ガーの親分が一歩踏み込んだかと思ったら、次の瞬間にはもう闇シラベが消し飛んでいた。 いや、ほんとに一瞬だ。 影が蠢いたと思ったら、拳と蹴りで光に散らされてる。 悪霊だの精神攻撃だの、そんな小細工が通じる相手じゃないらしい。 ……マジかよ。 胸の奥がギュッと縮む。 いや、縮む必要ないんだけど、勝手に縮むんだ。 俺が数分かけて心労で悶えてた相手を、親分はあっさり片付けやがった。 やっぱ規格が違う。 そりゃ、子供に人気だわな。 そして、残ったのはムーンフェイド。 青白い光が倉庫内に満ちて、冷気が肌を刺す。 ガーの親分は微塵も怯まず、真っ向からその怪物と対峙していた。「……いやいや、狼と氷の亡霊って、絵面が完全に別の物語だろ」 後ろからは「親分! 後ろは任せるであります!」なんて声が響いた。 マルマルだ。 短足でちょこまか動きながら、妙に真面目な応援を飛ばしている。 その声量で、ムーンフェイドが二匹くらい増えるんじゃないかと心配になるのは、俺だけだろうか。 他の警備隊の連中は、残った闇シラベを相手にしていた。 光を掲げ、剣で影を切り払い、叫び声と金属音が倉庫内に交錯する。 戦場、って言葉がこれ以上なく似合う光景だ。 ……あれ? 俺、いらなくね? 天窓の縁に手をかけながら、思わず心の中でツッコんだ。 ガー親分はムーンフェイドと対峙、マルマルは後ろで吠え、警備隊は闇シラベを追い詰めている。 俺? 屋根にしがみついてるだけのモブだ。 それでも、バレちゃいけない。 ここで「アルディン、勝手に侵入してました」なんて報告が回ったら、課長の頭頂部から残り少ない毛根が全滅しかねない。 だから俺は、息を殺して天窓へと這い上がった。 ……ここまでくりゃ大丈夫だろ。
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