All Chapters of 孤高の元皇太子妃は、女性嫌いの魔術師団長に執愛される〜甘く濃厚に溶かされる夜〜: Chapter 31 - Chapter 40

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アイザックの禁断症状(3)

 しかもリーリエの持つ魔力は甘く、愛おしく、涙も汗さえも甘美で、抗えないほどの香りと匂いで…… 愛しているからこそ、彼女の魔力は私にとってご馳走だった。 もっと、もっと。愛して愛されたい。甘くて美味な魔力が欲しいし、彼女の全てが欲しい。  「私はフェリクス・カディス。 帝国の皇太子だ。」 まだ幼い彼女はこれが初めての社交パーティーだったらしく、私のことを知らなかったようだ。 しかし私が第一皇子でありながら、気持ちの悪い魔力持ちだと知っても彼女は変わらなかった。 「私のことを気持ち悪いとは思わないのか?」 「思いません。だってそれがフェリクス様の個性、なのでしょう?」  まだ拙い言葉で懸命に私に答える麗しい、リーリエ。 私が涙ぐんだのを見て彼女は言った。 「私の魔力?が必要ならこれからも魔力をていきょうします。 そして、これは二人だけの秘密にしましょう。」  嫌われるから人にバレたくないと。そう言った私の心を汲み取ってくれた。 すごく賢い少女だ。 優しい彼女に俺の心は癒され、善意に溢れた彼女に私は魔力を貰い続けた。 触れただけで全てが満たされる。 彼女が父親に連れられてパーティーに来るたび。 ふたりでこっそり抜け出して、私はリーリエの差し出す魔力を貰い続けた。 好きで好きで堪らない。彼女を好きだという気持ちが極上な魔力へと繋がる。 彼女こそがまさに私の運命の相手だと思った。  「リーリエ。君が好きだ。 どうか私と婚約して欲しい。」 「私と?ええ、分かりました。フェリックス様。」 「いいのか?本当に!?私は気持ち悪くないのか?」 「ふふ、どうしてそうなるのですか? 言ったではないですか。それもフェリクス様の個性だと。 それにいつもフェリクス様はお優しいですし……私がお父様に怒られて泣いてると、いつ
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アイザックの禁断症状(4)

 しかも実の弟エドウィンまで——— 「兄さんのせいでリーリエが危ない目に遭ったんです!もう二度と彼女に近づかないでください!」 いくら不気味がられているとはいえ、私は序列から決定された皇太子だった。 その分努力し、それなりに優秀さを保った。 だからなのかエドウィンが、密かに私に劣等感を抱いていたのは知っていたが。  「まさかエドウィン、お前リーリエを好きなのか?」 「そうですよ!彼女を何度か皇宮で見かけるたびに可愛い子だなと思っていたんです! だが兄さんは、リーリエを傷つけた!」 何も言い返せなかった、その通りだったから。 何度もリーリエの見舞いを申し入れたが侯爵に拒絶されーーー。 侯爵にひつこく責められ、煩わしさを感じていた父は私にとある命令を下した。 「お前のような化け物は、国境にいって魔獣退治をするべきだ。」 結局、私は皇太子の座を剥奪され、エドウィンが後を引き継いだ。あの時優越感に浸った彼の顔が忘れられない。  ようやく彼女が目を覚ましたと聞き、面会したが…… 「すみません……どちら様でしょうか?」 リーリエは私の事をすっかり忘れていた。 きっと天罰が下ったのだろう。 私がリーリエを好きすぎるから、彼女の魔力をたくさん欲しがったから。 その笑顔を、もうすぐで私が奪ってしまうところだった。 私がそばにいれば、リーリエは不幸になってしまう。 「エドウィン。リーリエを頼む。 彼女を必ず幸せにしてくれ。」  皇太子の座も、温かな家族もいらない。 愛する人をこれ以上傷つけないよう身を引こう。 惚れているというエドウィンを信じ、彼女を必ず幸せにするようにと約束させた。 「兄さん。万が一リーリエが、兄さんにされた愚かな行為を思い出して傷つかないよう、記憶を変えてください。 魔力で
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アイザックの禁断症状(5)

