陽が落ちた廃村の全体を、ざっと見回す。 家はどれも朽ちてはいるが、焼け跡や血痕は見当たらない。 魔物に襲われて、滅んだ感じじゃなさそうだ。 ……雰囲気だけは、最高に不気味だな。 ナックの足跡は、村の奥の小屋へと続いている。 小屋の前に立ち、呼吸を整える。 聴覚を強化――息遣いは、ない。「おいナック、死んでねぇよな」 ゆっくりと扉を押し開け、中を覗き込む。 誰もいない。 ただ、床一面に積もったほこりに、足跡が刻まれていた。 行ったり来たり、何かを探してうろついた形跡。 視線が止まる。 ベッドの下に、不自然にこすられた跡。「ベッドの下?」 身をかがめ、覗き込む。 誰もいないし、何もない。 ……ナック、お前まさか。 怖くてベッドの下に隠れてただけか? わずかな可能性を想像して、落胆する自分が嫌になる。 だとしたら、何を見て怯えたんだ? 立札のところに戻って、足跡を改めて確認する。 ……さっきの新しいやつは「何かを見た後」の動きだ。「古い足跡は……あれか」 少し薄れているが、村の奥へ続く跡がある。 その先に目を向けると、そこにはいかにもな古井戸がぽつんと残っていた。 ……なるほど。 そこで何かを見て、慌てて聖水をぶちまけて、小屋に逃げ込んだ――。 うん、ナックらしいな。 古井戸に近づく。 縁のほこりに、手をかけた跡が残っていた。 ……ナックだな。間違いない。覗いたんだ、ここを。「さて……何を見たんだ、ナック」
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