病室には静寂が流れていた。 「……私を、撃ったの?」 凛の問いに、怜はしばらく何も答えなかった。 やがて小さく息を吐く。 「……一条凛。」 「何よ?」 「オレのズボンのポケットに銃が入っている。」 「……え?」 凛は思わず聞き返した。 「取ってくれ。」 「じゅ、銃って……。」 怜は静かに頷く。 「警察にはまだ渡していない。」 凛は恐る恐るベッド脇に置かれたズボンへ手を伸ばした。 冷たい金属の感触が指先に触れる。 (……本当に、銃。) ずしりと重い。 映画でしか見たことのない黒い拳銃だった。 凛は息を呑みながら、それを両手で抱える。 怜は淡々と言った。 「スライドを引いて。」 「え?」 「そうすると弾が薬室に入る。」 「ちょ、ちょっと待って!」 凛は慌てて銃口を床へ向けた。 「危ないじゃない!」 「安全装置は掛けてある。」 まるで仕事の説明でもするような口調だった。 「外して引き金を引けば撃てる。」 (銃って……こんな感じなんだ……。) 凛は背筋が冷たくなる。 結婚式の日。 教会で、この無機質な凶器が自分に向けられた—— 凛はその重さに、思わず息を呑んだ。 「……それで?」 凛は顔を上げる。 「撃ったの?」 怜は真っ直ぐ凛を見つめた。 逃げることも、ごまかすこともなく。 「……そうだ。」 短い返事だった。 「オレが撃たせた。」 凛の胸が締め付けられる。 怜は静かに両手を持ち上げた。 「君には、オレを撃つ権利がある。」 その言葉に、凛の思考が止まる。 「……は?」 「撃たれて当然のことをした。」 怜の表情には後悔も恐怖もなかった。 ただ、事実を述べているだけだった。 「だから——」 そこまで聞いた瞬間だった。 パンッ! 乾いた音が病室に響いた。
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