 ただそこに行きつくまでに、ずっと問題があって。 「アイザック、お前魔力供給しないと死ぬぞ。」 魔術師にそう促され、私は魔力がこもった魔力石や魔鉱石などで魔力供給を試したが、ほとんど供給できなかった。 何年かうまく魔力を供給できず、常に枯渇状態に陥る。 そんな時は必ずといっていいほど、彼女を思い出した。 リーリエに会いたくて堪らなかった。 「それなら娼館に行って、女でも抱いてこいよ。娼婦には、魔力を持った女が結構いるんだぜ。」 確かにこのままでは死んでしまう。 誰かを抱く気にはなれなかったが、自分の命を守るためだと覚悟を決めた。 確かに娼館には魔力を持つ女が多数いた。 だが、リーリエ以外の女に頑張って触れようとしても気分が悪くなるだけ。 どうやら私はリーリエ以外の女から魔力を供給する事自体に、強い拒否反応が出るようだ。 結局私は誰かを抱くことも、触れることさえできなかった。 「きゃあああ、あなたは英雄のアイザック様ですか?」 「アイザック様になら抱かれてもいい!」  魔獣討伐後は、魔術師たちが私を無理やり娼館へと連れて行く。嫌だと言っても聞いてもらえず。 いくら付き合いとはいえ……。 「すみませんが、私に触らないで頂けますか。」 彼女以外の女に触られるのも不愉快だった。だからシルクの手袋をつけるようになった。 これには魔力を遮断する魔術を施した。 うっかり女に触らないように。 そういった事もあり、いつの間にか私は国民達から『女嫌い』と呼ばれるようになっていた。 つまり、白状しよう。 結局私は誰ともシた事がない。リーリエだけをこの年まで想い続けた、ただの変態である。 「はあ……。リーリエに会いたい……。」 リーリエだけ。彼女の魔力だけが美味で、忘れられなかった。もう二度と会う事すら叶わないけれど、彼女だけを
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アイザックの禁断症状(6)

 リーリエの身柄を抑えると、今度はエドウィン達に何が起こったのか調査を開始した。 こんな時こそ時間軸を遡る高度魔術を使う。 3年前のリーリエの行動、エドウィンの不審な行動、思考、それぞれの感情を暴いた結果。 エドウィンがリーリエを裏切り、ロベリアと不倫していた事実が判明した。 「くそ……!あの馬鹿め!あれほどリーリエを幸せにしろと約束したのに!」 腑が煮え繰り返った。すぐにでも魔術でエドウィンを呪い殺したかった。 「ロベリア・モンターニュ? しかもこの女、リーリエの親友じゃなかったか? 家門が没落しかけたのをリーリエに救われたくせに、恩を仇で返すとは!」 さらにはエドウィンが彼女を罠に嵌め、父や母までそれを黙認したという事実を知った。 皇孫欲しさに? 私がどれだけの思いであの家族にリーリエの幸せを約束させたのか、すっかり忘れたようだ。 皇太子の座を捨て、魔獣討伐に生涯を捧げるから、絶対に彼女を幸せにして欲しいとあれだけ頼んだのに。  「は、ははは……私はこれまで一体何を? てっきり彼女が幸せだと…… 幸せになるものだとばかり。 そうか……。あの家族はもう滅してもよかったんだな?最初から。そうすればよかった。 そうすればリーリエが傷つく事も、涙を流す事もなかったのに。 ごめん、リーリエ。私が愛し方を間違っていたんだね……」 私は、分かっていなかったんだ。 あの愚かな弟では、あの血も涙もない家族では所詮彼女を幸せにはできないのだと。 「分かった。もう遠慮はしない。 とりあえず彼らをぶっ潰すのは後にして、傷ついたリーリエを迎えに行こう。」 *** 「アイザック……バロンズ……様?」 久しぶりに会ったリーリエは、相変わらず
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アイザックの禁断症状(7)

