミラは目を閉じて暫く考える素振りを見せたが、意を決したように口を開く。「……確かに、神殿には聖女の資質を見定めるための道具があります」「ミラ様!!それは……!」モーゼスが慌てるが少し遅かったようだ。彼の反応を見る限り、おいそれと外部に洩らすようなものではない事は明白だ。たとえそれが王相手だろうと。「陛下は確信しておられるようですし、隠す意味はないでしょう」それが秘されている大きな理由としては、まさに今回の事件のように悪用される事が懸念されること。そして、エル・ノイア教の教義においては、癒しの奇跡は女神の加護の賜物とされているため、神秘性を保つためにも聖女はある程度は希少な存在であるのが望ましい……と言うのも理由の一つである。そのようなことをミラは説明したが、やはりモーゼスは複雑そうな表情だ。「不逞の輩が聖女を欲してるとなれば、かつての事件が関わっている可能性は非常に高い。彼らがエドナの名を口にしたのならなおのこと。だからこそ我々に話を聞きに来られたのですね」「その通りです」ここに至り、王国と神殿の認識は一致することとなった。となれば話はこの後どうするのか……という点に議論が移る。「神殿の地下施設に関して、何かご存知ではないですか?」アルドは今回の訪問の目的、その核心に迫る問いかけを発した。だが、ミラは首を横に振る。「残念ながら……そのような場所があることは知りませんでした。私は今でこそ大神官の地位にありますが……あの事件の後のゴタゴタで、成り行きそうなったに過ぎません。故に、先代から引き継いでいないことも多々あるのかもしれませんね」「ならば……それを知る可能性のある古参の者で、怪
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第90話 レジーナ

「……どうだ?」神殿から帰城したアルドは、執務室にてフレイに問いかける。「シロ……だと思います」「そうか。お前がそう判断するなら間違いないだろう」何の話をしているかと言えば、先程までアルドと面会していた神殿の者たちに怪しい点は無かったか……という事である。実は、アルドは神殿に赴く際に魔道具を持ち込んでいた。それはエステルと念話をするためのペンダントとは別のもので、会話を録音するというものだ。そして、今しがたフレイにその内容を聞かせた上での先の質問である。フレイはある特殊な能力を持っている。それは、会話の中に嘘が含まれているかどうかを見抜くものだ。意識して会話に集中する必要があるが、僅かな感情の揺れなどから生じる声音の違いを読み取っている……とはフレイの弁である。そしてアルドは、それがほぼ百パーセントの精度である事を知っている。フレイが若くして宰相の地位まで上りつめたのは、アルドからの信頼が厚いということもあるが、その能力も理由の一つだった。「ですが」「ん?」「レジーナ嬢は何か隠しているかもしれません」「なに?どういうことだ?」続けてフレイが告げた言葉に、アルドは怪訝そうな表情で聞き返した。彼らはエステルの報告を聞いて、かつて起きた事件との関連性を疑った事から、それを知るであろう神殿の関係者との接触を図った。もし黒幕に神殿の関係者がいて、アルドとの面会に現れたのなら、揺さぶりをかけることで尻尾を表すかもしれない。そうでなければ捜査のために神殿関係者の協力を得ることができる。 そのような目論見の中、レジーナがその場に登場してきたのは全くの予想外のことではあったのだが……「何を隠しているのかまでは分かりません。少なくとも彼女の言葉には嘘は含まれていなかったとは思いますが……」会話の端々に、何らかの『後ろめたさ』のようなものを感じたのだとフレイは言う。「うむ……念のため、彼女にも監視の目を付けておくか。もう後宮に戻ってきているはずだ」「御意」アルドの言葉を受けて、フレイは早速それを手配するために執務室を出ていった。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆「……レジーナ様、どうされました?何だかお加減が優れないようですけど……」「え?……いえ、私は大丈夫よ。心配してくれてありがとう、ミレミレ」「……もう、レジーナ様までその名で呼
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