「2人で会いませんか——」美玲に誘われて訪れたのは、雲城市の中心にあるグランドホテルのチャリティ・イベントだった。サマーツイードのワンピースにハットを合わせた美玲の姿は、上品な華やかさに包まれていた。イベントが終わり、会場を後にする頃。「今日はありがとうございました」美玲は深々と挨拶をした。「素晴らしい企画だったよ」怜は折目正しく礼を言った。(……嘘ばっかり)「チャリティにご興味があったんですね」美玲は自分の発言に驚いた。(なんて意地の悪いことを私は…でも…)神崎怜はどう答えるのか。美玲は知りたかったのだ。「いや…」怜は美玲に向き直って告げる。「慈善活動に関心を持てるほど、私にはまだ余裕は無いんだ。ただ、君の人柄が表れていると思って興味深かった。勉強になったよ」それは、あまりにも率直で、あまりにもあっさりとした言葉だった。しかしーー美玲の心は鷲掴まれた。(あああ……もう、いい。恋愛とかいい。この人に付いていこう……)怜はさらに少し間を置いて、静かに言った。「……君に、伝えなければならないことがある。」「は、はい…!!」美玲はビクリとした。(何かしら…?)見当もつかない。怜は辺りを見回した。人影はまばらで、お互いの話し声は聞こえなかった。「私は……」美玲の表情を見つめ、一拍置いて伝える。「神崎家の人間ではないんだ」「え?」美玲はきょとんとした。(怜さんが、神崎家の人間ではない…?どういうこと…?)呆気に取られる美玲に、怜はさらりと言う。「養子なんだよ。すまない、もっと早く伝えるべきだった」怜は踵を返した。話はそれだけだった。「車で送らせる」そう言って怜は一人、夕暮れの道を歩き始めた。* * *週末の昼下がり。一条凛は街中のカフェにいた。「凛、久しぶり〜!」明るい声に振り向くと…「先輩!!お久しぶりです!!」待ち合わせ通り、先輩はやって来た。
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