  かつて愛したリーリエを、まだこんなにも深く愛しているのだと再確認した。 愛する相手を前に手袋を外さないのは、素肌で触れたら暴走すると分かっているからだ。 素肌でリーリエに、触れたらきっと私は止まらないだろう。 成熟したその体を尽きる事なく求めるだろうし、彼女を自分のものにするために孕ませようとするだろう。 手袋越しに触れただけでも溢れ出す甘美な魔力を、吸い尽くすだろう。 だからこそ、ブレーキをかけておかなければならない。 本来なら娼館ではなく、自身の構えた領地にきちんとした形で妻として迎えたい。 だが私にはリーリエを妻に迎える前に、エドウィン達に復讐する前に、どうしてもやらなければならない事がある。 リーリエを買った3年という期限は、今手を焼いている大規模な魔獣掃討作戦が、少なくとも3年はかかるからだった。  それが済んだら全てを終わらす——— 私がどれだけ変態か? 本当は、リーリエの涙を舐めたいし、指や足の先を口に含みたいし、唇を吸いたいし、やはり汗を舐めたい。いや、彼女を丸ごと食べたい。 想像で何度も彼女を汚した。 だから、いつも罪悪感に苛まれる。 だが、そうとは知らないリーリエ。 彼女は、私をますます駄目な変態にする。 抗えないほどの欲望。すでに我慢の限界間近だ。 帰りも漏れなくローワンに出くわす。優秀な彼の魔術にはいくら私でも引っかかるからだ。 「あれ。団長〜随分と遅いお帰りで。 それはそうと、リーリエ様に魔術をかけた、魔術師が見つかりましたよ。 団長が目星をつけていた通り、どこの団体にも所属していない、アウトローの単独犯でした。 捕まえて、地下牢に閉じ込めてありますが、どうします?」 ローワンはニヤニヤしながら人の帰還を歓迎し、ついでに見事な働きぶりを報告してくれた。 「よくやった、ローワン。 そいつは使い道がある。私に引き渡してくれ。」 まずは一人。
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リーリエ、全部君が悪いんだ!(1)

  今の私の私生活は、順調そのものだった。 前妻のリーリエを追い出し、心から愛するロベリアと再婚する事が決まっているからだ。 しかもロベリアは私の子を宿している。 ———今から約3年前。 リーリエと結婚して1年後、私はロベリアを紹介された。 「初めまして、エドウィン様。ロベリアと申します。 リーリエ様とは古くからの友人です。」 彼女は高名な伯爵家の令嬢だったらしいが、父親が事業に失敗し、多額の借金を抱えて没落しかけていたという。 そこをリーリエが私財で借金を肩代わりし、彼女に仕える女官に任命したそうだ。 冷たく棘を持つ大輪の花ようなリーリエとは違い、ロベリアは儚く揺れる小花のように可憐だった。美しい桜色の髪に、金色の瞳。 彼女は私と目を合わせると、必ず何かを訴えるかのように見つめてきた。 「エドウィン様、奇遇ですね。」 それからロベリアとは、よく皇宮のどこかで出会うようになった。 剣術の稽古場、私がよく行く庭園、一人になりたい時の噴水前などで。不思議だったが。 「ああ、女官の仕事はどうだ?」 「ええ、まあ……」 なぜか彼女はいつも、浮かない顔をしていた。 「エドウィン様、お着替えのお手伝いに参りました。」 「なぜ君が?」 「頼まれたんです、リーリエ様に。」 たまにリーリエに頼まれたと言って、なぜか他のメイドに混じってロベリアが私の着替えを手伝い来たことも。 変だとは思ったが、彼女はリーリエの親友だからと黙っていた。 しかも、本来なら女官長などがやるべきリーリエとの夜伽の通達でさえ、ロベリアがするようになった。  「リーリエ様は私を、親友だと思っていますから。」 しかし、ロベリアとはこうしてよく顔を合わせる反面、リーリエとはあまり会わなくなっていった。 皇太子妃としての政務が忙しいと言って、リーリエとはすれ違いが多くなって
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リーリエ、全部君が悪いんだ!(2)

 かつて私はリーリエがずっと好きで、やっと手に入れた相手でもある。 あの兄から奪い、優越感に浸っていたのに。 兄に記憶をすり替えられて以降、私だけを見つめてくれていたのに。 私は彼女を愛していたし、彼女も私を愛していると言ってくれていたのに。 元々冷たい性格だったのか、本性を表したのか。 とにかく裏切られた気分だ。  リーリエに尋ねたい。本当に私をただの政略の相手だと思っているのかを。  『リーリエに今夜、夜伽をと伝えて欲しい。』 いつものように、ロベリアに託す。 『分かりましたと、リーリエ様はお返事されました。寝室へ〇〇時に伺いますと。』 返事は早くきて、久しぶりにリーリエと夜を共にできると胸を高鳴らせていたら。 「ロベリア?なぜ私の寝室にいる?」 なぜかロベリアが泣きながら私の寝室のベッドの上にいたのだ。 薄いシュミーズ姿一枚で。 「リーリエはどこだ?今夜は彼女がきているはずだが?」 「実はロベリア様は今夜も行きたくないと。 エドウィン様に触られるのも嫌だと。 だから私が代わりに来たんです。あまりにもエドウィン様がお可哀想で。」 「あの女……! やはり、結婚したとたん本当に変わったな!私が叱りつけてくる!」 「エドウィン様!駄目です! そんな風に怒りをぶつけても、リーリエ様はきっとエドウィン様をまた馬鹿にするだけ。 悔しくはないですか? それならいっそ、彼女を裏切ってみてはどうですか? 私を、リーリエ様の代わりだと思って抱いて下さい。 リーリエ様を裏切れば、きっと気分が晴れるはずです。」 「そんな、ロベリア、だがしかし、それは重罪……」 そう言いかけた私の頬にロベリアが触れ、キスをしてきた。甘い匂いに頭がくらくらした。 「……っ!ロベリア!」
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リーリエ、全部君が悪いんだ!(3)

 だがしかし、あくまで誰にもバレるわけにはいかなかった。 皇太子とは言え、見つかれば法で裁かれてしまう。  ロベリアとの一夜が明け、相変わらず淡々と振る舞うリーリエには腹が立ったが、私とロベリアが関係を持ったと気づいてはいないようだった。  「何ですか?エドウィン様。」 「いや、何でもないよ、リーリエ。」  あんなに欲しかった女だったのに。 兄さんに記憶をすり替えるように頼んでまで、好きだった女だったのに。 今は、リーリエがただの権力欲の塊のような女にしか見えない。 ちっとも魅力がない、つまらない女に思えた。 それに近頃、皇宮での嫌な噂も耳にしていた。  『リーリエ様は、エドウィン様を自分より劣っていると思っているそうだ。』 『富や名声のために、結婚されたとか。』 『冷たいお方。まあ、あの見た目だからな。』 『それにしても、兄のフェリクス様の方が優秀だった。 なぜ廃位なされたのか、誰も知らない。 今どこで何をしているのだろうか?」 酷い噂。リーリエが私を馬鹿にし、しかも多数の貴族達が、廃位して姿を消した兄と私を今だに比較しているという。 「お可哀想な、エドウィン様。私は貴方が劣っているなんて、ちっとも思っていません。」 「ああ、ロベリア!君だけだよ、私の味方は!」 リーリエに気づかれないようにロベリアと逢瀬を重ね、回数も増えていった。 皇宮の隠し部屋や、あまり使われてない地下室。 大胆にも、リーリエのいるすぐ隣の衣装室で、ロベリアを抱いた事もある。 ロベリアの熟れた白い裸体が見えるたび、隣にリーリエがいると考えるたび……たまらない快感に震えた。 それでもきちんと避妊はしていた。 一方のリーリエとの夜はめっきり減っていった。 「エドウィン様。 3年後には私と子作りしましょう。」 ロベリアからの、子作りの提案。
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リーリエ、全部君が悪いんだ!(4)

 私は、ロベリアの知り合いだという魔術師に依頼をし、とあるワインを受け取るようになった。 「このワインを毎夜、皇太子妃に飲ませて下さい。  次第に胎の中に術が浸透して行くでしょう。  それが体内にある限り、彼女は不妊です。」 「分かった。料金は上乗せしよう。」 リーリエとの間に子供などいらない。  欲しいのは、ロベリアとの子だけ。 *** そうしてロベリアと密かに愛し合う事3年。  計画通りに子作りを始めた途端に、ロベリアは妊娠した。  嬉しかった、私を愛する女が私の子を。  約3年だ。さすがに誰もがリーリエを不妊だと疑っていた。皇帝の父や、母を説得するには最適な時期。    先にリーリエに離婚を切り出した。  だがリーリエは、頑なに私と別れないと言い張った。  また、利益のためか。本当に可愛げのない女。   「リーリエ様を廃位させ、私が皇太子妃になるためにいい方法を思いつきました。  これは私と、エドウィン様の愛を守るため。  私達の子供を守るためです。」 ロベリアは、リーリエに不貞行為の罪を着せて、皇宮から追い出そうと言ってきた。    「ふむ。すごく合理的な案だ。  よし、それでいこう。  そうなれば、誰かリーリエの相手役が必要だな。  金が必要で、口が固い者を選ぼう。」 皇室に仕えていた下級騎士を買収し、リーリエを酔わせた末に、寝室に彼をこっそり招いた。  もちろんリーリエは何もしてない。  ただ、眠っていただけだ。 「私達の夫婦の寝室で汚らわしい不貞行為を犯した!  リーリエ、お前とは離婚だ!!  我が国の法を破り、重い罪を働いたリーリエを暫く拘禁しておくように!」 私を馬鹿にした君が悪いんだ。  昔のように愛してくれなくなった君が。  仕事しか、利益しか考えてない君が全て悪いんだ。リーリエ、君が!  「何?娼館に送る……?リーリエ
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リーリエ、全部君が悪いんだ!(5)

 仕方なく他の兵を向かわせると、とんでもない事態が発生していると言う。  「どうやら、あのアイザック・バロンズ様がリーリエ様をお買いになったそうです。 女嫌いで有名な……」 「アイザック・バロンズ?アイザック・バロンズ……どこかで聞いた名だな。 アイザック……!???」 その瞬間私はハッとした。ずっと忘れていた。 とっくの昔に連絡を絶っていたから。 あれから何十年と、ただたまに噂を耳にしていた程度の。 「まさか……そんな。兄さんが——— リーリエを?」 怖い怖い怖い。だって兄さんはもうとっくにリーリエを諦めていたはず。 いや、その前にアイザック・バロンズの名は今や帝国中に響き渡るほど有名だ。 最高位魔術師で、魔獣退治のエキスパート。 彼のおかげで、魔獣が首都に侵入せず、平和が成り立っていると。  もし本当にリーリエを買ったのが兄さんなら、どうする? 私がリーリエを裏切って、罠に嵌めたと知られたら…… もしも魔獣退治を辞めると言い出したら。 もし、リーリエの事で怒り狂ったら? 「今すぐに馬車を準備してくれ……! 元皇太子妃の様子を見に行く……!」 底知れない恐怖が私の全身を駆け巡った。 かつて私は卑怯な手を使って、リーリエを兄さんから奪った。 もしそれを根に持たれていたら…… 私は、兄さんが幼い頃からとんでもない魔力を持っていたのを知っていた。 最高位魔術師に、一体何をされるか分かったものではない。 急いで馬車に乗り込み、内密にリーリエの送られた娼館に向かった。 約一週間ほどの旅路を経て、辺境の娼館にたどり着く。 変だ
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